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萩原和幸 流
サムヤンレンズ使い倒し術 第14回
SAMYANG XP50mm F1.2

写真と文:萩原 和幸 モデル:斉藤明日美(シェリーズ・エンタテインメント)


TOPIX

本サイトでお馴染みの写真家・萩原和幸が、高コストパフォーマンスで写真好きの耳目を集め始めているサムヤンレンズをトコトン使い倒す「 萩原和幸流サムヤンレンズ使い倒し術 」。豊富なラインナップを誇るサムヤンレンズから、萩原氏がお気に入りの一本を選んでスナップ、ネイチャー、ポートレートなどなどで使い倒した生々しいレビューを月1でお届けしています。今回取り上げたのは SAMYANG 自慢の 5000 万画素オーバーの超高画素カメラや 8K 動画撮影にも対応する高解像力レンズ「 XP 」シリーズから、開放絞り F1.2 のフルサイズ対応単焦点 50mm 標準マニュアルレンズ「 SAMYANG XP50mm F1.2 」です。それではお楽しみください。  by 編集部


Index

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■ 大口径 F1.2 の次世代対応標準レンズ

第 14 弾は、「 XP50mm F1.2 」。XP50mm F1.2 はサムヤンの高性能レンズラインである「 XP 」シリーズからラインナップされた標準レンズだ。「 XP 」シリーズは 5000 万画素オーバーの超高画素カメラや 8K 動画撮影にも対応する高解像力を誇るシリーズで、これまでのところ、XP85mm F1.2、XP14mm F2.4 がラインナップされている。

写真1 SAMYANG XP50mm F1.2
SAMYANG XP50mm F1.2

SAMYANG XP50mm F1.2

標準レンズといえば、いまさらここで申し上げることもないほどに各メーカーが威信をかけて開発している画角で、開放値は F1.2 クラスの大口径レンズから、F2 クラスのコンパクトサイズにマクロレンズなど、ユーザーにとっては選択肢が豊富に揃っている。でも逆を申せば、どのレンズをチョイスしたらいいか迷う画角でもある。これは 50mm が万能レンズであるが故の贅沢な悩みと言える。「 これ一本! 」となかなか腰が据わらないから面白い、実に興味深い画角だ。

写真2 EOS 5D Mark IV に装着
SAMYANG XP50mm F1.2 を EOS 5D Mark IV に装着

SAMYANG XP50mm F1.2 を EOS 5D Mark IV に装着

さて、この「 XP50mm F1.2 」、レンズ構成8群 11 枚。絞り羽根は9枚。フィルター径は 86mm だ。マウントは、現在のところキヤノン EF のみ。これからのマウントラインに期待したいところ。今回の撮影で使ったカメラは EOS 5D Mark IVだ。

写真3 レンズフードを装着
SAMYANG XP50mm F1.2 にレンズフードを装着

SAMYANG XP50mm F1.2 にレンズフードを装着

カメラに装着したレンズの第一印象は、大きい! マニュアルフォーカス専用レンズでありながら、全長 117.4mm、重量は 1.2kg もある。開放値 F1.2 という大口径であることを加味しても大柄だ。これだけのヘビーサイズを負担してでも「 5000 万画素オーバー 」、「 8K 動画撮影 」に対応する高画質を提供するという、真摯な姿勢が見て取れる。ちなみにEOS 5D Mark IVに装着してみて、ずっしりと手のひらにレンズの重みが伝わってくる。

写真4 XP50mm F1.2 の鏡胴
電子接点を装備しているでカメラ側から絞り設定できる

電子接点を装備しているでカメラ側から絞り設定できる

ピントリングは MF 専用とあり、幅広でラバー状になっていて指にとても馴染む。トルクはやや重め。開放値 F1.2 なのでピント合わせは慎重になることから、これくらいの重さでいいだろう。動画撮影でもしっくりくると思う。電子接点を装備しているので、絞りの設定はカメラ側から行う。

