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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第33回 手持ち夜景撮影入門

Posted On 2017 8月 31
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

今月の「 岩崎拓哉の夜景撮影講座 」は ”手持ち夜景撮影入門 ”です。夜景撮影には三脚が欲しいところですが、昨今は残念ながら ” 三脚禁止 ” のスポットも珍しくありません。また、” 会社帰りに手軽に夜景撮影 ” と、いった場合もあるかと存じます。今回はそんなケースでの夜景撮影術を解説しております。 by 編集部

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今年は東京では8月に入って21日連続で降雨日となり、夜景撮影には少々厳しい日々が続きました。今回は船の上や陸地などで三脚が使いづらいシーンにおいて、手持ちでキレイに夜景を撮るテクニックを解説します。

写真1 ミラーレス一眼で手持ち撮影

工場夜景クルーズ(東亜石油)

[ ボディ:CANON EOS M3 / レンズ:EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM / 焦点距離:15mm(24mm相当) / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:1/25秒 / 絞り数値:F3.5 / ISO感度:3200 ]

川崎・京浜運河の工場夜景クルージングで撮影した1枚。製油所のプラントを間近で撮影できるポイントで手持ち撮影した。高感度+絞り開放に設定することで、ブレの目立たない写真が撮れた。作例は一世代前のミラーレス一眼「Canon EOS M3」で撮影。船が停船中で目の前の工場の光量が強かったため、ISO 3200でもキレイに撮影できた。

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■三脚が使えない( 使いづらい )3つのシチュエーション

夜景撮影は三脚にカメラを固定して撮影するのが基本だが、最近は三脚が使えない場所も増えており、手持ちで撮影しざるを得ないシーンも少なくない。ただ、新しいカメラほど高感度に強くなっており、最近はISOを6400前後まで増感してもノイズがさほど目立たない機種も多い。ソニーやオリンパスなど5軸手ぶれ補正を搭載したカメラも増えており、手持ち撮影のハードルは徐々に下がっている。

(1)船上

写真2 工場夜景クルージングの船上

船上の撮影風景

スタジオグラフィックスが主催する工場夜景クルージングの撮影会(2016年7月)。参加者の多くが一脚を持参していた。

足元が常に揺れているため、三脚を船上に固定してもほぼ意味が無い。一脚を体に固定した方がむしろ効果がある。

(2)三脚が禁止された施設

写真3 三脚使用が禁止された歩道

三脚が使えない施設

最近は屋内の展望施設だけでなく、橋の歩道なども三脚使用が厳しくなっている。

都心の展望施設など三脚が使えない場所が増えている。中には東京都庁 展望室のようにカメラの固定自体が禁止されている場所も。

(3)人混み

写真4 公道のイルミネーションスポット

イルミネーションスポット

三脚が禁止されていなくても人通りが多い場所は手持ち撮影がスムーズ。

イルミネーションスポットなど訪問者が多い場所は三脚を立てづらく、必然的に手持ち撮影となることも。

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■手持ち撮影のポイント

手持ちでもキレイに夜景を撮るためには感度を上げて絞りを開放寄りにするのが鉄則。手ぶれ補正の段数が多ければ1~2秒ぐらい手持ちで撮れる機種もあるようだ。

写真5 高感度に強いフルサイズ一眼レフ

Canon EOS 6D Mark2

2017年8月に発売された「Canon EOS 6D Mark II」を導入。常用ISO感度が40000となっており、ISO 6400でもさほどノイズが目立たない。手持ちで撮るなら手ぶれ補正対応レンズも忘れずに。

(1)なるべく高感度に強いカメラを選ぶ
デジタルカメラは一般的に新しい機種ほど高感度に強い。センサーサイズの大きさも高感度耐性に影響するので、最新のフルサイズ機が最も優れている。

(2)絞りは開放寄り
レンズの開放絞り値が低いほど明るく撮れる。できれば開放絞り値がF2.8以下、最低でも通しでF4ぐらいのレンズを使用したい。F値の明るい単焦点レンズも良いが、手ぶれ補正に対応していないレンズが多いので注意。

