前回は三分割法といった「構図」のテクニックの話題でしたが、今回はテクニックというより「気配り」、構図は気配りという話です。
人は写真を撮るためにファインダーを見たとき、どうしても主題…すなわちファインダーの中の主役だけに意識が集中しがちです。ついつい主役に気を取られるあまり、周囲にあるものの配置や背景がおろそかになり、結果として良い構図の写真にならないケースが多いのです。スマートフォンでは特に記録写真的に気軽に撮ることが多いので、構図が決まっていない写真になりがちです。
そこで、すぐにシャッターを押すのではなく、被写体(主題)の周囲を一度見回して、背景にも気を配って、どう撮ったら解りやすいか、見やすいか、見栄えがいいか、を考えると写真が今までとは全く違うものになるかもしれません。
■ カメラの高さを変えて撮ってみる
そんなわけで、今回も構図がテーマなのでテクニックというより気配り、気づきについてのお話しです。なので、いくつかの課題の中からひとつでもふたつでも「なるほど」と思ってもらえる内容があれば幸いです。
さて、なんとなく被写体をフレームに収めてシャッターを押しただけの写真になってしまいがちのスマートフォンでの撮影ですが、同じ被写体でもスマートフォン(カメラ)を構える位置によって写真がこんなに違ってくる、ということをまずは紹介します。
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例題01 その1.
一面に咲いている花たちに感動してデジタルカメラやスマートフォンを取り出して目線の高さからそのままシャッターを切る。「花がきれいです!!」とコメントを添えたとしても写真から主張はあまり読み取れません。主題は花全体、写真一面に拡がっているので見る方も集中できないのです。 |
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例題01 その2.
カメラ(スマートフォン)を構える位置を少し下げて撮ってみる。ほんの少しアングルを低くしてみました。やや奥行き感が出て、手前の花たちが主題であることが明確になります。 |
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例題01 その3.
さらにカメラ(スマートフォン)を構える位置を少し下げて撮る。ピンク色の花や赤い花が綺麗に拡がっているという主題がハッキリしてきました。 |
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例題01 その4.
さらにさらにカメラ(スマートフォン)を構える位置を下げて撮ってみる。赤い花や花壇全体の様子は切り捨て、ピンク色の花に絞り込んだ写真です。緑色の背景が主役の色合い、ピンク色を引き立てていますね。 |
このように同じ場所、同じ被写体を撮ったとしても、カメラを構える位置を変えるだけで写真はまったく違ったものになります。この最初の例では主にカメラの「高さ」を変えて撮ってみました。同じ1枚の写真を撮るにしても工夫次第でいろいろな写真に変わりましたね。表現方法がいろいろあるからこそ写真の世界は面白いのでしょうね。
ちなみに実はこの花壇、全体をもっと俯瞰で見るとこんな感じだったのです。
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例題01 その5.
まだガーデニング途中のもので、パイロン(三角コーン)まで置いてあるため、全体を見ると幻滅してしまいます。 |
その4.までの例では、工事中の様子やパイロンが写らないように、構図を工夫していたのです。フレーム内から余分なものをはずすことで、きれいな花畑の写真に演出することができます。写真はフレームの中だけの世界…演出するのは撮影者自身、ちょっとした気配りで良い写真になっていきます。
このように目線で見たものを撮るだけでなく、被写体の周囲に気を配り、カメラの位置を変えて構図を考えることが大切です。
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例題02 その1.
子供達で賑わう遊び場、森の木展望台。なんとなく撮った一枚。 |
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例題02 その2.
思い切って地面スレスレの芝生アングルから撮った写真。スマートフォンならローアングルの写真も撮りやすい。子供が元気に走るところもフレームに入れてみた。 |
■ 中心線、対角線で考える
前回、構図の基本である日の丸構図と三分割構図の話をしました。
3分割グリッドを表示したら、グリッド上や1/3グリッド上の交点に主題を配置すると良い、という内容でしたね(三分割構図)。実は、フレームの中に主題と副題がある場合、それが同じ方に偏って配置されていると重く感じますので、主題と副題を別々のグリッド側に乗せることで、バランスも保っていたのです。
例えば、前回紹介した、女の子が南の島で撮った写真で言えば、主題の女の子は左のグリッドに配置したら、レジャーボートやホテルは右に配置する、といった具合に中心線や対角線を思い浮かべて、主題と副題を別々のグリッドに割り振るとすっきりします。
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例題03 その1.
