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デジカメの「しくみ」
第18回 :「明るいレンズ」とF値
 
明るいレンズの見分け方は?
レンズとF値
絞りと焦点深度
撮影と絞り値

2006/01/11

スタジオグラフィックス公認 デジタルカメラの教科書
体系的に学ぶデジタルカメラのしくみ第2版 スタジオグラフィックス、デジカメのしくみ講座の著者、西井と神崎が執筆したデジカメの歴史、カタログの読み方、レンズや撮像素子のしくみなどをやさしく解説した書籍。待望の第二版
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オリンパスから販売されている交換式カメラレンズ「ZUIKO DIGITAL 14-45mm F3.5-5.6」(上)と「ZUIKO DIGITAL 14-54mm F2.8-3.5」(下)です。焦点距離がほとんど変わらないのにもかかわらず、前者のメーカ希望小売価格は31,000円、後者は75,000円と大きな開きがあります。これは、後者が「明るいレンズ」だからです。さて、どのようにして見分ければよいのでしょうか。
 
■明るいレンズの見分け方は?
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●年末年始は写真撮影に格好のチャンス
   あけましておめでとうございます。

年末年始は、被写体がわんさかあるので読者の皆さんも忙しい毎日だったのではないでしょうか。ほら、初日の出なんかありますし…。しかし、前後何日かとほとんど変わらないような景色なのですが、どうしてあんなに違って見えて、しかも写真にしたくなっちゃうんでしょうねぇ。不思議ですわ。あと、二年参りなんかも良い被写体ですよね。鐘撞きや甘酒のサービスなど、こちらは大晦日から元旦の夜にかけてのみのイベントなんかがありますから逃すわけにはいきません。で、写真を撮っている間にはぐれちゃったりして大ひんしゅくをかってしまうわけです。…って、そんなんはわたくしだけですか?(汗)。
   
●暗い場面では明るいレンズが最適だが…
 
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【暗いレンズは夜景が不得意】
甘酒をふるまってくれている様子をメモ代わりのコンパクトサイズのデジカメでパチリ。うーん、やはり暗めな写真になっちゃいましたね。明るいレンズのカメラなら良かったのに。
 
 しかし、こうしてみると年末年始は、暗いシチュエーションでの撮影が多いですねぇ。わたくしも二年参りに行ったのですが、ちょっとめんどくさかったので、ふだんメモ代わりに使っているコンパクトサイズのデジカメ「DSC-U50」だけもってお出かけ。案の定、薄くらーい写真になってしまいました。まぁ、もう30年以上も二年参りに行っている神社なので、メモのつもりだったので大きな問題ではないのですが、やはりもう少し明るいレンズのカメラだったらなぁ、なんてチョッピリ口惜しくなっていたりして。(汗)
 さて、この「明るいレンズ」って、どんな基準で決められるのでしょう。そして、カメラに卓越した方たちは、どのようにして明るいレンズを見分けているのでしょう。今回は、この明るいレンズの見分け方の基準値になるF値についてみていきましょう。
   
■レンズとF値
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●明るいレンズと暗いレンズ
 

 まず、「明るいレンズ」とか「暗いレンズ」とかいいますが、これはなんでしょうか。

 カメラレンズは、複数のレンズを使っているということは、これまでの連載で解説してきました。これによって、収差と呼ばれる湾曲や色ズレを解消できたのです。しかし、このように複数のレンズを使うことによるデメリットもあるのです。
 レンズに光を照射したときには、その一部が必ず反射してしまいます。すべての光を透過するようなレンズはないのです。ということは、収差を少なくするために、レンズを多く使えば使うほど、焦点に集まる光が少なくなってしまいます。光の量が少なくなれば、作り出される映像は暗くなってしまいます。このとき、光の反射する割合は、レンズの素材やコーティング処理、そしてそのほかの要素によって変わってきます。つまり、一律ではないわけです。すると、これらの構成によって、光の反射ロスが大きいカメラレンズと小さいカメラレンズができあがります。このとき、ロスが小さく明るい映像が得られるカメラレンズを「明るいレンズ」、逆にロスが大きく映像が暗くなりがちなカメラレンズを「暗いレンズ」と呼んでいるのです。

