夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第53回 北九州工場夜景の撮り方
Photo : Takuya Iwasaki
TOPIX
3回続きました「 日本三大夜景 」の一つ「 神戸夜景の撮り方 」はいかがでしたか?日本三大夜景で撮影スポットが満載でした。さて、今回は人気の工場夜景ですが、なかなかご紹介する機会の少ない北九州工場夜景の撮り方をご紹介いたします。それではお楽しみください。 by 編集部 |
今月は、「第39回 ライトアップや工場が美しい北九州夜景の撮り方」に続く北九州夜景の続編で、工場夜景に特化したテーマで北九州夜景の撮り方や魅力を解説したいと思います。北九州市の夜景は、2018年10月に「日本新三大夜景」に選定され、以前から皿倉山が「新日本三大夜景」として注目されており、北九州の夜景観光はますます盛り上がりを見せています。昨年、北九州の夜景には大きな変化があり、残念ながら北九州アイアンツリーのライトアップが終了した一方で、若戸大橋のライトアップが常時実施され、これから最も注目される夜景観光都市となりそうです。
写真1 2018年末にライトアップが終了した「北九州アイアンツリー」
写真2 2018年12月2日から始まった若戸大橋のライトアップ
■北九州市の特徴
第39回の記事でも北九州市の特徴はお伝えしていますが、北九州市内には工場に限らず夜景スポットが多数ありますが、工場夜景スポットは洞海湾の周囲を中心に若松区・戸畑区・八幡東区・八幡西区等に集中しています。
写真3 北九州市の地図
■北九州の工場夜景撮影のポイント
北九州を含め、九州地方は東京や大阪に比べて日没が遅く、特に6月は日没が19時30分を過ぎることもあり、真っ暗になるのが20時頃になる日もある。また、工場とは離れた場所からの撮影が多いので、できるだけ空気が澄んでいる秋~冬がベスト。
写真4 ひびきどんぐり公園の駐車場
(1)撮影時期はオールシーズンだが秋~冬がおすすめ
春頃は黄砂の影響を受けやすく、夏は日没が遅いため、撮影開始が19時30分~となってしまうため、日没が早くて空気の澄んでいる秋~冬を狙いたい。
(2)撮影機材は丈夫な三脚と望遠ズームレンズが欠かせない
工場を間近で撮影できる場所が少ないため、望遠レンズでの撮影がほとんど。望遠側が300~400mm前後あると幅広いシーンで撮影できる。
(3)移動手段は自家用車やレンタカーが基本
北九州市内は公共交通機関が充実しているものの、工業地帯の夜景を見るには車移動が欠かせない。なお、将来的に「メイト黒崎ビル」の屋上が夜景スポットして開放される可能性があり、黒崎駅から徒歩移動で工場夜景を楽しめる日も近そうだ(参考:西日本新聞)。
(4)立入禁止場所への誤侵入に注意
工業地帯は車両の進入が禁止されていたり、立入自体が完全に禁止されている場所もある。周囲が暗くて看板などが見えにくいので、訪問時は十分に注意したい。
■撮影スポット(1):黒崎城址(道伯山)
黒崎駅の近くにある小さな山で、高さはそれほど無いが、三菱ケミカル方面を中心に工場と街明かりのパノラマが広がる。北九州の工場夜景スポットは海や運河を挟んで水平に見える場所がほとんどであるが、黒崎城址は高台から工場を見下ろせる貴重なロケーション。作例のように望遠レンズで工場の一部を切り取るのもいいが、カバー画像のように標準レンズでやや広範囲に写すのもいいだろう。(地図)
写真5 三菱ケミカル方面の工場夜景を写す(西方向)
■撮影スポット(2):ひびきどんぐり公園
工業地帯の中にある雰囲気の良い自然豊かな公園で、南北に2ヶ所の展望台も整備されている。展望台からは距離があるが、ひびきLNGのタンクを見渡せる。南北で見え方も違うので、両方確認すると良い。撮影に必要なレンズは望遠レンズにほぼ限られ、プロパンガスのタンクを写す場合は300mmでも足りない可能性がある。風が強い日の撮影になる場合は、ISO感度は800前後まで上げて、ブレを防ぐことを優先した方が良いだろう。なお、公園には駐車場もトイレもあるので、車さえあれば初心者でもアクセスしやすいだろう。(地図)
写真6LNGのタンクを望遠レンズで写す
写真7 液化プロパンガスのタンクを望遠レンズで写す
■撮影スポット(3):西港町
北九州市内の工場夜景スポットで特に光量が多い工場が撮れる穴場スポット。市街地や他の工場夜景スポットから離れているが、車を停めて目の前に暖色系の明かりが広がる。ここでも望遠レンズでの撮影がメインになるが、切り取る位置によって作品のイメージが変化し、撮る人によって個性が表れそうだ。なお、隣の工場は私有地なので、絶対に立入りしないこと。(地図)
写真8 新日鉄住金化学の工場を写す
■撮影スポット(4):南二島4丁目
ドライブをしながら三菱ケミカルの工場夜景が楽しめるロケーション。撮影ポイントは車両の進入が規制された場所だが、対岸に洞海湾に反射した工場の明かりも見渡せる。標準レンズで撮影すると煙突含め工場全景を写せるが、望遠レンズで工場の一部を切り取る構図もおすすめ。(地図)
写真9 三菱ケミカルを標準レンズで写す
写真10 三菱ケミカルを望遠レンズで写す
■撮影スポット(5):南二島5丁目
対岸の金属加工工場を眺められる穴場スポットで、光量は控えめであるが、通行する車両も少ないので、じっくりと夜景撮影ができる。撮影にあたって特段難しい点はないが、工場の明暗差が激しいので、露出のバランスがやや難しい。(地図)
写真11 東海カーボン(株)九州若松工場を写す
■今月のお勧め夜景スポット「お汐井汲みの場(若戸大橋)」
ライトアップされた若戸大橋を撮影できるスポットは数多くありますが、角度や位置的に最も撮りやすい場所として戸畑渡船に隣接する「お汐井汲みの場」と呼ばれる海岸沿いの広場がおすすめ。対岸の若戸渡船付近からも若戸大橋は撮影できますが、橋との距離がかなり近いので、初めて来られる方は戸畑駅からも歩いて訪問しやすい戸畑渡船側がおすすめです(地図)。
戸畑渡船(若戸大橋)
点灯時間:22時頃まで
所在地:北九州市戸畑区川代2丁目2
アクセス:JR鹿児島本線「戸畑駅」徒歩約7分
料金:入場無料(渡船に乗るには乗船料が必要)
URL:戸畑渡船(若戸大橋)
写真12 ライトアップされた若戸大橋を撮影