2006/02/01
ここで重要なのは、主点というものは、物理的な中心ではなく光の屈折を基準にしていることです。虫眼鏡の場合は、凸レンズ1枚で構成されているため、レンズの断面の中心が主点となるわけですが、カメラレンズの主点は本来のレンズの中心とは異なった位置に主点があるのです。さらに、カメラレンズに対して前方から光を入射させたときと後方から光を入射させたときとで、主点の位置は異なってしまうのです。ちなみに、前方から入射させたときの主点を後側主点(第二主点)、後方から入射させたときの主点を前側主点(第一主点)といいます。カメラレンズの焦点距離とは、このうちの後側主点と焦点の距離を指しているのです。 レンズの構成によっては、主点がレンズとレンズの間ではなく、外側に考えられるようなものもあります。つまり、複数のレンズを組み合わせることによって収差を補正できるだけでなく、焦点距離も調整できるようになるというわけです。これを利用すれば、焦点距離が長いカメラレンズや焦点距離が極端に短いカメラレンズを自在に作ることができるわけです。
カメラレンズの焦点距離は、fという記号で表されます。焦点距離が50mmならf=50mm、300mmならf=300mm、といった具合です。F値と同じ「エフ」ですが、まったく違うものですから混在しないようにしましょう。特に絞りの値は、レンズなどによってはf2.8のように小文字で記載してあることもあるので注意しましょう。
ちなみに、この項の最初(右側)にカメラレンズに蛍光灯を写したときの写真がありましたが、カメラレンズのスペックとして記載されている焦点距離は、このように近距離から物体を写したときの数値ではなく、無限遠に被写体があると仮定し、そこから照射された光がレンズに入ったときの屈折を基準にして算出した数値が使用されます。
カメラレンズは、焦点距離の数値が大きくなるにしたがって遠くのものでも画面いっぱいに撮影できるようになりますが、一方で撮影できる範囲が小さくなってしまいます。これを、焦点距離によって撮影できる画角が決まってくるといいます。画角とは、鮮明な画像を写せる範囲を角度で表したものです。では、焦点距離と画角には、どのような関係があるのかを見てみましょう。
カメラレンズで撮影できる範囲はまるくなっています。フィルムやCCDなどの撮像素子が四角になっているので、写真画像が四角くなっているだけです。この画像が鮮明な、丸い範囲をイメージサークルといいます。イメージサークルの半径をyとし、焦点距離をfとすると、両者には、以下の関係が成り立ちます。
ここで、フィルム式カメラで一般に使われる35mmフィルムに画像を写すことを例にとって考えてみましょう。35mmフィルムに撮影できる範囲は24mm×36mmです。このとき、24×36mmの対角線である43.2mmがイメージサークルであれば、写したい画像が、鮮明に撮影できる画角に収まります。したがって、先ほどの式におけるyは、その半分の21.6mmになります。このときのθを計算していけば、焦点距離(f)と画角(2θ)が計算できるわけです。
しかし、撮影の対象をなるべく大きく撮影したい場合、フィルム式カメラもデジタルカメラも、対角線方向に目一杯大きく写すのではなく、縦方向か横方向に目一杯大きく写す方が自然です。そこで、カメラレンズを製造しているメーカーでは、対角線に対する画角のほかに、水平方向36mmと垂直方向24mmに対する画角も併記されている場合もあります。
カメラレンズの焦点距離を示すときには、多くの場合、この35mmフィルムに画像を写すときの焦点距離を用います。長い間、この数値をカメラの焦点距離として使用してきたために、デジタルカメラでは、実際の焦点距離の他に、この35mmフィルムに置き換えた焦点距離も併記することが一般的になっています。この35mmフィルムに置き換えた焦点距離を、35mmフィルム換算や銀塩換算と言います。
新聞でスポーツイベントの結果を知らせる写真を見ながら、これは焦点距離が何mmのカメラレンズで撮影しているのかなぁ、なんて推測してみるのもおもしろいかもしれませんね。