(3)ISO感度は6400前後を目安
シャッター速度を稼ぐためにISO感度は上げて撮るのが基本。撮影シーンにもよるが、ISO感度は3200~12800前後で撮る機会が多い。高感度撮影時のノイズリダクションはかけておいた方がいいが、「強」に設定するとディティールが崩れやすいため、「弱」か「標準」が良いだろう。

(4)手ぶれ補正スイッチをON
レンズ側に手ぶれ補正スイッチがある場合は必ずONにしよう。本体側で手ぶれ補正を制御する機種もある。

(5)露出はマイナス寄り

イルミネーションなど光が近いシーンであれば露出補正の必要はあまり無いが、街明かりなどの夜景は暗めに写して後からRAW現像で露出を上げた方が手ブレのリスクを軽減できる。

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■作例(1)空が明るい時間を狙って手持ち撮影

空に明るさが残る夕景~トワイライトタイムは手持ち撮影の絶好のチャンス。完全に真っ暗な時間帯に比べてシャッター速度が稼げるので、作例のようにISO感度を下げて絞っても撮りやすい。撮影場所は三脚は禁止されていないが、手持ち撮影のおかげでフットワークが軽くなるメリットも。

写真6 トワイライトタイムの横浜みなとみらい

象の鼻パーク

[ ボディ:CANON EOS 6D Mark2 / レンズ:EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:50.0mm / 撮影モード:絞り優先AE  / 露出補正:0 / シャッター速度:1/8秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:1600 / WB:白色蛍光灯 ]

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■作例(2)工場夜景クルージングで手持ち撮影

横浜発の工場夜景クルージングと言えば川崎・京浜運河方面が主流だが、根岸・本牧ルートも見応えのある工場夜景が楽しめる。作例は本牧ふ頭のクレーン群でオレンジ色の照明が幻想的。光量があるため、ISOを6400まで下げてキレイに撮れた。船上での撮影はISO 12800を使うことが多い。

写真7 本牧ふ頭のクレーン群

IMG_1173

[ ボディ:CANON EOS 6D Mark2 / レンズ:EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:30.0mm / 撮影モード:絞り優先 / 露出補正:-1 / シャッター速度:1/100秒 / 絞り数値:F4.0 / ISO感度:6400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■作例(3)三脚が禁止された歩道から手持ち撮影

レインボーブリッジの両側の歩道から夜景が楽しめるが、三脚使用が規制されていて、足場も揺れやすいため、長時間露光が困難。主塔に展望スペースが4ヶ所あり、場所によって景観が異なる。なるべく街明かりが近い場所を狙って撮影するとISO感度も下げられ、綺麗な夜景写真が撮れるはずだ。

写真8 レインボープロムナードからループ橋を写す

IMG_9948

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:28.0mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:1/15秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:8000 / WB:白色蛍光灯 ]

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■今月のお勧め夜景スポット「東京ゲートブリッジ歩道」

恐竜橋の名前で親しまれる東京ゲートブリッジには歩道があり、期間限定で夜間開放している。三脚は使えないが、遠くに東京タワーや東京スカイツリーが見渡せる。街明かりが遠いため、手持ち撮影の難易度は高いが、三脚が使える若洲海浜公園と合わせての訪問がおすすめ。

東京ゲートブリッジ歩道
開放時間:夜間の入場は夏期(7月1日~9月30日)の金・土曜日は午前10時から午後8時まで(最終入場は午後7時30分まで)
所在地:東京都江東区若洲
アクセス:JR京葉線・地下鉄有楽町線・りんかい線「新木場」駅から都バス「木11系統」に乗車。若洲キャンプ場前で下車
料金:無料
URL:東京ゲートブリッジ(夜景INFO)

写真9 東京ゲートブリッジ歩道からの夜景

東京ゲートブリッジ歩道からの夜景

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:70mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:1/50秒 / 絞り数値:F4.0 / ISO感度:12800 / WB:白色蛍光灯 ]

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。