まず、「明るいレンズ」とか「暗いレンズ」とかいいますが、これはなんでしょうか。
カメラレンズは、複数のレンズを使っているということは、これまでの連載で解説してきました。これによって、収差と呼ばれる湾曲や色ズレを解消できたのです。しかし、このように複数のレンズを使うことによるデメリットもあるのです。 レンズに光を照射したときには、その一部が必ず反射してしまいます。すべての光を透過するようなレンズはないのです。ということは、収差を少なくするために、レンズを多く使えば使うほど、焦点に集まる光が少なくなってしまいます。光の量が少なくなれば、作り出される映像は暗くなってしまいます。このとき、光の反射する割合は、レンズの素材やコーティング処理、そしてそのほかの要素によって変わってきます。つまり、一律ではないわけです。すると、これらの構成によって、光の反射ロスが大きいカメラレンズと小さいカメラレンズができあがります。このとき、ロスが小さく明るい映像が得られるカメラレンズを「明るいレンズ」、逆にロスが大きく映像が暗くなりがちなカメラレンズを「暗いレンズ」と呼んでいるのです。
カメラレンズが明るいか暗いかというのを数値でわかるようにしたものがあります。これをF値(Fナンバー)といいます。
さて、F値の前に、レンズの明るさを左右する要素を整理しておく必要がありますので、確認しておきましょう。さきにレンズによる光の反射を左右するものの代表的なものに、レンズの素材やコーティング処理をあげましたが、実はカメラレンズでは「このほかの要素」が重要になってくるのです。なぜなら、まったく同じ素材とコーティング処理を使って、さらに同じ枚数や群を採用しているのにもかかわらず、明るさの異なるカメラレンズができあがってしまうことがあるからです。この要素は大きく2つあります。
1つは、レンズの直径(口径)です。レンズの直径が大きくなるということは、光が照射される面積が大きくなります。結果として、多くの光を集めることができますね。当然、得られる画像も明るくなるというわけです。レンズの明るさと直径は、面積を基準にして比較することができます。直径が2倍になれば面積は4倍に、直径が3倍になれば面積は9倍になりますから、レンズの直径の2乗に比例して、明るい画像が得られるようになる、と考えるわけです。
もう1つの要素は、焦点距離です。このとき、カメラレンズの焦点とは、鮮明に画像を得ることができる場所になります。この距離が近ければ大きな画像が、遠ければ小さい画像が得られるということになります。小さいほうが光の密度が高くなりますから、明るい画像になります。レンズの明るさと焦点距離は、焦点距離が2倍になれば倒立像の面積は4倍になり、明るさは4分の1になります。したがって明るさは、焦点距離の2乗に反比例していることが分かります。
この2つの要素を数式で表したものに口径比というものがあります。これは、レンズの直径を焦点距離で割った値です。この口径比の逆数をF値(Fナンバー)と呼び、レンズの明るさとして利用しています。F値が小さいレンズを明るいレンズ、F値が大きいレンズを暗いレンズ、と呼んでいるわけです。ちなみに、「小さい」ほうが「明るい」ので注意してくださいね。
ちなみに、前述のとおり素材やコーティング処理でもカメラレンズの明るさは変わってしまいます。そのため、メーカによっては、先ほどの式を単純に算出した数値ではなく、実際の透過光量を基準として算出した値をF値として表記していることもあります。
ちなみに、実際にカメラで絞りを使うときには、絞り値というものを変更していきます。 絞り値は、1を基準として、1.0、1.4、2、2.8、4、5.6、8、11、16、22、32というような値が割り当てられています。数字の増え方が、なんだか法則がないように見えますが、これは目盛を1つズラしたときに、明るさが2倍になるように割り振られているため、このような並びになっているのです。このとき、明るさを2倍にすることを絞り値を1段ズラす(動かす)というような云い方をすることもあります。1.0から1.4へ変えるときも、4から5.6へ変えるときも、どちらも明るさが2倍になるので1段ズラすというわけです。
この絞り値は、カメラレンズに書き込まれた値の位置をズラして変更する方法の他に、カメラ本体に装備されたダイヤルを回して値を変更する方法もあります。デジタルカメラでは、後者の方法が一般的なようです。絞り値を大きくすることは良いことずくめに思えますが、実は1つ大きな問題を抱えています。それは、絞り値を大きくすると、光の量が少なくなってしまい、写真が暗くなることです。このようなときは、シャッターの速度を遅くしたり、露出を補正したりして適正な光の量で写すようにします。もちろん、明るいレンズを使えば、少々絞り値を大きくしてもこのような心配は少なくなります。ですから、やはり明るいレンズをほしがることが多いというわけです。
明るいレンズを購入して、来年の年始には暗いシチュエーションでもきれいな写真を撮りたいですねぇ。今から来年の話だと、さすがに鬼が大笑いしそうですが…。