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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第61回 大パノラマが美しい神奈川夜景の撮り方

Posted On 2020 3月 11
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

今月の「 岩崎拓哉の夜景撮影講座 」はパノラマ夜景の美しい神奈川の夜景スポットを取り上げました。人口の大部分は横浜・川崎に集中するが、県央や小田原エリアには夜景スポットが点在すると氏は述べています。都心に近いパノラマ夜景撮影が楽しめる神奈川夜景の撮り方をご覧ください。 by 編集部

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神奈川県内の夜景と言えば、誰もが「横浜みなとみらい」や「川崎工場」を想像すると思います。この2エリアは全国的な知名度がありますが、県内には秦野や平塚、松田町などを中心に、山間部からパノラマ夜景を楽しめるスポットが多数あり、観賞はもちろん、撮影にもおすすめです。そこで今回は、神奈川県内中心部で特におすすめの夜景スポットを厳選して紹介したいと思います。

写真1 湘南平から藤沢・江の島方面の夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: CANON EF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:58mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:640 / WB:白色蛍光灯 ]

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■神奈川県の特徴

神奈川県は東京都に次ぐ人口規模で、県庁所在地は横浜市中区にある。人口の大部分は横浜・川崎に集中するが、県央や小田原エリアの人口も少なくないため、街明かりが全体的に広がっている。中でも秦野のヤビツ峠や松田町のチェックメイトC.C.前、平塚の湘南平の夜景は関東でも有名で、若者の車・恋愛離れが言われているにもかかわらず、車で夜景を目的に訪れるカップルの姿を頻繁に見かけるほどだ。

写真2 神奈川県の地図
神奈川地図

神奈川県内にはここで紹介するエリア以外にも、小田原・藤沢・横須賀などにも夜景スポットが多数ある。(地図:CraftMap

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■神奈川県の夜景撮影のポイント

東京都内から神奈川県中心部へは、東名高速経由で早ければ1時間程度でアクセスできるが、東名高速が渋滞していると普段の倍ぐらいかかることもある。特にトワイライトタイムを狙って訪問する場合は、あらかじめ「日本道路交通情報センター:JARTIC」などの渋滞情報を参考にしたい。

写真3 ヤビツ峠 菜の花台の展望台

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菜の花台からの夜景は県内でも最大級のスケール。展望台から夜景が見える方向は、7~8人ぐらいが限度で混雑することがあり、休日であれば早めの訪問がベター。

(1)訪問時期は秋~冬がベスト

神奈川県中心部の夜景スポットはほとんどが、山間部からの撮影となるため、やはり空気の澄んだ秋~冬が望ましい。条件によっては、春~夏でもきれいな夜景写真が撮れることもある。

(2)車移動が基本

西平畑公園は最寄り駅から徒歩20~25分でアクセスできるが、その他の場所は車移動が基本。駐車場など整備された場所が多いので、車を停める場所に困ることは少ない。

(3)人気スポットは平日の訪問がベター

菜の花台や湘南平は休日にカップルの訪問が多いため、撮影は平日の方が快適。

(4)標準~広角レンズと懐中電灯を持参

街明かり全体を写す構図が多いため、標準ズームレンズや広角ズームレンズを持参すると良い。山間部は暗い場所が多いので、懐中電灯を必ず持参すること。なお、丹沢 大山からの夜景撮影は登山装備が必要になる。

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■撮影スポット(1)ヤビツ峠 菜の花展望台/秦野市

神奈川県内でも有数の夜景スポット。菜の花展望台の名称よりもヤビツ峠の方が、夜景スポットの名称として一般的。以前よりは少なくなったが、週末の夜は走り屋の姿を見かけることも。夜景は駐車場付近の広場からも見えるが、展望台の方が圧倒的に視界が広い。展望台からは秦野市内を中心に平塚方面まで広範囲に視界が広がる。なお、展望台は足元が揺れやすく、他の訪問者の階段の上り下りで写真がぶれてしまうこともあるので、なるべく人の動きが少ないタイミングでシャッターを切りたい。(地図

写真4 秦野・箱根方面を写す

IMG_0348 [ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ: CANON EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:24mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真5 秦野市街地を中心に写す

IMG_0377 [ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ: CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:77mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(2)チェックメイトC.C.前/松田町

ゴルフ場に向かう途中の道路が夜景スポット。展望台などは整備されていないが、特に週末になると夜景を目的に訪れる若者の姿が目立つ。目の前には山北町~小田原方面の街明かりが広がり、天気が良ければ富士山のシルエットも撮影できる。富士山と街明かりは方角が異なるため、両方を写す場合は写真6のように広角レンズを使うと良い。また小田原方面の街明かりは標準レンズか望遠レンズで写すと良いだろう。(地図

