カメラレンズが明るいか暗いかというのを数値でわかるようにしたものがあります。これをF値(Fナンバー)といいます。
さて、F値の前に、レンズの明るさを左右する要素を整理しておく必要がありますので、確認しておきましょう。さきにレンズによる光の反射を左右するものの代表的なものに、レンズの素材やコーティング処理をあげましたが、実はカメラレンズでは「このほかの要素」が重要になってくるのです。なぜなら、まったく同じ素材とコーティング処理を使って、さらに同じ枚数や群を採用しているのにもかかわらず、明るさの異なるカメラレンズができあがってしまうことがあるからです。この要素は大きく2つあります。
1つは、レンズの直径(口径)です。レンズの直径が大きくなるということは、光が照射される面積が大きくなります。結果として、多くの光を集めることができますね。当然、得られる画像も明るくなるというわけです。レンズの明るさと直径は、面積を基準にして比較することができます。直径が2倍になれば面積は4倍に、直径が3倍になれば面積は9倍になりますから、レンズの直径の2乗に比例して、明るい画像が得られるようになる、と考えるわけです。
もう1つの要素は、焦点距離です。このとき、カメラレンズの焦点とは、鮮明に画像を得ることができる場所になります。この距離が近ければ大きな画像が、遠ければ小さい画像が得られるということになります。小さいほうが光の密度が高くなりますから、明るい画像になります。レンズの明るさと焦点距離は、焦点距離が2倍になれば倒立像の面積は4倍になり、明るさは4分の1になります。したがって明るさは、焦点距離の2乗に反比例していることが分かります。
この2つの要素を数式で表したものに口径比というものがあります。これは、レンズの直径を焦点距離で割った値です。この口径比の逆数をF値(Fナンバー)と呼び、レンズの明るさとして利用しています。F値が小さいレンズを明るいレンズ、F値が大きいレンズを暗いレンズ、と呼んでいるわけです。ちなみに、「小さい」ほうが「明るい」ので注意してくださいね。
なお、ここで指している「レンズの直径」の「レンズ」とは、カメラレンズのどれかを指しているのではなく、カメラレンズを1枚のレンズだとみなしたときの「レンズの直径」を指しています。複数のレンズを組み合わせたカメラレンズを、1枚のレンズだとみなす話は、次回の「第19回 :カメラレンズと焦点距離、画角」で解説しますので、そちらもご覧ください。
【レンズのまわりにF値を表示】
コンパクトサイズのデジタルカメラにも、通常はF値が記載されています。1:2.8と書かれていることから、この機種はF値が2.8であり、明るいレンズが採用されていることがわかります。 |
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F値は、カメラレンズの明るさを比べるとても重要な指針の一つです。交換式のカメラレンズだけでなく、コンパクトサイズのデジタルカメラにも、レンズの近くにF値が書き込まれています。表記は「F2.8」や「F=2.8」といったものの他に、1を基準にした表記の「1:2.8」の場合もあります。また、ズームレンズでは、広角側にしたときと望遠側にしたときでは焦点距離が変わってしまいますから、「F=3.5〜4.5」などといった表記になることもあります。
ちなみに、F=3以下は明るい、というような、F値による明るさの基準というのは明確には定められてはいません。一般的には、F=2.xや1.xのレンズが明るいレンズ、F=5.x以上のレンズが暗めのレンズといわれることが多いようです。F=2.0といったレンズは「とても明るくて高価なレンズ」として認識されています。
ちなみに、前述のとおり素材やコーティング処理でもカメラレンズの明るさは変わってしまいます。そのため、メーカによっては、先ほどの式を単純に算出した数値ではなく、実際の透過光量を基準として算出した値をF値として表記していることもあります。 |