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デジカメの「しくみ」
第20回 : 3Dデジタルカメラとそのしくみ
 
コンパクトデジカメに続き、一眼にも登場
3D関連製品やサービスが続々と登場
3Dを楽しむ環境の充実が普及のカギ

2010/11/10

スタジオグラフィックス公認 デジタルカメラの教科書
体系的に学ぶデジタルカメラのしくみ第2版 スタジオグラフィックス、デジカメのしくみ講座の著者、西井と神崎が執筆したデジカメの歴史、カタログの読み方、レンズや撮像素子のしくみなどをやさしく解説した書籍。待望の第二版
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3Dレンズを装着したマイクロ一眼と3Dプリントした写真

3Dレンズを装着したデジタル一眼カメラ。後ろはプリントした3D写真。今回は3Dの最新情報をお届けします。

 
■コンパクトデジカメに続き、一眼にも登場
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●3Dに注目が集まる
 
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【FinePix REAL 3D W3】
3D写真とフルHD動画に対応した富士フイルムの「FinePix REAL 3D W3」。有効画素数1000万画素の1/2.3型 CCDを2基、3.5型3DLCD液晶を搭載。
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LUMIX G (3Dレンズ)
【LUMIX G (3Dレンズ)】
パナソニックのマイクロフォーサーズ「GH2」に対応した交換レンズ「LUMIX G H-FT012」。
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 最近、映画やテレビ、デジタルカメラの業界では「3D」が注目されています。
ITエレクトロニクスの展示会「CEATEC JAPAN 2010」でも3D機能を大きくプッシュしているメーカーが目立っていましたし、3D関連の製品ブースやステージはどこも大賑わいでした。

3D対応コンパクトデジタルカメラでは富士フイルムが2世代めの『FinePix REAL 3D W3』を既に発売。更に2010年10月にマイクロフォーサーズ一眼のパナソニック『GH2』が発売され、それにオプションで対応した交換式3Dレンズ「LUMIX G」が発売されています。

つまり、デジタルカメラでも3D対応が注目されそうな気配なのです。

3Dテレビやデジタルカメラの実際の販売数はまだ、注目の度合い程は伸びていないようですが、次は3D対応機種を、と考えている読者も多いことでしょう。

しかし、いったいどういうしくみで3Dって実現できるんでしょうか。

不思議ですね。

そこで、今回はデジタルカメラの3Dのしくみについて簡単に解説したいと思います。

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●「両眼視差」で立体画像を実現
 
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【2つのレンズ】
FinePix REAL 3D W3は、2つのレンズとCCDで、右眼用と左眼用の写真を同時に撮影。
3D映像の原理(レンチキュラーシート方式)
【レンチキュラーシート方式】
本体の液晶はレンチキュラーシート構造で、両眼にそれぞれ別の画像が届きます。富士フイルムのホームページ提供。
レンチキュラー方式の液晶技術
【「焦点距離」が意味するところは?】
本体の3D液晶にはレンチキュラーシートによって2つの画像が重ねて表示されます。富士フイルムのホームページ提供。
 3Dのしくみは実はシンプルで左右の目で視る角度や距離の違いから生じる「両眼視差」(りょうがんしさ)を利用しています。

ヒトは目標物までの距離を右目と左目で見たときの距離のズレ(視差)から把握すると言われています。例えば、ボクサーが対戦相手のパンチでどちらかの目の上を腫らしてしまったとき、実況や解説者が「相手との距離がはかりづらいですね」とか言いますし、眼帯をした状態でモノを取るときに距離感に不便を感じたりする、のはこのためです。

すなわち、3Dテレビや3Dデジタルカメラは、両眼にそれぞれ別の画像を見せ、その視差によって視聴者やユーザは立体的に感じさせるのです。

では、どのように画像を撮って、どのように視せるのでしょうか。

富士フイルムの『FinePix REAL 3D W3』は、3Dを裸眼で立体視できる液晶を搭載したデジタルカメラとして知られています。実際、実機を手にとり、3Dで撮ってみて、3Dで再生すると画像はなるほど立体的に見えます。動画ももちろん立体的に飛び出して見えます。