写真6 富士山と山北町を中心とした夜景

IMG_5672 [ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:20mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真7 東名高速と小田原の夜景

IMG_5679 [ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ: CANON EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:55mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:25秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(3)弘法山公園 権現山/秦野市

桜の名所としても知られている公園で標高は235m。天気の良い日であれば富士山のシルエットを背景に夜景を撮影できる。街明かりのスケールはヤビツ峠 菜の花台等に比べて高度が低く感じるが、富士山の見える方向と街明かりが重なる点が嬉しい。また、西向きに視界が広がるので、夜景に限らず夕景の撮影も楽しめる。また、ダイヤモンド富士の時期以外は展望台の混雑感も少ないので、休日でもゆったりと撮影を楽しめるはずだ。(地図・展望台)(地図・駐車場

写真8 秦野市街地の夜景を写す

IMG_0445 [ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ: CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:100mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真9 夕日を写す

IMG_5588 [ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ: CANON EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:70mm / 撮影モード:絞り優先AE(-1) / シャッター速度:1/320秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:100 / WB:日陰 ]

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■撮影スポット(4)湘南平/平塚市

ヤビツ峠に並んで有名な夜景スポットで、デートスポットとして認知されている。標高181mの高麗山公園に展望台が整備され、平塚市内を中心に遠くは藤沢・江の島方面まで広範囲に街明かりが広がる。街との距離がほど良いため、光量も多く感じ、観賞も撮影も楽しめる。撮影は標準ズームレンズ1本あれば、不自由することは無いだろう。なお、展望台(レストハウス)は21時30分に閉館するが、向かいの電波塔は終日訪問できる。街明かりは北~東方向に広がるので、ヤビツ峠や弘法山公園で西方向のトワイライトタイムを狙ってから、2ヶ所目以降に訪問するのも良い。(地図

写真10 平塚市の夜景を写す

IMG_9483 [ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM / 焦点距離:50mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:6秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:640 / WB:白色蛍光灯 ]

写真11 電波塔と湘南夜景を写す

IMG_9449 [ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:25秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(5)西平畑公園/松田町

ハーブガーデンやアスレチックなどの設備も充実した公園で、毎年夜桜(河津桜)やイルミネーションの時期は夜間営業を行っていて、夜景とのコラボができる。公園内からは小田原方面を中心としたパノラマ夜景が見渡せ、チェックメイトC.C.前からの眺望と似ている。(地図

写真12 小田原方面の夜景を写す

IMG_5273 [ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:18mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:25秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:100 / WB:白色蛍光灯 ]

写真13 東名高速と車の光跡を写す

IMG_5288 [ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM / 焦点距離:128mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(6)大山/伊勢原市

ヤビツ峠 菜の花台やチェックメイトC.C.前よりもスケールが大きく、関東在住の夜景ファンなら一度は見ておきたいレベルの夜景だが、登山装備で駐車場から真っ暗な登山道を90分前後歩く必要があり、完全にナイトハイク系のスポットだ。そのため、単独行動はおすすめできず、夜間の登山に慣れた人と同行するか、日中に念入りに下見をする必要がある。街明かりとは距離があるため、標準~望遠レンズの出番が多くなるが、他の夜景スポットとは比較にならないぐらいの絶景夜景に、誰もが感動するはずだ。秋の紅葉シーズンであれば、夜間でも「阿夫利神社(下社)」まではケーブルカーで訪問できるので、ナイトハイクを避けたい方には特におすすめ。(地図・山頂)(地図・駐車場

写真14 関東平野の大パノラマを写す

IMG_0876 [ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: CANON EF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:82mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

写真15 夜明けの関東平野を写す

IMG_0894 [ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■今月のお勧めスポット「片瀬山富士見坂」

天気が良ければ富士山が見渡せる景勝地として知られており、手前に住宅地が広がるため、夜景も美しい。公共交通機関でも訪問しやすいが、住宅街の中にあるスポットなので、深夜の訪問を控えるなどマナーにも配慮したい。

片瀬山富士見坂
営業時間:定めなし
所在地:神奈川県藤沢市片瀬山
アクセス:湘南モノレール「片瀬山駅」から徒歩約12分
料金:無料
URL:https://trip.pref.kanagawa.jp/ja/destination/kataseyama-fujimizaka/609
写真16 茅ヶ崎方面の夜景を写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:16mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。