前回はiPhone 4Sを使ったカメラ機能を解説しましたが、今回からしばらくは撮影テクニックを中心に紹介して行きます。
まずは「構図」の話。
構図を勉強すると撮った写真のデキが確実に変わってきます。しかも、構図は撮影の基本なので、スマートフォンもコンパクトデジカメも一眼レフも同じ。これをマスターすれば、一眼レフでの撮影技術も確実に向上するというわけです。
■ 写真の「主題」ってなんなのよ
よく「写真には主題が重要」とかいう言葉をお説教のように聞きます。でも、日頃なんとなくレンズを向けた風景に主題はなんだ? とかいわれてもピンときませんね。ブログやツイッターに載せるために撮った料理の写真、主題も何もこんな料理だって解ればいい…そう感じる人も多いことでしょう。
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料理の全体を撮る |
主題というのは実はそんなに難しいことではないのです。なんとなくレンズを向けた風景にも一番見せたい何か、感じた何かがあるはずです。それは「山」かもしれませんし、「空」かもしれません。立ち並ぶ家や田んぼの風情かもしれません。
料理の写真も同じです。
メニュー用に撮った写真であれば、メインディッシュだけでなくお味噌汁や香物まですべてを正確に見せたいでしょうし、国産和牛のすき焼きを食べたことをブログで自慢したければ和牛肉を解りやすく撮る…そんなことが「主題」なのです。
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和牛肉を強調して撮る |
■ 日の丸構図と3分割法
さて、そこでいよいよ写真の「構図」です。
構図に正解なんて実はありません。要するに「写真の主題を表現するのに構図の基礎知識を活かすといいよ」ということなんです。
構図の基礎知識としてもっともよく語られているのが「日の丸構図」と「3分割法構図」です。
日の丸構図は、日の丸の旗のように、ド真ん中に被写体を置いて撮った構図のことです。それって基本じゃないの? って? そう基本です。日の丸構図は撮影の基本、決して背を向けることはことはできません。特にデジタルカメラではフレームの中心付近の被写体に対して優先的に自動でピントを合わせる機種が多いので、ピントを合わせるときは日の丸構図が基本です。
しかし、時代はスマートフォン普及期。スマートフォンの撮影ではピントを合わせたい位置を指でチョンとつつけば(タップすれば)そこにピントを合わせてくれます。日の丸構図は基本ではなくなりつつあって当然なのです。
さて、構図の話に戻すと、日の丸構図はなぜNGだと言われるのでしょうか。退屈な構図だから、という人もいます。なるほど。
日の丸構図は重要なものをとりにがさないように、最も重要な被写体を写真の中央に配置するという心意気としては大正解なのですが、それと同時に重要な情報も落としてしまっていることも多いのです。
例えば、下のビーチで撮った写真は、人物を真ん中に配置したよくあるスナップ写真です。日の丸構図ですね。顔を中心に置くことで上半分が大きくあいた構図です。旅行先で背景も取り入れたいということであればこれは正解です。主題はこの場所で楽しんでいる様子を写した記念写真だからです。青い海と青い空がきれいですね。
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青い空と海をバックに記念写真でハイチーズ (日の丸構図) |
しかし、写真はこれだけが「解」とは限りません。
例えば、この写真の構図を少し下にずらすと、ウェットスーツを着ていることが解ります。それによって、この写真は海水浴ではなく、シュノーケリングやダイビングを楽しんだ合間に撮った写真だということが解ります。
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このビーチでダイビングを楽しみました ハイチーズ |
つまり、主題がもし風景を一緒に入れるということより、アクティビティを楽しんでいる合間のスナップだったとしたら、重要な情報を落としてしまったことになります。日の丸構図は必ずしも間違ってはいませんが、重要な情報を落としがちな構図だというのはこういったことなのです。
もうひとつ違った例を紹介します。
例えば、彼女のポートレートとして撮った場合、日の丸構図はどうでしょうか。
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ポートレートを撮影1 (モデル:藍海夏) |
この場合、頭より上の背景は構図としては無駄な空間です。顔を上1/3のあたりに配置すると、モデルの服装やポーズなど全身の様子をより多く写すことができます。
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ポートレートを撮影2 (モデル:藍海夏) |
画面を縦横に3分割して、そこに被写体を配置する方法を3分割法と呼びます。前回、iPhoneのカメラ機能で3分割法の構図に便利なグリッド表示を紹介しましたが、このグリッドを活用して、3分割グリッドの線上や交点に被写体を配置することで、より良い構図が実現できるかもしれません。そのためにあるのです。
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彼女のポートレートを撮影2 (モデル:藍海夏) |
ちなみにビーチで撮った写真で、被写体を3分割法のグリッドに沿って配置した構図の例を紹介します。
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3分割グリッドを表示、上1/3に空、1/3グリッド上に海の境界線、真ん中に海を配置、左1/3に人物、右1/3にレジャーボードを配置した構図。 |
人物がずいぶんと端っこに写っているようにも見えますが、そうすることで、海と空だけでなく、南の島の雰囲気が漂うホテルやレジャーボートもフレームの3分割位置に入ったことで引き立ち、雰囲気が出ています。
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3分割法を利用した構図のスナップ写真。 |
全体的に南の島で楽しんだときの記念写真という主題には最もぴったりな構図になったと思います。
iPhoneやAndroidスマートフォンでも、次回撮影の時から、この3分割構図を意識して撮ってみてください。きっと写真が変わりますよ。
■ おまけ
私が執筆を担当している「デジタルカメラ レンズフィルター 初級講座」では「千鳥ヶ淵で満開の桜を撮る
」の回で、桜の撮影をしてきました。そのとき、一緒にiPhone 4Sでも撮ってみました。
そのときの写真がこれです。
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3分割法を利用した構図のスナップ写真。(クリックして拡大) |
どうですか、iPhone でも意外とキレイに撮れるでしょ?
実はちょっとした道具を使っています。「デジタルカメラ レンズフィルター 初級講座」をご愛読頂いている方にはお解りかと思いますが、一眼レフ用のレンズフィルター「PLフィルター」と「MC トワイライトブルー」をiPhoneに押しつけて撮りました。
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iPhone 4S にレンズフィルターを押しつけて撮影 |
ちょっとしたアイテムや工夫で、iPhone 4Sでも強い印象の写真を撮影できます。 |