鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第24回 鉄道写真をうまく撮る~リフレクション鉄道写真
Photo : Masato Endoh
TOPIX
鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 24 回目はリフレクション鉄道写真について解説しました。映り込みのスナップ写真解説はネット上でも記事が多くございますが、鉄道写真に関してリフレクションに言及している記事は少ないのではないでしょうか?ぜひ、鉄道撮影の参考としてください。 by 編集部 |
みなさまこんにちは。鉄道写真家の遠藤真人です。今回は鉄道写真界では、あまり解説されることがないリフレクションについて書いてゆきます。車両の写真ばかり撮っていると、なかなか気づかないこともあります。視野を広く持ってリフレクションを狙ってゆきましょう。それではスタートです!
Index
1.リフレクションとは
リフレクションとは反射のことです。鉄道写真の王道とはいえないものの、よく見かける撮影方法です。鉄道写真では反射を利用した写真を ” 写り込み ” 、” 水鏡 ”、 ” ギラリ ” と呼ぶことが主流で、単語の ” リフレクション ” が使われることは非常にまれです。もちろん現象としては同じものですので、今回は鉄道写真的なリフレクション技術として解説します。
2.写り込み
写り込みとは、鏡や窓などに被写体の姿が反射した状態を指します。鉄道の場合は、駅やその周辺が最も狙いやすい場所です。都市部の周辺では、お店やビルなど、建造物の窓ガラスに注目すると良いでしょう。なるべくピカピカに光った綺麗なガラスを見つけると、より写り込みが鮮明な写真に仕上がります。また、できる限り反射面に対して垂直にカメラを構えることができると驚くほど写り込みが得られます。
ローカル線の場合は、駅や列車に備わったミラーに注目して写り込みを探してみましょう。きっとあなただけが気づく素敵な風景が写り込んでいるはずです。こちらのスナップ写真も写り込み技術を駆使したものです。場所は千葉県を代表するローカル線のいすみ鉄道です。昨年に撮影会企画で撮影させてもらった一枚です。参加者の女性がカメラを構えたときに列車が写っていることに気付いて、慌てて撮らせてもらいました。スナップの要素も入った私のお気に入り写真です。
3.水鏡と水たまり
次に狙いやすい反射は、水を使ったリフレクション。鉄道写真での名前は水鏡です。この写真が狙いやすい場所は、河原や湖などです。水が早く流れている場所には映り込みが発生しにくいです。水の流れが穏やかな場所、できる限り流れがない場所を選んで撮影しましょう。このときカメラの位置は水面に近づくほど綺麗な反射となります。カメラ液晶はバリアングル機能がついたものが便利です。当然のことですが、カメラ本体は絶対に濡らさないようにしましょう。
また、日本では稲作が盛んに行われています。こちらは季節限定ですが、春の水が入った田んぼでも水鏡が撮影できます。ベストな期間は水張りをして、稲が植えられるまでの間です。すっきりとした写真が撮れます。ぜひお試しください。田んぼに水を入れる順番は、その地域ごとによって様々です。年によっても違いがあるので、その地域の人たちと交流を深めて情報を集めましょう。
ただし、この時に絶対やってはいけないことは、田んぼの畔(あぜ)に入って撮影することです。畔が破壊されることは、稲作を妨害されることと同じです。春先は農家の方々も最も神経を使う季節だと聞いています。仕事の邪魔にならないよう、道の隅から撮影しましょう。
さらに上級者となると、雨でできた水溜まりにもリフレクションを見つけることができます。機会があれば、ぜひ試してみましょう。撮影のコツとしては、やはりカメラの位置は低く、水たまりに接近して広角レンズを使うことが王道です。出来る限りパンフォーカスで撮影する方が良いでしょう。小さな水たまりでも、あのウユニ湖のように写すことだって可能です。写真の力は無限大です。
4.ギラリ
こちらは鉄道写真では定石を踏んだ撮影方法です。今までの撮影方法とは違い、太陽の光を直接被写体に反射させる方法です。朝や夕方などの太陽の高さが低い時間帯で撮影できる方法です。
撮影のコツは、列車が通る前に太陽の光が反射する位置を見極めることです。学校で習った「反射の法則」を思い出してください。入射角=反射角ですから、列車を挟んで太陽と同じ角度になるよう場所を決めましょう。夕陽は常に角度を変えてゆきますので、可能な限りギリギリのタイミングで見極めましょう。線路や架線をみれば、大体の雰囲気が掴めます。この撮影方法はシャッター位置が決まっているので、三脚の使用も良いでしょう。特に秋から冬にかけて撮りやすいシーズンといえます。
撮影場所は背景が森や林のように、暗い場所がおすすめです。両者の露出差が大きく開いているので、太陽光を受けた列車はまるで風景に浮かび上がるように表現されます。最近の列車はシルバーのステンレス製のものが多く、わずかな光でも存在感は抜群です。ローカル線の情景だけではなく、都市部を走る列車も格好の被写体です。通勤列車なども積極的に狙ってゆきましょう。ピカピカな車両がやってきたらラッキーです。念を込めて(?)撮影しましょう。
ある程度コツが掴めたところで、ローカル線にも応用してみましょう。こちらは一時間に数本もありません。気合を入れて挑みましょう。撮影がバッチリ決まった時は、えも言われぬような快感が味わえます。気に入った写真が撮れたならば、コンテストにも応募してみましょう。きっと良い結果となるはずです。
5.リフレクションに役立つアイテム
リフレクション撮影で役立つアイテムは、ずばり可変偏光フィルターです。「可変」というところがミソです。通常、偏光フィルターといえば余計な反射を取り除くときに使うものです。「リフレクション撮影では、逆効果なのでは?」と思った方も多いと思いますが、偏光フィルターの役割を正しく理解すると納得してもらえると思います。
普通の偏光フィルターであれば、特定の波長をカットするように設計されています。一方で可変偏光フィルターでは、特定の波長をコントロールして加減を調整できるのです。つまり可変偏光フィルターは、使い方次第で反射効果を強めることもできるのです。リフレクション撮影を極めたい方は、可変偏光フィルターを導入しましょう。ただし、偏光膜を備えたフィルターは寿命があることでも知られています。数年使ったものは効果が薄くなるため、定期的に買い換えることをお勧めします。
以上でリフレクションを利用した撮影方法の解説を終わります。
6.次回予告
いかがでしたでしょうか。
次回は鉄道撮影におけるレンズフィルターの活用について解説したいと思います。お楽しみにしてくだい。
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遠藤真人