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■ メーカーサイト ■
SAMYANG XP50mm F1.2

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■ ポートレートで試してみた

それではさっそく撮影に向かう。今回は 50mm 標準レンズということもあり、ポートレート一本で作例を紹介していこう。

※ 注意
本文中の 実画像 の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示に注意してください。サムネイル画像をクリックするとリサイズした画像がポップアップ表示されます。

写真5  実画像 ファイルサイズ:約 12.0MB
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/3200 秒 ) +0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/3200 秒 ) +0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真6  実画像 ファイルサイズ:約 11.7MB
寄ってみての描写を確認。大口径で最短撮影距離に近いという条件でもキチッと解像しているのがわかる  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/2000 秒 ) +0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

寄ってみての描写を確認。大口径で最短撮影距離に近いという条件でもキチッと解像しているのがわかる
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/2000 秒 ) +0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真7  実画像 ファイルサイズ:約 12.2MB
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/500 秒 ) +3.0 補正 ISO:200 WB:オート RAW

Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/500 秒 ) +3.0 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真8  実画像 ファイルサイズ:約 12.6MB
円形絞りを謳っていないので点光源は丸にはならない。ボケ味自体はややレトロな感じがするが、味わいがあって良い。私はかなり好み  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/1250 秒 ) +1.0 補正 ISO:200 WB:オート RAW

円形絞りを謳っていないので点光源は丸にはならない。ボケ味自体はややレトロな感じがするが、味わいがあって良い。私はかなり好み
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/1250 秒 ) +1.0 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真9  実画像 ファイルサイズ:約 12.7MB
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/2000 秒 ) +1.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/2000 秒 ) +1.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真10  実画像 ファイルサイズ:約 14.8MB
F1.2 の被写界深度の浅さからくる、背景が近いところでもボケがモデルを浮き上がらせて見せる感じがよくわかる  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/160 秒 ) +1.3 補正 ISO:200 WB:オート RAW

F1.2 の被写界深度の浅さからくる、背景が近いところでもボケがモデルを浮き上がらせて見せる感じがよくわかる
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/160 秒 ) +1.3 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真11  実画像 ファイルサイズ:約 13.8MB
ちょっと絞ることでシャープさが増す。F2.5 でも絞った実感、F1.2 開放とはそれほど明るい  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f2.5 1/2500 秒 ) +0.3 補正 ISO:200 WB:オート RAW

ちょっと絞ることでシャープさが増す。F2.5 でも絞った実感、F1.2 開放とはそれほど明るい
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f2.5 1/2500 秒 ) +0.3 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真12  実画像 ファイルサイズ:約 18.5MB
あまりの暑さから私の扇子を渡し、扇いでもらいながらの撮影に。全身でこれだけの引きの画、背景との距離も近いにもかかわらず、ボケによる浮き上がり効果が見られる  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/4000 秒 ) -0.3 補正 ISO:200 WB:オート RAW

あまりの暑さから私の扇子を渡し、扇いでもらいながらの撮影に。全身でこれだけの引きの画、背景との距離も近いにもかかわらず、ボケによる浮き上がり効果が見られる
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/4000 秒 ) -0.3 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真13  実画像 ファイルサイズ:約 13.9MB
背景と距離がない場合でも大きくぼかすことができるのも大口径のいいところ。やや湿気を感じさせる描写なので、こういう画にマッチする  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/800 秒 ) -0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

背景と距離がない場合でも大きくぼかすことができるのも大口径のいいところ。やや湿気を感じさせる描写なので、こういう画にマッチする
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/800 秒 ) -0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真14  実画像 ファイルサイズ:約 14.9MB
まるで中望遠クラスでの撮影を彷彿とさせる。これも F1.2 だからこそ。前ボケも悪くない  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/2500 秒 ) +1.3 補正 ISO:200 WB:オート RAW

