夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第59回 大阪・兵庫にも匹敵!製油所を有する和歌山工場夜景の撮り方入門
Photo : Takuya Iwasaki
TOPIX
今月の「 岩崎拓哉の夜景撮影講座 」も工場夜景のスポットを取り上げました。取り上げられる機会は少ないですが堺市&高石市や兵庫県の姫路市に匹敵するスケールの工場夜景が撮影できると氏は述べています。ちょっとマニアックな和歌山工場夜景の撮り方をご一読ください。 by 編集部 |
第56回から続けてきた工場夜景シリーズ。今回は知る人ぞ知るマニアックなエリアである和歌山県内の工場夜景スポットを解説。製油所や製鉄所を山間部から見渡せる穴場的なスポットもあり、気象条件なども整えば、大阪府の堺市&高石市や兵庫県の姫路市に匹敵するスケールの工場夜景が撮影できます。
写真1 和歌山石油精製のプラントを写す
■和歌山県の特徴
和歌山県は紀伊半島の西側に位置し、人口は約92万人。東京都世田谷区の人口が約90万人なので、人口が少ない地域に思えるが、夜景に関しては人口規模以上にスケールが大きく、関西では大阪府・兵庫県に次ぐ規模と言っても過言ではない。なぜなら、県内の人口の4割が和歌山市に集中しており、臨海部は工業が栄え、さらに山間部と市街地の距離が近いことから、迫力ある夜景が楽しめる要因が揃っている。工場夜景の被写体としては、有田市にある「JXTGエネルギー(和歌山製油所)」を筆頭に、「和歌山石油精製」「日本製鉄」などを有する。
写真2 和歌山県の地図
■和歌山県の夜景撮影のポイント
和歌山県内の工場夜景スポットは公共交通機関での訪問が難しいため、車での移動が基本。道が狭い場所や駐停車場所を探すのも苦労するため、できるだけ日中にロケハンを済ませたい。また、工場の間近で撮影出来るポイントが少ないため、基本的には望遠レンズの用意が欠かせない。
写真3 車で「JXTGエネルギー和歌山製油所」が見えるポイントに移動
(1)車での移動が基本
自家用車やレンタカーでの移動が基本。大阪や神戸のように夜景ツアーなどもほとんど開催されていないため、自力で撮影場所を調べてたどり着く必要がある。
(2)明るい時間帯にロケハンをする
特に山間部の夜景スポットほど日中に下見をしておきたい。山間部の道は狭い場所が多く、すれ違いも困難なので、昼間であっても速度を落として安全運転で。また、懐中電灯も忘れず持参しよう。
(3)撮影機材は望遠レンズを忘れずに
JXTGエネルギーや和歌山石油精製などの製油所は、離れた場所からの撮影となるため、望遠側が300mm前後のレンズを用意したい。
(4)冬の降雪時は注意
冬になると山間部の気温が特に低くなり、道路が凍結する可能性がある。スタッドレスタイヤやチェーンの準備をしたり、出掛ける前には天気をしっかり確認しよう。
■撮影スポット(1)御所の芝
県内の製油所や製鉄所を一望できる、県内最大級と言っても過言では無い絶景スポット。その眺望は「熊野古道随一の景勝地」とも称されている。海南市を中心とした街明かりや工場が見渡せ、視界の広さも奥行き感もあり、街の明かりだけを見ても十分に美しさを感じられる。車でのアクセスが基本となるが、道幅が狭いため、運転に慣れている人向けの撮影スポットと言える。工場メインに撮るなら望遠レンズだけでも良いが、眺望自体が素晴らしいので、広角レンズや標準レンズでの夜景撮影もおすすめ。(地図)
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: CANON EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:31mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: TAMRON SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD / 焦点距離:147mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
■撮影スポット(2)初島町里
恐らく和歌山県内では最も知られた工場夜景スポット。みかん畑に続く農道周辺から撮影をする人が多く、以前は柵の中に入って、電車の明かりと一緒に工場を撮る人がいたようだが、2016年の訪問時点においては、立入が制限されていた(現在も立入ができない状態だと思われる)。柵の手前からでもJXTGエネルギーを見渡せ、望遠レンズが必須となるが、タンクやプラントの一部を切り取ったり、構図の工夫も楽しめる。(地図)
