今回撮影を行った公園には、施設としての洋館と森林がある。
撮影は、洋館内〜休憩〜屋外の順で行った。
落ち着いた雰囲気のカットを洋館で撮影したかったので、汗をかいたり、疲労や汚れ等を考えると、外よりも洋館での撮影が先と判断した。施設を利用できる時間等の兼ね合いもあるが、その日の撮影スケジュールで公園内をどう使うかを考えておくとスムーズだ。
1:まず取り組みたいこと
最初のカットは、モデルもカメラマンも緊張するものだ。そこで、コミュニケーションを図るために、まず彼女には注文をつけずに、自由に体を動かしてもらうといい。こちらも気楽にシャッターを切ってみる。
はじめに緊張をとっておくことが大事だ。
長めの望遠レンズで、少し離れたところから撮影していくといい。
いきなり近くで撮影すると、モデルの緊張はとれない。ここでは、その場で体を振ってもらった。
少しずつ距離を詰めていく。何度か同じ動きをお願いし、その間に会話を引き出していく。
自然な会話が出来る距離になったら、世間話から話をしつつシャッターを切る。
モデルは同じ立ち位置で、カメラマン側が目線を変える。そうすることで、モデルの表情や仕草の観察になるし、撮影のイメージを作りやすくなるのだ。
すぐに建物内で撮影したいところだが、あえて先に、少しだけ外でシャッターを切る。建物内は限られた空間なので、どうしてもお互いの距離が近くなる。それによる緊張を取り除くためと、オープンな場所の方がモデルに対するイメージをつかみやすいからだ。これを行うことで大幅なタイムロスを防ぐことができる。また最初のコミュニケーションの図り方が、その日の撮影の雰囲気を決定してしまうことも多いので、是非実践しよう。
2:建物へ
この公園内の建物は洋館。ここでの撮影では、上品さとピュアさを前面に出すことをテーマにした。
旧い洋館に、初々しさが浮き上がるように。
広角で、洋館内の雰囲気を見せつつも、彼女が目に飛び込むように意識した。
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窓から入る自然光とランプのタングステン光をミックスさせて、品を出す。背景の窓やテーブルなどが分かる程度にボケをつくる。そのことで、彼女がいる場所のイメージをつかみやすくすることが目的だ。
Canon EOS-1Ds Mark3 +シグマ50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF1.8 1/30秒 ISO100 WB:マニュアル RAW |
こうした光が乏しい条件での撮影は、三脚が必須。またテーブルやイスなどにもたれてもらうことで、モデルの被写体ブレを防ぐことにもつながる。シャッターもレリーズを使い、慎重に。撮影の際にモデルに、「シャッター切ります。シャッター速度が遅いから動かないように」と声かけをするようにしよう。
洋館でのおススメ撮影ポイントの一つが階段。大きな窓があり、直線美に構図の変化と、とても撮影しやすい。また立ってもらったり座ってもらったりと、ポーズもつけやすい。
途中の踊り場にて。
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この階段は、壁一杯の窓からの柔らかい光が魅力的だったので、ここでいくつかのパターンを撮影する。
まっすぐ立ってもらい、佇みを捉える。
Canon EOS-1Ds Mark3 + シグマ50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/200秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
座ってもらうことで、安定したポーズをお願いできるし、モデルも落ち着く。足の位置は段を変えることで動きも出るし、構図も取りやすい。左右を変えてもらいながら撮影するのがいいが、この場面では構図左からのサイド光なので、右足を伸ばすと、足ばかりが明るくなって目立ってしまうことを考え、初めから左足を伸ばしている。
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Canon EOS-1Ds Mark3 + シグマ50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/160秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
座ってもらうことで、安定したポーズをお願いできるし、モデルも落ち着く。足の位置は段を変えることで動きも出るし、構図も取りやすい。左右を変えてもらいながら撮影するのがいいが、この場面では構図左からのサイド光なので、右足を伸ばすと、足ばかりが明るくなって目立ってしまうことを考え、初めから左足を伸ばしている。
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さらに距離を詰める。少し低い位置から、自然な表情を狙う。階段は低い位置からのショットが狙いやすいので、積極体にチャレンジしたい。
Canon EOS-1Ds Mark3 + シグマ 50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/250秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
旧い建物内部は落ち着いた色で統一されていることが多い。窓際は特にシャドウの描写を楽しめる絶好のポイントなので、積極的に撮影していこう。また、サイド光になりやすいので、立体感を表現するにもいいところだ。
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慣れないうちは、窓に直接陽が射し込んでいる状態は避ける。陽が当たるところと、そうでないところの輝度差が大きくなるので、ハイライトが飛んでしまったり、逆にシャドウが潰れてしまうなど、露出決定が難しいからだ。柔らかい光で、しっとりさを求めることからはじめるといいだろう。
Canon EOS-1Ds Mark3 + シグマ50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/100秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
外の背景を活かしながらの撮影は、いかに屋内と屋外との露出差を埋めるか、が問題だ。第一には銀レフやストロボを使用してモデルを明るくする方法がある。だが、不自然さが出てしまわないように注意が必要。
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このカットでは、思いきって背景のグリーンは飛ばし気味にした。樹々に煌めきを感じさせて、露出的には成功だと思う。
Canon EOS-1Ds Mark3 + シグマ50mm F1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/200秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
モデルは陰に入れるようにすると、ラインライトが出る。窓は構図内に少しだけ残すことで、窓際にいることは十分に表現できる。こういう表情はシャドウが活きる。レフ板でキツく起こしてしまうと台無しになってしまうので、ほんのり肌色が出る程度のアンダー目でチャレンジしよう。このカットも、白レフで少し起こしただけだ。
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横顔に見せる静けさや寂しさを表現。
Canon EOS-1Ds Mark3 + シグマ50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF3.2 1/40秒 ISO100 WB:マニュアル RAW |
洋館の内部そのものを活かしたカット以外に、洋館という特別な空間が作り出す“密な雰囲気”を表現するのも面白い。
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親密さが感じられるようなカットを求める。
Canon EOS-1Ds Mark3 + シグマ50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/160秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
大げさなことは要求せず、ゆっくり1枚1枚シャッターを切っていくと、表情の移り変わりを捉えることが出来る。かならず声をかけながら落ち着いて撮影すること。折角の落ち着いた良い雰囲気での撮影で、カメラマン自身が事を迫ってしまうと台無しだ。
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少し切なく、まっすぐな瞳がいい。
Canon EOS-1Ds Mark3 + シグマ50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.2 1/160秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
建物内は、例えばカーペットや床・壁等の色カブリを起こしやすい。可能なら床には白い大きな布をひくといい。色カブリを防げる上に、荷物を置いたり、三脚を立てるなどの行為による床の傷つきも防げる。窓からの緑等によるカブリについては、メイン光になることが多いことを考えると、カラーチャートやグレーボードによるホワイトバランスをおススメする。
さて、ここで休憩とした。昼食を摂り、外へと移動。
次回は公園内・屋外での撮影のテクニックを紹介する。
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