星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内
第4回 北陸編~ 02
Photo : Teruyasu Kitayama
TOPIX
今回の撮影スポットは前回に引き続き能登半島の撮影スポットのご紹介です。能登半島の先端に近い東海岸に位置する「見附島」。別名「軍艦島」と呼ばれる見附島の星景写真の撮り方を解説しております。ぜひご覧ください。 by 編集部 <本記事は 2021 年 4月現在の情報です。現状は記事内容と異なる場合がございます。> |
皆さんこんにちは。星景写真家の北山です。
今回の日本星空名所は北陸編の2回目ということで、前回に引き続き能登半島の撮影スポットをご紹介したいと思います。前回は富山湾を眼前に望む比美乃江公園での撮影についてご紹介しましたが、今回はさらに北上をして、能登半島ならではの絶景と星空を撮影してまいりましたので、その模様をご紹介いたします。
Index
1.能登半島の撮影スポット2
今回私が訪れたのは、能登半島の北、石川県珠洲市にある「見附島」です。
別名で「軍艦島」という名前が付いているように、見た目はまさに軍艦の先端のような形をしています。航空写真で上から見ると、菱形状になっていることが分かりますが、その大きさは高さ約 30m、奥行きは約 160m と非常に大きいのが特徴です。島といっても、人が住めるようなものではありません。昭和 30 年頃までは登ることができたようですが、今は禁止されており、基本的には対岸から見ることになります。「見附島」の名前の由来は、弘法大師が海上から見つけて上陸したことがきっかけのようです。
今回、私が見附島に来た理由は大きく2つあります。1つ目は、海岸から見附島の方角が南東になるため、前回のテーマでもあった「横たわる天の川」と共に撮影できること。2つ目は、見附島は昔から月を見る名所としても知られており、「見月島」とも言われることもあるそうで、ぜひ月と共に撮影したいと思ったからです。この日、天の川が地平線から昇ってくるのは2時以降、月の出は4時というスケジュールで、深夜から明け方に撮影が集中していましたので、移動疲れを癒すためにも、近くの国民宿舎に宿を取りしっかり休息を取って撮影に臨むことにしました。なお、見附島には大きな観光用駐車場やトイレも併設されていますので、そちらを利用することもできます。
2.見附島での撮影のポイント
見附島で撮影をする際のポイントは、機材を展開する前に自分のカメラのポジショニングを考えるということです。再び航空写真を見てみると、見附島の海岸はおおよそ 95° 程度折れ曲がっていることがわかります。カメラを置く場所によっては、北東に見附島を配置することもできますし、南東や南南東に配置することもできます。このように、被写体に対してカメラのポジショニングをある程度自由に決められる場合は、テーマを意識して撮影場所を決めることが重要です。今回は横たわる天の川と見附島という狙いですので、東から南東に見附島を配置するとバランスがよくなります。それでは実際の写真をご覧ください。
撮影している海岸の雰囲気が伝わるように、地上も多めに写しました。この日は干潮時刻が6時 30 分でしたので、天の川を撮影しているタイミングでは、潮が引き見附島へと渡る岩の道も現れていましたので、その道の先に漁船が来る瞬間にシャッターを切り、印象的な作品に仕上げました。ここまで来ると富山方面の明かりの影響も受けにくくなり、写る星の量も増えるため、Kenko 製のプロソフトン クリアを使用し、明るい星だけを目立たせるようにしています。
なお、ポジショニングによっては、見附島へと渡る道を強調した写真を撮ることもできます。先ほどの写真と比べると、天の川の「道」と地上の「道」という2つの要素がより強調された作品となりました。
3.月の出と見附島を狙う
天の川の撮影がひと段落しましたので、次の狙いである「見附島と月」の撮影の準備に入ります。見附島の高さは 30m、岸からの距離はおよそ 200m でしたので、角度ではおよそ 8.3° となります。8.3° を画角で考えると、35mm 判換算で 160mm 程度のレンズを使った際の長辺目一杯の角度になります。月を大きく写すためにはできるだけ望遠を使いたいところですが、それではぎゅうぎゅうの構図になってしまうことと、今回は月明かりによって生じる「ムーンロード」も写したかったため、余裕を持って 100mm 程度で撮影することにしました。実際に撮影した写真はこちらです。
月のクレーターが写る露出で撮影をすると、地上風景がまったく写らなくなるため、ここでは地上風景が分かる程度まで露出をかけています。そのため、月は白飛びしていますが、代わりに月の地球照をはっきり捉えることができました。これに加え、見附島はその大きさがより強調されるよう、シルエットになるかならないかのギリギリの露出を選択しています。ちなみに、露出が変わる薄明の時間帯では、カットごとに露出が変わってきてしまいますので、こういう時は構図やピントだけに集中し、あとは RAW のレタッチでカバーすると割り切ることも重要です。
4.そのほかの撮影地
今回の遠征では、他にもいくつかスポットを回りながら撮影を行いました。その中でも思い出深い撮影地をご紹介したいと思います。
この写真は能登半島の西側、志賀町にある「機具岩(はたごいわ」です。大小二つの岩は、小さい方を男岩、大きい方を女岩と言い、有名な夫婦岩である伊勢の二見岩にちなんで、「能登の二見岩」とも呼ばれているそうです。日中のロケハンの際に見つけた場所ですが、展望台から眺めるもよし、階段を降りて海岸から見上げるのもまた迫力があるということで、再び夜に訪れて撮影したいと狙いをつけました。次は実際に撮影をした写真です。
見ていただくと分かりますが、岩肌がオレンジ色に照らされています。私も夜に再訪するまで気づかなかったのですが、これはすぐ近くの道路の照明が反射したものです。
ライトアップ用の投光器が備え付けられていましたが、訪れたタイミングではライトアップは行わないことが分かっていたため安心してしまい、道路照明の存在まで気が回らなかったのはロケハン不足でした。これではさすがに星の撮影は困難なため、早々に退散することになりました。ちなみに、このようなシチュエーションに遭遇した場合は「光害カットフィルター」を用いることで、道路照明の反射をある程度軽減して撮影することもできます。今回はマルミ光機製の「 StarScape 」というフィルターを使って撮影を行いました。「写真8」がその写真となります。
5.次回予告
2回に渡ってお送りしました北陸編、いかがでしたでしょうか?今回は能登半島にスポットを当ててご紹介をしましたが、またいつか別のスポットもご紹介していきたいと思います。さて、次回は再び中部編ということで、長野県の撮影スポットをご紹介したいと思います。乞うご期待!
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
北山輝泰