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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第49回 工場夜景の聖地!川崎工場夜景の行き方&撮り方入門


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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

「 工場夜景 撮影 」の検索キーワードから非常に多くの方が本連載の 第6回 「 工場夜景の撮り方 」を閲覧いただいております。今回は工場夜景の中でも最も人気スポットと言っても過言ではない ” 川崎工場夜景 ” に特化して岩崎拓哉氏に執筆していただきました。夜景ファン必見の内容です! by 編集部

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12月に入り、1年もあっという間に終わろうとしています。街を歩くとイルミネーションが煌びやかに輝いていますが、今月はあえて、工場夜景編をお送りします。これまで、数多くの工場夜景関連の記事を執筆してきましたが、今回は川崎に特化した内容となります。川崎臨海部の工場夜景スポットの状況は日々変化があり、最新の現地の状況も触れながら、作例と共にご紹介したいと思います。

写真1 歩道から製油所を写す

水江町の工場夜景

川崎臨海部は何度も通い詰めているが、今でも偶然新しい撮影ポイントを見つけることも。作例は水江町の歩道で、一瞬だけ視界が広がる場所から製油所を撮影(地図)。

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■川崎臨海部の特徴

川崎市は麻生区~川崎区まで南北に7つの区で構成されているが、工場夜景スポットがある川崎区は浮島町、千鳥町、東扇島など埋め立て地ごとに、エリアが分かれている。メインとなるエリアが千鳥町で、線路と化学工場が写った写真(カバー写真参照)をよく見かけると思うが、ここの撮影スポットは休日にもなると、多くの写真愛好家で賑わっている。次いで、水江町や浮島町も人気があるが、特に水江町は以前に比べて視界が狭くなってきており、初心者は千鳥町や東扇島での撮影が無難。

写真2 川崎区の地図

川崎臨海部の地図

川崎市の中で川崎区は最も面積が広く、大半が埋め立て地となっている。各埋め立て地ごとに工場夜景スポットがあり、ゆっくりと観賞や撮影を楽しんでいたら、1日では周り切れないほど。

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■川崎工場の夜景撮影のポイント

川崎に限って特別な撮影条件があるわけではないが、予めアクセス方法や必要な機材をしっかり確認しておこう。また、基本的な部分は過去の記事「第6回:工場夜景の撮り方」「第27回 工場夜景の撮り方( 応用編 )」も参考にして欲しい。

写真3 路線バスと千鳥町の工場夜景

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全国にある工場夜景都市の中でも、公共交通機関でのアクセスの良さは恐らく全国一。川崎臨海部は路線バスが張り巡らされていて、ほとんどの撮影スポットがバスで訪問できる。「1日乗車券」を使って、細かく移動するのも良いだろう。

(1)移動手段は自家用車または路線バスがおすすめ

各エリアを効率良く巡るなら自家用車がベストだが、都心では車を持たない世帯も多い。川崎臨海部は路線バスが充実しているので、時刻表をしっかり確認した上で、夜間の訪問も難しくない。千鳥町や水江町方面は「川崎市バス」、浮島町方面は「臨港バス」が運行しており、路線図も確認の上で訪問したい。

(2)秋~冬が撮影に適しているが年間を通じて撮影可能

工場夜景は、一般的な夜景に比べて気象条件をさほど気にする必要は無いが、日没が早い秋~冬が工場夜景撮影に優れている点は同様。トワイライトタイムは東扇島東公園などで撮影して、千鳥町方面に向かうのが定番ルート。

(3)標準レンズ&望遠レンズを使った撮影がメイン

工場夜景撮影全般的に言えることだが、広角レンズの使用頻度はさほど高くなく、望遠レンズでの撮影が半数以上となる。千鳥町など工場と距離が近い場所は標準ズームレンズを使うことが多く、東扇島など工場が離れたエリアでは望遠ズームレンズを使うことが多い。あとは、風が強い場所も多いので、安定した三脚があると安心。なお、マリエン展望室から夜景を撮る時は暗幕類を忘れず。