まるで中望遠クラスでの撮影を彷彿とさせる。これも F1.2 だからこそ。前ボケも悪くない
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/2500 秒 ) +1.3 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真15  実画像 ファイルサイズ:約 12.3MB
真夏のお昼時に撮影していたので、トップライトになっているが、それも面白いのでシャッターを切る  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.6 1/320 秒 ) +3.0 補正 ISO:200 WB:オート RAW

真夏のお昼時に撮影していたので、トップライトになっているが、それも面白いのでシャッターを切る
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.6 1/320 秒 ) +3.0 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真16  実画像 ファイルサイズ:約 14.8MB
影が多い下町の路地は光も乏しく背景がごちゃごちゃしているが、それが路地の良さでもある。F1.2 の大口径レンズなら、背景をスッキリとボカすか、絞り込んでごちゃごちゃ感を生かすか、その選択の幅が大きく広がる  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.4 1/640 秒 ) +1.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

影が多い下町の路地は光も乏しく背景がごちゃごちゃしているが、それが路地の良さでもある。F1.2 の大口径レンズなら、背景をスッキリとボカすか、絞り込んでごちゃごちゃ感を生かすか、その選択の幅が大きく広がる
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.4 1/640 秒 ) +1.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真17  実画像 ファイルサイズ:約 14.8MB
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/2000 秒 ) +1.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/2000 秒 ) +1.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真18  実画像 ファイルサイズ:約 13.5MB
絞り開放のボケはやや渦巻きを感じるが、ボケは大きいしさほど気にはならない。むしろピントがしっかりと合ったところがキリッと浮き上がる様が美しい  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/3200 秒 ) +0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

絞り開放のボケはやや渦巻きを感じるが、ボケは大きいしさほど気にはならない。むしろピントがしっかりと合ったところがキリッと浮き上がる様が美しい
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/3200 秒 ) +0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真19  実画像 ファイルサイズ:約 12.2MB
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.2 1/1250 秒 ) +1.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.2 1/1250 秒 ) +1.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真20  実画像 ファイルサイズ:約 14.6MB
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.4 1/1250 秒 ) +0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.4 1/1250 秒 ) +0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

写真21  実画像 ファイルサイズ:約 12.6MB
後ボケも前ボケも、F1.2 ならコントロールの幅が大きいので、意図したボケを探りながら撮影するのも面白い  Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2   絞り優先 AE( f1.8 1/2500 秒 ) +0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

後ボケも前ボケも、F1.2 ならコントロールの幅が大きいので、意図したボケを探りながら撮影するのも面白い
Canon EOS 5D Mark IV + XP50mm F1.2
絞り優先 AE( f1.8 1/2500 秒 ) +0.7 補正 ISO:200 WB:オート RAW

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■ 総評

シャープさは備えているものの、カリカリと太い線ではなく、繊細で少し湿気を含んだような描写がとても印象的なレンズだ。開放からピントはしっかりとくるので、ついつい開放で撮影したくなってしまうが、開放値では被写界深度がとても浅いので、落ち着いての撮影となるが、モデルと呼吸を合わせながらシャッターを切ることになりそれはそれでオツなものだ。今回ほとんど絞り開放で撮影したが、周辺光量落ちも実感はなく、ポートレートでは安心してガンガン絞り開放で撮影できる(笑)。大口径 F1.2 でこれだけの素晴らしい描写を見せてくれるこのレンズ、先々のカメラの世代交代にも十分対応できるだろうし、将来への投資という大げさな価格でもない。F1.2 を探している方、これは一度手に取ってみてほしい。

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著者について
■ 萩原 和幸 (はぎわら かずゆき) 写真家 ■   1969年 静岡県出身。東京工芸大学写真技術科卒業、静岡大学人文学部法学科卒業。 写真家・故今井友一氏師事。独立後、K&S Photograph∞を設立。 フリーランスのフォトグラファーとして雑誌での撮影・執筆や広告撮影などで活動中。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。静岡デザイン専門学校非常勤講師。