   
●F値(Fナンバー)
 

 カメラレンズが明るいか暗いかというのを数値でわかるようにしたものがあります。これをF値(Fナンバー)といいます。

 さて、F値の前に、レンズの明るさを左右する要素を整理しておく必要がありますので、確認しておきましょう。さきにレンズによる光の反射を左右するものの代表的なものに、レンズの素材やコーティング処理をあげましたが、実はカメラレンズでは「このほかの要素」が重要になってくるのです。なぜなら、まったく同じ素材とコーティング処理を使って、さらに同じ枚数や群を採用しているのにもかかわらず、明るさの異なるカメラレンズができあがってしまうことがあるからです。この要素は大きく2つあります。

 1つは、レンズの直径(口径)です。レンズの直径が大きくなるということは、光が照射される面積が大きくなります。結果として、多くの光を集めることができますね。当然、得られる画像も明るくなるというわけです。レンズの明るさと直径は、面積を基準にして比較することができます。直径が2倍になれば面積は4倍に、直径が3倍になれば面積は9倍になりますから、レンズの直径の2乗に比例して、明るい画像が得られるようになる、と考えるわけです。

 もう1つの要素は、焦点距離です。このとき、カメラレンズの焦点とは、鮮明に画像を得ることができる場所になります。この距離が近ければ大きな画像が、遠ければ小さい画像が得られるということになります。小さいほうが光の密度が高くなりますから、明るい画像になります。レンズの明るさと焦点距離は、焦点距離が2倍になれば倒立像の面積は4倍になり、明るさは4分の1になります。したがって明るさは、焦点距離の2乗に反比例していることが分かります。

 この2つの要素を数式で表したものに口径比というものがあります。これは、レンズの直径を焦点距離で割った値です。この口径比の逆数をF値(Fナンバー)と呼び、レンズの明るさとして利用しています。F値が小さいレンズを明るいレンズ、F値が大きいレンズを暗いレンズ、と呼んでいるわけです。ちなみに、「小さい」ほうが「明るい」ので注意してくださいね。

 なお、ここで指している「レンズの直径」の「レンズ」とは、カメラレンズのどれかを指しているのではなく、カメラレンズを1枚のレンズだとみなしたときの「レンズの直径」を指しています。複数のレンズを組み合わせたカメラレンズを、1枚のレンズだとみなす話は、次回の「第19回 :カメラレンズと焦点距離、画角」で解説しますので、そちらもご覧ください。


 
 
 
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【レンズのまわりにF値を表示】
コンパクトサイズのデジタルカメラにも、通常はF値が記載されています。1:2.8と書かれていることから、この機種はF値が2.8であり、明るいレンズが採用されていることがわかります。
 
  F値は、カメラレンズの明るさを比べるとても重要な指針の一つです。交換式のカメラレンズだけでなく、コンパクトサイズのデジタルカメラにも、レンズの近くにF値が書き込まれています。表記は「F2.8」や「F=2.8」といったものの他に、1を基準にした表記の「1:2.8」の場合もあります。また、ズームレンズでは、広角側にしたときと望遠側にしたときでは焦点距離が変わってしまいますから、「F=3.5〜4.5」などといった表記になることもあります。
 
  ちなみに、F=3以下は明るい、というような、F値による明るさの基準というのは明確には定められてはいません。一般的には、F=2.xや1.xのレンズが明るいレンズ、F=5.x以上のレンズが暗めのレンズといわれることが多いようです。F=2.0といったレンズは「とても明るくて高価なレンズ」として認識されています。

 ちなみに、前述のとおり素材やコーティング処理でもカメラレンズの明るさは変わってしまいます。そのため、メーカによっては、先ほどの式を単純に算出した数値ではなく、実際の透過光量を基準として算出した値をF値として表記していることもあります。

