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薮田織也のフォトショップ早わかり
Photoshop Tips & Manual |
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●髭達磨のプチ日記から
2006年6月16日の髭達磨のプチ日記で予告した、「風景写真をミニチュア写真に加工する」テクニックを紹介します。
このテクニックは、普通の風景写真に映っている建物などを、まるで模型を接写したかのように見せるものです。まずは、レタッチ例を見て、どんなものかを確認してください。
普通の風景写真を、どう加工すればミニチュア写真に見せることができるのでしょうか? それには、以下の3点を考慮にいれてレタッチします。
1. |
風景写真独特の霞(青み)を無くす |
2. |
ディテールを潰して、玩具風にする |
3. |
被写界深度を思い切り浅くする |
風景写真というものは、普通、遠景を撮影していますから、大気中のチリやゴミに光が反射して、青っぽく霞んでいるものです。まずは、コントラストと彩度を強くして霞を排除します。
ミニチュアの模型は、どんなに精巧に作ったとしても、実物に比べて細部は粗いものです。よって、実際の建物をミニチュアに見せるには、元の写真の細部をわざと潰します。
最後は、レンズの特性を意識して加工します。それは 「 被写界深度 」 です。被写界深度とは、ピントの合う(と見なされる)距離の範囲のことです。被写体にピントを合わせて撮影すると、被写体の前後にもピントの合う(と思われる)範囲がありますが、これが被写界深度です。ピントの合う範囲が広いほど被写界深度が深い、また逆を被写界深度が浅いと言います。被写界深度には、被写体が遠距離にあると深く、近距離にあるほど浅くなるという特性があります。(表参照)つまり、風景写真は被写界深度が深く、ほぼ写真全体にピントが合っているものなのです。逆に、ミニチュアのような小さなものを撮影するときは、カメラが被写体の近くに寄りますから、被写界深度が浅くなって被写体の周囲がぼけます。この特性を利用して、被写体のうち、主題となるもの以外をぼかすと、ミニチュア写真に見えるというわけです。
では、以上のことを念頭にいれて、レタッチの実際を紹介していきましょう。
●レタッチ操作の流れ
ここでは、以下の機能を使って補正します。
レタッチの流れは、以下の通りです。
あらかじめ、 サンプル画像をダウンロードしておいてください。
この Tips でダウンロードできるサンプル写真には、あらかじめお城の輪郭をトレースした [ パス ] データが含まれています。
操作1
操作2
操作3
●ポイント1 − [ 調整レイヤー ]
風景写真独特の霞を取り除くために、 [ 調整レイヤー ] の [ トーンカーブ ] と [ 色相・彩度 ] を使って、写真のコントラストを上げて、彩度を強くし、色鮮やかな写真に仕上げます。いつものレタッチよりも、ちょっと大げさに調整してもよいと思います。このレタッチの目的からして、不自然な感じにするくらいの方が、かえってリアルになるわけです。 [ 調整レイヤー ] を使うことで、何度でもやり直すことができます。
●ポイント2 − [ ダスト&スクラッチ ]
玩具っぽい雰囲気を表現するために、背景レイヤーをコピーした [ レイヤー ] に、[ フィルタ ] の [ ダスト&スクラッチ ] をかけて、写真のディテールを潰します。
●ポイント3 − [ 比較(明) ]
[ ダスト&スクラッチ ] をかけただけの状態では、あまりにもディテールが潰れ過ぎていますので、 [ 描画モード ] を [ 比較(明) ] にして、さらに [ ダスト&スクラッチ ] をかけた [ レイヤー ] の [ 不透明度 ] を下げ、元の画像のハイライト部分だけを復元します。 こうすることで、 [ ダスト&スクラッチ ] の効果を残しつつ、潰れて欲しくないエッジだけが復元しますので、よりリアルに玩具化できます。
[ 比較(明) ] は、各チャンネル内のカラー情報に基づき、[ 基本色 ] または [ 合成色 ] のいずれか明るい方を結果色として選択します。 [ 合成色 ] よりも暗い画素が置き換えられ、[ 合成色 ] よりも明るい画素は変更されません。
(参照:描画モード)
●ポイント4 − [ 円形グラデーション ]
今回のレタッチ肝となるのが、 [ クイックマスクモード ] での、 [ 円形グラデーション ] による [ 選択範囲 ] 化です。(画面6)
[ クイックマスクモード ] というのは、 [ ブラシ ] や [ グラデーションツール ] などの、Photoshop の多彩な機能を使って、描画する感覚で [ 選択範囲 ] を作るモードです。 [ クイックマスクモード ] において [ ブラシ ] で色を塗ると、その場所が 「 マスク(覆うこと)」 され、 [ クイックマスクモード ] から通常のモードに戻ると、マスクされたところ以外が [ 選択範囲 ] となるのです。このとき、ぼかしのある [ ブラシ ] を使うと、ぼかしのイメージで [ 選択範囲 ] が作られます。これと同様に、 [ クイックマスクモード ] で、描画色から透明へと変化する [ グラデーション ] を使うと、その [ グラデーション ] のイメージで [ 選択範囲 ] が作られるわけです。