FinePix REAL 3D W3の前面デザインを見ると一目瞭然なのですが、レンズが2つ付いていることに気がつきます。富士フイルムの関係者によれば、ヒトの両眼の位置を想定して離れた位置に2つのレンズを配置するのが、より効果的とのことです。

このカメラの場合は本体の両端に近い位置に2つのレンズを配置し、2つのCCDを用いて、右眼と左眼で視た角度と距離に相当する画像をそれぞれ同時に撮影しています。

そのため、3Dで撮っていても、普通の2D画像で見たければどちらか一方の画像だけ表示したり、プリントすれば良いのです。しくみ上は必ずしも撮影時に2Dか3Dかを排他的に選択する必要はありません。

両眼用にそれぞれ撮った画像を、ヒトの両眼にそれぞれ見せれば立体画像として感じます。FinePix REAL 3D W3の場合は、裸眼でも立体的に感じるように、ごくわずかに凹凸のあるレンズ状シートの液晶画面によって、右眼と左眼に別の画像を表示しています。実際にはこの「レンチキュラーシート」によって左右の眼にそれぞれ別の画像が届けられています。

両眼にそれぞれ届く画像の視差は通常はカメラが自動で視差を調整しますが、より見やすく自然な立体感を実現するために、この視差を手動で調整することで立体感を大きくしたり、違和感をなくしてさりげない立体に調整することもできます。

   
■3D関連製品やサービスが続々と登場
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3D写真の印刷とファイルフォーマット
 
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【GH2と3Dレンズ】
交換式3Dレンズをラインアップに加えたパナソニックのマイクロ一眼「GH2」。CEATEC JAPAN 2010会場でも注目の的。

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【FUJIFILM 3D プリント】
デジタル一眼「GH2」は通常の液晶画面なので、撮った3D写真は「FUJIFILM 3D プリント」で印刷するか、パナソニック製等の3Dテレビで3Dメガネを装着して鑑賞します。

 
  最近はあまり見なくなりましたが、子供向けのシール等で、見る角度によって絵柄が変わるものがあります。右から見ると飛行機なのに、左から見ると船の絵が見えるプラスチック風のシールです。著者が子供の頃はお菓子などのオマケによく付いていたのでワクワクしながら集めたものです。簡単に表現するとあの原理を応用して、3D画像は左右の目にそれぞれ別の画像が写ることで立体化しているです。

3D画像を立体的に印刷物で表現するにはあの立体シールのようなプリントのものになります。富士フイルムが店頭やインターネットで受け付けている「FUJIFILM 3D プリント」です。

プリント単価はKG(はがき)または2Lサイズで420円〜525円です。立体的に見せるためのプリントですから、もちろん角度を変えても飛行機と船に等、画像が全く変わったりはしません(笑)。

なお、この3D画像フォーマットは「MPO」(Multi-Picture Format)形式と呼ばれ、対応する加工ソフトウェアやビューアなどが増えてきています。3Dファイルのサンプルは「FinePix REAL 3D W3特設サイト」からダウンロードできます。
カメラ映像機器工業会では、複数の画像をひとつのファイルに保存する形式をマルチピクチャフォーマット(Multi-Picture Format)として規格化していて、ホワイトペーパーを発行しています。(興味があれば「MPOファイル」「MPフォーマット」等でネット検索してください)

規格に沿って作られるべきフォーマットですので、富士フイルムのカメラで撮ったMPOファイルをソニーの3D対応のフォトフレームで表示したり、その逆もできるはずです。互換性については、まだ各メーカーが自社のものしか保証したがらない段階ですが、今後、普及とともに互換性の環境も充実していくはずです。

   
●ひとつのレンズで3Dを実現する方法
 
Cybershot WX5の写真
【Cybershot WX5】
ソニーのサイバーショット「DSC-WX5」「DSC-TX9」はひとつのレンズながら、3Dスイングパノラマという方法で3D写真(MPO)を実現しています。
>> アマゾン価格「DSC-WX5」「DSC-TX9
 通常のデジタルカメラのように、ひとつのレンズで立体画像を作り出す方法もあります。それは自身が移動し、角度を変えて2回撮影し、それをひとつの画像に合わせることで立体感のある3D画像を作る方法です。FinePix REAL 3D W3にはその機能も搭載されています。また、2回撮りした画像を後でひとつの3D画像に合成する特別なソフトウェアを使って自作する方法もあります。