   
■絞りと焦点深度
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●明るいは暗いを兼ねる?
   F値が小さいほど、明るくて鮮明な写真が撮影できます。しかし、シチュエーションによっては明るすぎて真っ白な画像になってしまったり、収差が発生してしまいます。このようなときには、レンズに照射される光の量を少なくする必要がでてきます。このとき、光の量は「絞り」によって調整できるようになっているのです。絞りは、穴を小さくすることによって光の入射を少なくする方法です。


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【F値と絞りの穴の大きさ】
絞り値は何枚かの羽のようなもので穴の大きさを調整しています。図は解放値がF=2.8のカメラレンズの場合です。解放値がF=4のレンズでは、一番左の状態がF=4になります。ちなみに、絞り値を大きくしても、撮影する範囲が小さくなることはありませんので、ご安心のほど。 (『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』)
   
●絞りのメリット
   絞りをうまく使うことによって、明るさの調整や収差の補正を行うこと以外にもメリットが出てきます。それは、ピントがぼやけた写真を少なくすることができるという点です。これは、絞りを使うことによって、焦点深度を深く(大きく)することができるためです。カメラレンズの焦点距離は、物理的には極小のただ1点だけになります。しかし、人間の目はそれほど厳密ではないので、少しくらい前後のものもピントがぼやけたようには感じません。この違和感なく見える許容範囲が焦点深度なのです。そして、この焦点深度は鮮明に撮影できるカメラからの距離の範囲である被写界深度というものにも関係してきます。


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【焦点深度と被写界深度】
焦点深度が深くなると被写界深度も深くなります。 (『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』)
   
■撮影と絞り値
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●広い範囲にピントを合わせたい場合
   被写界深度をうまく使わないと、望みどおりの写真が撮影できないことがあります。例えば、団体写真を撮るときに何列かに並んで撮影したとしましょう。このとき、ピント、つまり焦点を先頭の列に合わせます。このとき、被写界深度が浅いと先頭の人達にしかピントが合わず、後の列の人達はボヤけたようにしか写りません。ここで、被写界深度を深くしてみましょう。被写界深度を深いということは、写真画像として鮮明に撮影できる距離の範囲が広がるということになります。つまり、前から後まですべての列に、きれいにピントが合っているように見える写真が撮影できるようになるというわけです。


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【絞りと焦点深度】
光の入射が少なくなくなると焦点深度が深くなります。図は解放値がF2.8の場合です。 (『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』)
 

 ちなみに、実際にカメラで絞りを使うときには、絞り値というものを変更していきます。
絞り値は、1を基準として、1.0、1.4、2、2.8、4、5.6、8、11、16、22、32というような値が割り当てられています。数字の増え方が、なんだか法則がないように見えますが、これは目盛を1つズラしたときに、明るさが2倍になるように割り振られているため、このような並びになっているのです。このとき、明るさを2倍にすることを絞り値を1段ズラす(動かす)というような云い方をすることもあります。1.0から1.4へ変えるときも、4から5.6へ変えるときも、どちらも明るさが2倍になるので1段ズラすというわけです。

 この絞り値は、カメラレンズに書き込まれた値の位置をズラして変更する方法の他に、カメラ本体に装備されたダイヤルを回して値を変更する方法もあります。デジタルカメラでは、後者の方法が一般的なようです。絞り値を大きくすることは良いことずくめに思えますが、実は1つ大きな問題を抱えています。それは、絞り値を大きくすると、光の量が少なくなってしまい、写真が暗くなることです。このようなときは、シャッターの速度を遅くしたり、露出を補正したりして適正な光の量で写すようにします。もちろん、明るいレンズを使えば、少々絞り値を大きくしてもこのような心配は少なくなります。ですから、やはり明るいレンズをほしがることが多いというわけです。

 明るいレンズを購入して、来年の年始には暗いシチュエーションでもきれいな写真を撮りたいですねぇ。今から来年の話だと、さすがに鬼が大笑いしそうですが…。


Text by 西井美鷹(デジカメWEB)
>> 関連記事
  レンズの最新技術については、スタジオグラフィックス特別企画
  「メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!」にも掲載中。
  ご覧ください。
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