[ 円形グラデーション ] は、円の中心から、円の外周に向かって [ グラデーション ] が描画されるツールです。
[ クイックマスクモード ] において [ グラデーション ] を使って作った [ 選択範囲 ] を、次で説明する [ ぼかし(レンズ) ] フィルタによって、ぼかすことで、被写界深度を表現しようというわけです。
●ポイント5 − [ 選択範囲を変形 ]
[ 円形グラデーション ] で作成した [ 選択範囲 ] は、正円です。このままでは都合が悪いので、この正円の [ 選択範囲 ] を横に長い楕円にする必要があります。そこで、 [ 選択範囲 ] メニューにある [ 選択範囲を変形 ] コマンドを使います。この機能は、 [ 選択範囲 ] を、まるで図形のように変形させることのできる機能です。
模型などのミニチュアをマクロ撮影した写真をよく観察すると、ボケは円状に広がっているのがわかります。よって、この Tips では [ 円形グラデーション ] で作った [ 選択範囲 ] に [ ぼかし(レンズ) ] をかけています。
●ポイント6 − [ ぼかし(レンズ) ]
[ ぼかし(レンズ) ] フィルタは、レンズのボケ足をイメージした「ボケ」が表現できるフィルタです。( 詳細は、「 背景をリアルにぼかすには 」 を参照 ) レンズのボケ足が表現できるとは言っても、 [ 選択範囲 ] を何も指定せずに、このフィルタをかけただけでは、ただ写真全体がピンボケになってしまうだけです。上記した [ 円形グラデーション ] で作成した [ 選択範囲 ] に対して使うことで、被写界深度の浅い写真を作ることができるのです。
●ポイント7 − [ パス ]
[ 円形グラデーション ] で作成した [ 選択範囲 ] に、そのまま [ ぼかし(レンズ) ] フィルタをかけると、建物の上部までもがボケてしまいます。これではリアルな写真にはなりません。そこで、お城の輪郭を [ ペンツール ] でトレースして、その [ パス ] を基に [ 選択範囲 ] を作成し、 [ ぼかし(レンズ) ] をかけていない元の写真からコピーすることで、よりリアルな写真に仕上げます。ここでは、サンプル写真にあらかじめ含まれている、お城の輪郭をトレースした [ パス ] データを使います。
●ポイント8 − [ 消しゴムツール ]
お城の輪郭の [ パス ] データは、少し広い範囲に作られていますので、そのままではボケている部分と、シャープな部分の境界が際立ち過ぎてしまいます。そこで、 [ 消しゴムツール ] を画面13 の方法で設定し、境界を曖昧にしたい場所で使い、最後の仕上げを行ないます。
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Photo by Oliya T.Yabuta
▼画面1 |
サンプル写真を開いて 「 コントラスト 」 を強くする |
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▼画面3 |
すべてのレイヤーを統合して、レイヤーを複製する |
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▼画面4 |
[ ダスト&スクラッチ ] をかけて [ 比較(明) ] にする |
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▼画面5 |
すべてのレイヤーを統合して、再度、背景レイヤーを複製する |
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▼画面6 |
[ クイックマスクモード ] で、 [ 円形グラデーション ] をかける |
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▼画面7 |
[ 円形グラデーション ] を [ 選択範囲 ] に変える |
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▼画面8 |
[ 選択範囲 ] を水平方向にのみ拡大する |
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▼画面9 |
[ 選択範囲 ] を [ ぼかし(レンズ) ] でぼかす (1) |
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▼画面10 |
[ 選択範囲 ] を [ ぼかし(レンズ) ] でぼかす (2) |
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▼画面11 |
城の輪郭をパスで囲んで、 [ 選択範囲 ] に変換する |
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▼画面12 |
[ 選択範囲 ] を新規レイヤーにコピー |
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