ソニーのサイバーショットの「3Dスイングパノラマ」は少し異なった方法で3D画像を実現しています。自身の立ち位置はそのままで、カメラを左右にスイングさせて撮ることにより、計算で左右の視差を割り出し、右眼用と左眼用の2枚の画像を自動生成するしくみです。話題のコンパクト一眼「NEX-3」や「NEX-5」でもこの機能が実現されます(ファームウェアのアップデートで対応)。

>> 3Dスイングパノラマのしくみ(ソニーの解説ホームページ)


●ビデオカムも3Dへ
 
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【3Dカメラのデモ(CEATEC JAPAN 2010)】
3Dテレビを裸眼で視ると何重にも見えますが、3Dメガネをかけると左右の目に別々の画像情報が超高速で切り替わり届くため、立体映像に見えます。

 CEATEC JAPAN 2010のパナソニック・ブースでは、3D動画撮影のデモが多数、行われていました。

それもそのはず、ハイビジョン対応ビデオカメラ「TM750」(パナソニック)に装着して3D動画が撮影できるコンバージョンレンズが登場したからです。

コンバージョンレンズの価格帯も3万円前後とそれほどコストをかけずに導入することができます。

3D撮影の際はズーム操作ができないのが少しもの足りませんが、撮った3D動画は3D対応テレビですぐ楽しむことができますので、3Dテレビのユーザなら手軽に3Dの家族撮り、友達撮りが実現できて、盛り上がりそうですね。

3Dテレビでは、専用の3Dメガネを装着して視聴します。主にフレームシーケンシャル方式が利用されていて、これは3Dメガネの左右の目に超高速なシャッター(1/120秒)が開閉することによって、左右の目に届く映像が切り替わり、視差を作って立体感を感じさせる方法です。
立体感を演出する効果は抜群ですが、3Dメガネを装着するのは煩わしいですし、3Dメガネの単価が高いので(約8千円〜1万5千円)、家族みんなで3D映画を視るにはコストパフォーマンスに課題があります。

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【業務用3Dビデオカメラ】
パナソニックブースでは様々な3D対応製品をステージで紹介。3D撮影のためには両眼用の2つのレンズを持つのがスタンダード。
 

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【ビデオカメラも3D対応】
HD対応ビデオカメラに「HDC-TM750」に3Dコンバージョンレンズ「VW-CLT1」を装着したところ。3Dビデオ撮影が流行するかな?
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■3Dを楽しむ環境の充実が普及のカギ
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●デジタルフォトフレーム&スマートフォン/ケータイも3D対応へ

 
FinePix REAL 3D V1の写真
【FinePix REAL 3D V1】
富士フイルムは3D映像に対応したデジタルフォトフレームを発売中。

>> アマゾン価格「FinePix REAL 3D V1

3Dカメラを実装したスマートフォン? シャープ
【3Dカメラを装備したスマートフォン(参考出品)】
CEATEC JAPAN 2010のシャープ・ブースでは、auのAndroidスマートフォン「IS03」のボディをベースに、2つのレンズを搭載した3D撮影対応機を参考展示 。スマートフォンやケータイも3Dへ。
 3Dデジタルカメラには魅力を感じますが、今ひとつ購買意欲に繋がらないという人が多い理由は、立体画像を活用する環境がまだ十分ではないと感じるからではないでしょうか。

FinePix REAL 3D W3では、撮影した3D写真や動画を本体の液晶画面で立体表示して楽しめますが、ほかの機種では撮影したカメラ本体の液晶でも立体に見えないものもあります。

撮影した3D画像を楽しむには、現時点では3D対応テレビで3Dメガネを装着して視聴するか、3D対応のフォトビューアで視るか、「FUJIFILM 3D プリント」でプリントするしか方法がありません。

敷居が高く感じますね。

3Dテレビが当たり前の世の中になったり、インターネットに投稿した3D画像をスマートフォンやケータイ、パソコンで立体的に見られるようになれば、普及が一気に加速すると思いますが、今はまだその気配はありません。

3Dは活用範囲を拡げることが今後の課題と言えるでしょう。

関連記事
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Text by 神崎洋治 (デジカメWEB)
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