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: TAMRON SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD / 焦点距離:104mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:2.5秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:640 / WB:白色蛍光灯 ]
みかん畑の手前にはフェンス(猪避けの柵)があり、関係者以外の立入が禁止されている(2016年時点)。インターネットの情報では柵の中に入れるような話もあるが、古い情報の可能性が高いため要注意。
■撮影スポット(3)藤白
運河の手前の道路が撮影ポイントで、正門から少し離れた位置から和歌山石油精製のプラントが見渡せる。プラントの明かりは控えめだが、運河の水位によっては、水面に反射した工場の明かりも写せるはずだ。撮影ポイント付近は車の往来もあるため、車両の通行を妨げないよう十分に注意したい。(地図)
写真8 正門から離れた場所からプラントを写す
■撮影スポット(4)冷水
関西電力海南発電所を正面に見渡せるポイント。付近に神社や岩場があり、昼間は近隣住民の姿を見かけるが、夜間はほとんど人がいなくなり、足場も不安定なので、岩場の手前からの観賞や撮影がベター。発電所の建物を横方向から眺められ、撮影は煙突がメインの被写体となる。長時間露光で水面に発電所の明かりを反射させるのも良いだろう。(地図)
写真9 長時間露光で発電所の煙突を写す
■撮影スポット(5)毛見
和歌山マリーナシティの付近にある遊歩道が撮影ポイント。正面には関西電力・海南発電所が見渡せ、標準~望遠レンズで発電所を写すのがおすすめ。構図など特段気をつけるポイントは無いが、2019年4月1日に海南発電所が廃止されており、消灯または建物が解体されている可能性もあるので要注意。(地図)
写真10 関西電力・海南発電所の全景を写す
■撮影スポット(6)ムーンブリッジ
和歌山マリーナシティに繋がる橋で、北側に歩道がある。歩道からは北方向にはマンション「パシフィックビスタ」の明かり、南方向は関西電力・海南発電所が見える。望遠レンズで発電所をアップで撮る構図がおすすめ。なお、2019年4月1日に海南発電所が廃止されており、照明が落ちたり、建物が解体されている可能性もあるので要注意。(地図)
写真11 関西電力・海南発電所をアップで写す
■撮影スポット(7)森林公園雨の森 展望台
和歌山県内では特に有名な夜景スポット。工場の明かりがメインではないが、街明かりと一緒に製鉄所や発電所、製油所を写せる。光量も多いため、標準レンズで全景を撮るのもおすすめだが、工場だけを撮るなら200~300mm前後の望遠レンズが必要。駐車場も整備されているため、真っ暗な階段を上るのに懐中電灯の用意があれば、初心者の訪問もさほど難しくないはずだ。(地図)
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: TAMRON SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD / 焦点距離:70mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:640 / WB:白色蛍光灯 ]
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ: TAMRON SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD / 焦点距離:168mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:6秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:640 / WB:白色蛍光灯 ]
■今月のお勧め夜景スポット「鷲ヶ峰コスモスパーク」
秋になるとコスモスが咲く、眺望に優れた公園。天気の良い日には淡路島・徳島県方面が見渡せるほど眺望が広がり、眼下には吉備町・湯浅町を中心とした夜景が楽しめる。光量は少ないので、撮影はなるべく日没後のトワイライトタイムを狙いたい。なお、駐車場・展望台までの道幅は狭いところがあるため、くれぐれも安全運転で。懐中電灯も必ず持参しよう。
写真14 トワイライトタイムに有田市を中心とした夜景を写す