ハウススタジオでは複数の光源を選択できるのが魅力。
ここでは、自然光と、比較的ユーザーが多いストロボ光とタングステン光について進めていきたい。
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Canon EOS-1Ds Mark3 + SIGMA50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.0 1/200秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
■自然光
ハウススタジオを選ぶ際に、私が重要視しているのが、自然光の入り方。
日中の陽射しの入り方はもちろん、スタジオ全体にどれだけ光がまわるかも気にしている。ハウススタジオを借りる際、ロケハンを必ずさせてくれる。これはプロでもアマチュアでも同様だ。現在はホームページを持っているスタジオがほとんどなので、連絡後、特に撮影してみたい箇所の陽の入り方や明るさを伺うようするといい。
私は、陽射し等の状態を伺った後、『○○時頃××になります』と聞いた時間にロケハンするようにしている。
もう一つ、天候の関係で陽射しがなくても明るいかどうかも確認している。
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逆光気味に背景は飛ばし、見つめる瞳に透明感を出す。
Canon EOS-1Ds Mark3 + SIGMA50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF2.5 1/40秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
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撮影風景 : モデルはあえて暗いところ、背景は屋外と明るさがあるところにと、輝度差をつけたところで撮影している。 |
自然光は明るくて、大きく光が回るのがいいところだ。
特に窓が大きく光を取り入れているハウススタジオは撮影しやすい。晴れた日ならシャッタースピードを比較的早く切れるし、ISO感度も低くできるので、ポートレートにはありがたい。
自然光はよく回るので、たとえばフラット光で撮影するかとか、窓際でサイド光にするかなど、光の方向を考えると様々なシーンに対応できる。一方で光がまわりすぎるとちょっと…というシーンもある。その際はカーテンやカポック(スタジオに備え付けてあることが多い、大きな白黒の板)で遮って対応するといいだろう。
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少しシャドーっぽいカットが欲しくて、構図向って右に、クロのカポックを置いて、光を遮った。撮影時の天候は曇、光がまわった状態だったが、画にメリハリがついた。
Canon EOS-1Ds Mark3 + SIGMA85mmF1.4 EX DG HSM
絞りF1.8 1/200秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
■タングステン光
写真撮影用のアイランプがあるが、私は専らモノブロックストロボのモデリングランプを使用している。
タングステン光は色温度が低いため、アンバーのあたたかい色合いが特長。(色温度は太陽の日中の光である約5000K〈ケルビン〉前後を中心に、それより高いとシアン系の、低いとアンバー系の色味になる。)
そのアンバーな光はムーディな雰囲気を出してくれるので、夜のイメージや艶を出したい時に使用することが多い。このとき、ホワイトバランスはオートにせず、太陽光かマニュアルで撮影すること。
また、光が柔らかいので、色温度を調整し肌色を自然にすることで、ホワッと淡い光質感のあるカットを狙うことが出来る。女性の暖かみの感じられる肌質を表現するにも適している。
■ストロボ光
ストロボは通称“小さな太陽”。
現在はカメラに直接装着するクリップオンストロボの大型化・高性能化が進み、カメラの性能の高さと相まって、非常に使いやすい。特にオートストロボはそう思うので、積極的に使ってみよう。
私がハウススタジオで多用するのはモノブロックストロボだ。小さく小回りも効き、持ち運びも便利。それでいて光量は必要十分なので、とても使いやすい。
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やや下方から、サイド〜半逆光気味になるようにストロボを設置。モノブロックストロボは細かな光量調節可能なので、意図する光の加減が出来る。
Canon EOS-1Ds Mark3 + SIGMA50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF3.5 1/60秒 ISO100 WB:マニュアル RAW
モノブロックストロボ使用 |
ストロボにはアンブレラやボックスを装着すると、光の方向を任意で決められるうえに、ストロボの硬い光をディフューズできるので、撮影時にはよく使う。人工光の良いところは、自由自在に光の方向や角度、光量を決められることだ。つまり、何も無い状態から、自分の描く光を加えていくことが出来る、ということ。
正面、サイド光、逆光、トップライト…何でも出来るうえに、何灯も同時にシンクロできる。故にやりすぎに注意したい。私の場合、ハウススタジオでは出来るだけシンプルライトを心掛けている。特に女性特有のラインを浮かび上がらせることを一番に使うことが多い。不慣れなうちは、サイドから少々フラットな位置で使うことをおススメする。
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モデルの身体のラインが綺麗に浮かび上がるように、サイドから当てている。
Canon EOS-1Ds Mark3 + SIGMA50mmF1.4 EX DG HSM
絞りF4.0 1/60秒 ISO100 WB:マニュアル RAW モノブロックストロボ使用 |
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撮影風景 : モデリングランプがついているので、光の方向やおおよその様子がわかる。それを確認しながらストロボの位置を決めるといい。モデルには先にポーズを付けておき、身体の位置は動かさないよう指示しておくと撮影しやすい。 |
■ミックス光
3つの異なる光源を紹介したが、せっかくのハウススタジオなので、併用してみてはどうか。
つまり“ミックス光”だ。
組み合わせとしては『自然光+ストロボ光』と『自然光+タングステン光』。
どちらも自然光+人工光だが、雰囲気は全く違ってくる。
このように、同じ状況で撮影したものでも、印象は全く異なる。それだけ、光源による印象は作品に大きく影響を与えるのだ。ただ単に光が欲しいから、暗いから補助に…ではなく、光質によって異なるこの印象を作品の意図に活かしたい。
自然光+ストロボ光
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メイン光は自然光で、髪を光らせる為のアクセントライトをストロボで入れている。このカットではストロボがサブライトだったが、逆にストロボがメイン光でもいい。モノブロックストロボは、メーカーが1/60秒以下での使用を推奨しているので、それに見合った自然光を見つけられるかが肝となる。
Canon EOS7D + Tokina AT-X 165 PRO DX 16〜50mmF2.8
絞りF3.5 1/30秒 ISO200 WB:マニュアル RAW ストロボ使用 |
自然光+タングステン光
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タングステン光がメイン光で、自然光がサブライトのカット。タングステン光のアンバーの柔らかな光質が上気したような雰囲気を出して艶っぽい。光質や色合いが違う自然光が、いっそうタングステン光の光質を引き立てている。
このタングステン光もモノブロックストロボのモデリングランプを使用。
Canon EOS7D + Tokina AT-X 165 PRO DX 16〜50mmF2.8
絞りF3.5 1/20秒 ISO200 WB:マニュアル RAW |
ハウススタジオでは、自然光の「光を拾う、見つける」作業だけでなく、人工光で「光を加える」作業も自由にできる空間だ。積極的にストロボやタングステンライトを使ってみよう。
人工光を使えば、天候にもあまり左右されずに撮影に挑めるようにもなる。しかし、光質によって雰囲気は全く異なるので、作画意図に見合った光を使うことが重要だ。
前回のレンズワークを含め、こう撮りたいという意図に対し、「○○mmで、こういう光で撮ればいい」との方向性が見えていれば、モデルを目の前にしても、あれこれ迷わないはずだ。でも、まずは、レンズも光も実際に手にして目で見て、実感して欲しい。さあ、チャレンジだ!
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