中心線を思い浮かべて、主題と副題をそれぞれに配置する |
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例題03 その2.
対角線を思い浮かべて、主題と副題をそれぞれに配置する |
次はある公園の写真の例です。
まずはなんとなく撮った一枚です。シンボルタワーと個性的なデザインの建物(植物園)、庭園、そして手前の噴水と、すべてが中心に配置されています。
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例題04 その1.
あれも見せたい、これも見せたいと盛り込んだものの、すべてを中心近くに配置してしまった構図。見せたい、と思う以外のものがフレームの大半を占めています。 |
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例題04 その2.
シンボルタワーと噴水を左右、対角線を意識して配置し、植物園や庭園も大きく見えるようにフレーミングした例 (三分割グリッドも意識しています)。 |
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例題04 その3.
庭園をある程度あきらめ、噴水の迫力とシンボルタワーをメインに配置したフレーミング。快晴の青空であったなら、この構図はお勧め。 |
「例題04 その3.」は撮影当日、突然の曇り空になってしまいました。実は曇り空の日は空をフレームに入れない、という定石もあります。青空はとても気持ち良いものですが(その3.が、もしも白い雲が浮かぶ青空だったら、と想像してみてください)、一方で曇り空はやっぱり少しさえないため、フレームからバッサリ排除するという考え方です。そのため、快晴であれば「その3.」がお勧めですが、曇り空の時はその2.や空を入れない構図を考える方がよいでしょう。
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例題04 その4.
噴水と空をはずして、シンボルタワーと植物園、庭園をあえて中心線に配置した構図。奥行き感のある縦位置の写真であれば中心線とシンメトリーを意識したフレーミングも面白い。実はこのとき庭園が工事中。工事の様子をフレームから除外する工夫にもなっています。 |
対角線や中心線上に主題や副題を配置した例をもう少し紹介します。
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例題05.
対角線上に道を配置し、道の行く先に遊具を配することで、メッセージ性が加味される。 |
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例題06.
シンメトリーとは左右対称のこと。シンメトリーを意識した構図をとる場合は、被写体を中心線に思い切り乗せて、意識的に日の丸構図にするのも面白い。 |
■ 背景に気を配ろう
被写体だけにとらわれるのではなく、背景にも気配りすれば写真の見栄えがよくなります。スマートフォンで撮った写真をツイッターやブログに掲載する人はたくさんいますが、背景がごちゃごちゃしているとツイッターやブログでも被写体の良さや写真で言いたいこと、がうまく伝わりません。
例えば「こういう木の形が好き。この公園ではこの木の下が一番落ち着きます」と言っても下の写真ではどういう木の形か解りにくいですね。
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例題07. その1.
せっかくのお気に入りの木の写真。でもイマイチ存在自体がわかりにくい。
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理由は、主役の木が背景の木々に溶け込んでしまい、形状がよく解らないからですね。
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例題07. その2.
木をひと回りしたり、カメラの位置やアングルを変えてみると、背景がスッキリする方向があるかもしれません。
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例題08. その1.
きれいな花をパチリ。でも、残念ながら背景にトラックが入ってしまうと、ごちゃごちゃして雰囲気はやっぱり台無し。
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例題08. その2.
花畑をぐるりと見回してみる。やっぱりお花のバックは緑の背景がいい。
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例題08. その3.
もちろん背景に空を入れてもスッキリして気持ちいい。
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最後に紹介するのは、かわいいカタチのキンギョソウの写真。
金魚が泳いでいる姿、フワフワの尾ヒレようにも見えて、まるでたくさんの金魚が集まっているみたい。
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例題09. その1.
かわいい黄色い金魚草。しかし、背景や周囲の色合いが似ていて、金魚草のカタチが残念ながらわかりにくい。個々の花も小さい写真なので、見る側も花の一群で見てしまう。
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例題09. その2.
花に近寄って、暗い色の背景になる角度で撮った写真。金魚草のかわいいカタチが解りやすくなった。
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例題09. その3.
まるで金魚たちがお話ししながら水面に向かって泳いでいるよう・・な写真に。
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いかがでしたか?
構図は気配りから…。
今までよりちょっと周りを見回したり、角度やアングルを変えてみたりして、被写体や周囲、背景に気配りするだけで写真は違うものになります。スマートフォンの撮影には案外、この気配りがキーポイントかもしれませんね!!
では、次回もお楽しみに。
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