前回は公園内の施設である洋館での屋内撮影を行った。休憩を挟み、気分を一新して森林での撮影を試みる。屋内と違い、気持ちは開放的になるので、落ち着いた雰囲気のものだけでなく、爽やかで明るいイメージも求めながらの撮影を行うことにした。
1:公園林
洋館で十分コミュニケーションを取ってはいるが、休憩を挟んでいるので、まずは前回のスタート同様、特にポーズを決めずに自然体の彼女を捉えるようにするといい。
公園は緑あふれるところが多い。樹々や花々にふれあえるような構図で、シャッターを切ってみるといいだろう。
輝くグリーンとくれば、“お約束”とも言えるキラキラ背景をおさえておく。
何よりもモデルの女の子が喜んでくれること間違い無し!だ。
背景の丸いボケは点光源が元になっている。公園等では椿など、葉の光沢が強いものが狙い目。太陽の光を反射して点光源になる。中望遠〜望遠レンズ、絞り開放近くで撮影すると大きな丸ボケになりやすいので、公園で探してみるといい。
少しずつ距離を詰めていく。何度か同じ動きをお願いし、その間に会話を引き出していく。
自然な会話が出来る距離になったら、世間話から話をしつつシャッターを切る。
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表情に硬さが見られなかったので、特に喜怒哀楽を付けずに、まっすぐ見つめてもらった。上のカットと同じ場所で撮影、一瞬吹いた、爽やかでちょっと甘酸っぱい風をイメージした。
Canon EOS-1Ds Mark3 + シグマ 85mm F1.4 EX DG HSM
絞りF2.0 1500秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
2:芝生
開放感たっぷりに、芝生の上を走ってもらうことにした。コミュニケーションが上々だと感じたら、是非チャレンジしてみよう。一緒に走り回ることで、共に開放感を感じることができるし、なにより決まったポーズとは違う彼女の素の魅力を発見できるはずだ。
モデルに先に走ってもらい、追いかけながら声かけをする。振り向いてもらい、また正面を向いてもらう。この一連の動きを、共に走りながら行う。最初に「声をかけたら、こうやって振り向いて」と指示を出しておくと、モデルが向きやすい。
1回で走ってもらう距離は50mくらいまで。けっこう髪は乱れるし、汗もかくので、モデルの具合を見ながら進めたい。
深い芝生があまりにも気持ちよかったので、裸足になってもらった。もちろん、僕も裸足になる。こうしたことは、気分を共有することが大事。
表情だけでなく、ふとした仕草も捉えておく。またモデル自身が自らしてくれる行為も自然と増える。一緒に動くと、楽しい…コミュニケーションの原点だ。
清々しさや爽やかさ、躍動感を出すことができれば、この撮影は成功だ。
服装については、走るかもしれない旨を事前に伝えておくと、モデルも承知して用意してくれるので、必ず行いたい。
公園の芝生に座ってもらうだけではもったいない。寝転がってもらうと、また別の雰囲気のカットがねらえる。特に走ってもらった後なら、横になってもらいやすい。
仰向けになると、モデルは空を見上げるカタチとなる。眩しがることが多いので、モデルには眩しいかどうかを尋ねながら、無理のない姿勢や顔の向きを決めていこう。
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ちょっとアンニュイで切ない感じをだしながら、親密さをイメージ。
Canon EOS-1Ds Mark3 + シグマ 50mm F1.4 EX DG HSM
絞りF1.8 1/640秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
仰向けから横向き → うつぶせと動いてもらうのもいいだろう。自分も一緒に寝転がりながら撮影すると、より親密な感じが増す。
寝転がってもらうにあたっては、大きな布やタオルなどを用意しておきたい。
今日の撮影もいよいよ終わりに近づく。
最後に大きく笑ってもらうか、それとも、もう終ってしまう寂しさか、彼女に尋ねると、答えは後者だった。
そこで、ラストは、後を引くような雰囲気のカットで締めることに。
公園は、ポートレート撮影とは切っても切れない不可欠の場だ。僕自身も、公園ロケは原点の心構えで臨んでいる。今回のテクニック編ではコミュニケーションを切り口とした解説を中心に行ったのも、原点を意識してもらいたいからだ。ポートレート初心者も、ベテランも、やはりポートレートはコミュニケーションがもっとも重要で、その上に撮影がなりたっていることを常に意識したい。
前後編の撮影は、施設である洋館と森林で行ったが、その他ベンチやテーブル、テラスなど、ポーズをお願いしたり、落ち着いて撮影できる小道具になりやすいものが公園には多いので、積極的に使おう。
ただし、公共の場である以上、撮影許可が必要な公園は、許可申請を行うこと。また、許可をもらってあっても、申請が必要ない公園でも、最低限のモラルは守り、他の利用者の邪魔にならないようにすること。
是非お守りいただきたい。
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