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ゴーストを低減するための工夫 |
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AT-X 16-28mm F2.8 PRO FX は、前玉が半球状に突出している。
焦点距離がもっと短いフルサイズ用レンズであれば、こうした前玉が突出している製品がほとんどだが、16mmスタートの超広角ズームとしては極めて異例のこと。前玉が突出しているので、PLフィルターはもちろん、保護フィルターですら装着できない仕様だ。
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ボクは、ハレ切りを容易にするために、ホットシューに取り付ける「レンズシェードクリップ80」というアイテムを購入。風の強い日にはシェードが吹かれて使えないものの、重いカメラボディとレンズを片手で支える必要がないので楽ちんだ。 |
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最近気に入っているのが、ソニーの外付けLCDモニター「CLM-V55」。HDMI接続の5型液晶モニターで、折りたたみ式の斜光フードが標準装備なので、屋外でも視認性が良く、快適にライブビュー撮影できる。バッテリーは着脱式なので、予備バッテリーを用意しておけば長時間の撮影にも対応可。シビアなピント合わせだけでなく、ローアングル撮影にも威力を発揮する。 |
なぜこのような前玉を採用したかというと、ひとえに画質にこだわった結果だ。
このように半球状に突出した前玉にすることで、斜めから入射してくる光もレンズ面に対し垂直に近い角度で当たる。こうして前側に大きく突出した凹レンズで光線を緩やかに曲げていくことで、発生する収差量そのものが少なくなり、後ろの光学系で収差を高い次元で補正しやすくなるという。収差を徹底的に補正する以前に、あらかじめ発生する収差をできるだけ抑えよう、という選択で、このような前玉が突出した形状になっているらしい。
※このあたりの詳しい話は、インプレス刊「デジタルカメラマガジン」2011年5月号『伊達淳一の教えて!! その技術!』で取り上げているので、ぜひご参照あれ。
確かに、周辺光量低下も目立ちにくいし、倍率色収差も少なめで、その効果が感じられる。
歪曲収差はそれなりにあるが、一般的な超広角ズームよりも素直な歪みで、歪みもそれほど大きくない。この価格帯のズームとしては、周辺画質も安定している。ただ、その代償として、突出した前玉に光が当たりやすく、画面内に強い光源があるときはともかくとして、トップライトなど光源が画角外にあるときでも前玉に光が当たってしまい、逆光や半逆光でなくても、思わぬところにゴーストが発生してしまうことがある。太陽を完全に背にした撮影でもなければ気を抜けないレンズだ。
とはいえ、撮影者の工夫次第で、ゴーストを低減したり、抑えたりすることも可能だ。特に、画角外に光源がある場合は、手や遮光板で前玉に当たる光を遮る(これをハレ切りという)ことで、ゴーストの発生を防ぐことができる。ズームワイド端では、画面内にハレ切りする手や板が映り込んで回避不能な場合もあるが、ほんの少しだけテレ側にズームしてハレ切りするなど、状況に応じて柔軟に対処したい。また、ファインダー視野率が100%でないと、ファインダーで見えていなくても画面内にハレ切りしている手や板が映り込んでしまっている場合がある。万全を期したいなら、視野率100%のライブビュー撮影を活用するのがお薦めだ。
また、画面内に強い光源があることでゴーストが発生する場合は、強い光源が木の枝などでわずかに隠れるよう撮影位置を変えることで、光が弱まり、ゴーストが低減したり、収まったりする。光源を隠すことができない場合は、思い切って光源を画面のど真ん中に配置すれば、ゴーストが光源に重なって、光源の周りに虹色の環ができる。ゴーストそのものは目立たなくなるし、作画効果としてもおもしろい。
光源をなにかで隠すことも画面のど真ん中に配することもできない場合は、画角やフレーミングを変えながら、ゴーストの出方を注意深く観察、もっともゴーストが目立ちにくい画角や光源の位置を模索しよう。逆に、ゴーストをアクセントとして活かすくらいの気持ちでつきあうのが吉だ。
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太陽を直接画面内に入れて撮影すると、どうしてもゴーストは避けられない。しかし、撮影ポジションをわずかに移動して、太陽をちょっとだけ木の枝で隠して撮影すると、光が弱まってゴーストも解消する。 |
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画面内に光源が入っているときよりも、ほんの少しだけ画角外にあるときのほうがゴーストやフレアの影響が大きく出やすいが、レンズに当たる光をうまくカット(ハレ切り)することで、ゴーストやフレアを抑えることができる。 |
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一見、ゴーストなんか出ていないように見えるが、よく見るとギターのオブジェの左上に小さなゴーストが出現。シャッターを切るときにはまったく気づかなかったが、再生画像をチェックしているときに気づいて、慌ててフレーミングを微調整しつつ、ハレ切りもしながら撮り直した。 |
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画角外に光源があるときに起こりやすいのが、レンズの前玉をかするように当たった光が線のように伸びるゴースト。非常に不自然で目障りなゴーストだが、光源は画角外にあるので、うまくハレ切りしてやることで簡単に避けられる。 |
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※「拡大画像」ボタンをクリックすると大きいサイズの画像を表示します。「実寸画像」をクリックすると
撮影実画像を表示しますが10MBを超えるものもあります。(縦横向きも実際のものです)
なお、ダウンロードに長い時間がかかる場合があり、 回線の混雑時には正常に表示できない場合があります。
ブラウザの設定によっては自動で縮小されて表示されます。
以上、4回に渡って、トキナーAT-X 16-28mm F2.8 PRO FXのレビューをお届けしたが、あれこれ言葉で語るよりも、EOS5D MarkIIによる実写サンプルを見れば、その描写性能は一目瞭然のことだろう。確かに、ちょっと重くて大きいので、持ち出すにはそれなりに気合いも入るが、その苦労も大変さも仕上がりを見れば吹き飛んでしまう。がんばるだけの成果が得られるレンズだ。
でも、もっと小さく軽い超広角ズームが欲しい、PLフィルターが使いたい、という人向けには、2011年のCP+でトキナー展示ブースで参考出品されていた「17-35mm F4ズーム」が今夏に発売予定。ワイド端の画角を17mmに、開放F値をF4に抑えることで、AT-X 16-28mm F2.8 PRO FXよりも小型軽量化を果たしつつも、画質には徹底的にこだわったというから期待大。魅力的な実売価格にも期待したいところだ。
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