鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座第4回 鉄道写真の王道!編成写真( 後編 )
Photo : Masato Endoh
TOPIX
前回に引き続き鉄道写真の王道である ”編成写真の撮り方 ”の後編となります。編成写真を撮影する際のお勧めの機材、カメラ設定について詳細に解説をしております。ぜひご覧ください。 by 編集部 |
みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。前回に引き続き、編成写真の撮影技法を解説いたします。鉄道写真の基本的なテクニックは以前にお話しいたしましたが、今回は特に編成写真向けの話題をします。撮影時の設定が大事ですので、じっくりご理解いただけると嬉しいです。
1.編成写真にオススメの機材
写真1 富山地方鉄道
よくセミナーなどでオススメのカメラはありますか、と聞かれます。いまのデジタルカメラはメーカー各社が特色を出すために様々な規格のものが市場にあふれています。センサーサイズのカテゴリーだけでも、中判サイズからフルサイズ( 35mm 版 )や1/2.3 インチサイズのものまで多種多様です。一台ですべての写真が撮れるオールマイティーなものがあれば良いのですが、なかなかそうはいきません。
それぞれに良さがあるのですが、人気の撮影地に行き周りを見渡すとある傾向を感じます。APS サイズのセンサーカメラと中望遠から超望遠の機材が多いのです。つまりは望遠に強い機材が多く選択されているのです。
編成写真においてはできるだけ広範囲にピントが合いつつ、被写体の形状が美しく写すことが理想です。特に編成写真では50 mm 標準レンズから200 mm 程度の画角をカバーするレンズが多用されています。反対に極端な広角レンズは被写体の形状を歪めてしまうので、控えたほうが良さそうです。
ちなみに私の場合は常に二台のカメラを持ち歩きます。カメラは手持ちでの撮影が基本となるのですが、二台のカメラを肩にかけ同時に使うこともよくあります。センサーサイズはフルサイズとAPS サイズの両方です。場所によって判断は変わりますが、望遠レンズと標準系のズームレンズをそれぞれに装着し、どのような状況にも対応出来るようにしています。両肩にカメラを掛けることについて最初は違和感があると思いますが、訓練をすれば慣れるはずです。たまにカメラ一台での撮影の時もありますが、列車が来る寸前のレンズ交換などは今だに冷や汗モノです。リスクを減らす意味でも有効な策です。
またカメラの機能もそうですが、それ以上に気にしたいことが過酷な環境下にも十分に動作可能かどうかという点です。できる限りタフに動くカメラを選びたいところです。近年は異常気象の影響もあってか、夏は外気温が 40 ℃ を超える日も珍しくなくなってきました。一方で、雪をまとって走る列車を撮影しすると、気温 -10 ℃ は当たり前の世界です。冬の北海道などは-20 ℃の時もありますから、温度差は±60℃にもなります!
しかしながら、市販のカメラはほとんどの機種が 0 ℃ ~ 30 ℃ での使用を基本として設計されています。可能な限り厳しい環境下での酷使は極力控えましょう。また、万が一故障しても保証の対象外ですから、あくまで自己責任の世界となります。まれに真夏や真冬でもカメラを出しっぱなしで撮影している人も見かけますが、故障の原因ともなりうるのでやめましょう。また雨など場合も同じです。防塵防滴設計のカメラも多く出ていますが、それでもやはり大切なことは機材を大事に扱うことが基本です。
カメラは黒いものが多く熱を吸収しやすいので、暑い時はカメラを日陰に入れて発熱を抑えましょう。反対に寒い時にはできるだけ温かい状態を保つように工夫しましょう。特にミラーレスは電池容量も少ないので、一層気を配りたいところです。
2.フォーカス設定
カメラの設定で悩ましい要因の一つがこのフォーカス設定です。まず、フォーカス設定には大きく分けて2種類あります。それは止まっている被写体向きのシングルフォーカスモードと、動いている被写体を狙い続けるコンティニュアンスモードです。カメラがそれら二種類を自動選択してくれるオートモードもあります。最初はオートモードでも良いと思いますが、私の場合は常にコンティニュアンスモード( C モード )を選択しています。
編成写真以外の場面でも、そのままのことが多いです。停まっている被写体を撮影すると稀にフォーカスが迷うこともありますが、大抵の場合は問題なく合焦しています。まめにシングルモードに切り替えられる方は良いのですが、私のような大雑把(?)な人間は設定を戻し忘れることも多いため予防策としても有効です。
3.連写機能の設定
銀塩一眼レフの時代は「 鉄道写真 = 高速連写が命! 」つまりは高性能カメラが持て囃されていましたが、記録媒体がフィルムからメディアにとって替わった今、よほどのことがない限り、撮影枚数を気にすることは無くなりました。
それが現在はどのカメラにも連写機能が標準搭載されています。撮影設定一つで変えられます。便利な時代です。反対にミラーレス時代が到来し、秒間 60 fps( コマ )連写が可能となる時代になりました。少し懐古的な方に話が脱線してしましたが、編成写真の撮影においては秒間 8 ~ 10 コマ程度のもので十分に対応できます。もちろん一瞬を狙うために、それ以上に撮れる設定でも良いです。しかし、単純な話で秒間 120 fps を選択し、3 秒間連写した場合は・・・。
この先は言わずもがな、必要なカットをセレクトする作業も増しますので、くれぐれもご自身で扱いやすい範囲でお使いください。
いずれもデジタル時代の話ですが、昔は連写するたびに画像データが小さくなってゆく摩訶不思議な機種もあったり、レンズが複数あるカメラも登場したり・・・いろいろな機種が存在していました。連写の歴史にデジタル時代黎明期の苦労が偲ばれます。それが今では・・・!!ありがたく連写を使わせていただきましょう。
またシャッターモードは極力、電子シャッターモードを使用しない設定にしましょう。電子シャッターモードでは動くものを撮影した際にローリングシャッター歪( わい )が発生する可能性があり、車体の一部が不自然に歪んで写ることもあります。携帯電話で撮影すると顕著に発生しますが、一眼カメラも一部機種で発生するそうです。以上を踏まえて、現時点では秒8~ 10 コマ程度で十分だといえそうです。
4.次回予告
さて、ここで編成写真のお話は終了です。
小難しい話もありましたが、ある意味で鉄道写真の基礎にもつながるので、少々堅苦しくなりました。次回からはまた違ったテーマでお届けしますのでご期待ください!
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遠藤真人