(4)立入禁止場所への誤侵入に注意

写真4 立入禁止の看板

立入禁止区域

写真の場所(浮島町)は看板から先は私道になるため、立入が規制されている。工場夜景スポットを訪問する際は、常に周囲の看板に気を配ることが重要。

一般的な夜景スポット以上に、工場夜景スポットは私道と公道の区別が付きにくく、立入禁止場所が多い。浮島町エリアは私道が多く、千鳥町は特に線路への不法侵入に気をつける必要がある。訪問が心配な方は、工場夜景バスツアーなどに参加するのも良いだろう。
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■撮影スポット(1)千鳥町 貨物ヤード前

川崎どころか恐らく全国で最も工場夜景ファンが集う聖地。線路の手前から、日本触媒のプラントと線路を写すのが定番の構図。一見、誰が撮っても同じ写真に見えるが、線路の入れ方においても、ローアングルで撮ったり、絞りをコントロールするなど工夫が楽しめる。(地図

写真5 ローアングルで線路を主役に写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:TAMRON SP 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD / 焦点距離:161mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:25秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]
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■撮影スポット(2)千鳥町8番地

貨物ヤード前から5-6分は歩く場所にあるが、化学プラント全体が歩道から見渡せる。プラントの前の土地は工事が始まるようで、将来的にプラントが隠れてしまう可能性もある。プラント全体を横位置で写すと、空の隙間が目立つため、縦位置で写した方が無難だろう。(地図

写真6 日本合成樹脂のプラントを写す

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[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF24-105mm F3.5-5.6 IS USM / 焦点距離:39mm / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:6秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
写真7 倉庫の隙間から写す

倉庫解体前の工場夜景

以前は工場の前に倉庫があり、倉庫の隙間から撮影する人が多かった。

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■撮影スポット(3)東扇島東公園

川崎臨海部の工場夜景スポットの中では最も雰囲気に優れている。工場は浮島町の製油所がメインとなり、工場とも距離があるため、トワイライトタイムを狙うか、望遠レンズで工場の一部を切り取る構図がおすすめ。後ろに下がって、デッキの雰囲気を写し込む構図も試してみて欲しい。(地図

写真8  JXTGエネルギーのオイルタンク群とタンカーを写す

JXTGエネルギーを写す

[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:TAMRON SP 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD / 焦点距離:100mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:2.5秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
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■撮影スポット(4)浮島町 貨物ヤード前

千鳥町と並んで、迫力ある工場を間近で見渡せる人気スポット。製油所のプラントが間近に見えて圧倒されるが、手前にパイプラインが通っているため、視界はさほど広くない。広角レンズが無いとプラント全体を写すのが困難。大型車両の通行もあるので、通行する車両の迷惑にならないよう気をつけたい。(地図

写真9  JXTGエネルギーのプラントを写す

浮島町

[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:16mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]
写真10 同じ場所で2012年9月撮影

浮島町

以前は周囲が暗かったため、パイプラインと道路がほど良い暗さで写っている。現在は企業の看板の照明で全体が明るくなっているように思われる(写真4参照)。

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■撮影スポット(5)水江運河前

運河手前の歩道から製油所が見渡せることから、千鳥町や浮島町に並んで人気がある。工場とは距離があるため、100mm以上の標準レンズや望遠レンズでの撮影が適している。歩道からの撮影はフェンスが写り込みやすいので、高さのある三脚を使うなど工夫が必要になりそうだ。(地図

写真11 東亜石油のプラントを写す

水江運河前から東亜石油を写す

[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF24-105mm F3.5-5.6 IS USM / 焦点距離:95mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
写真12 線路が撤去されてフェンスができた後の現地

水江運河前

歩道からはフェンスが映り込んでしまうため、やや撮影しづらい。車が止まっている位置からはフェンスが写り込まないが、フェンスの先には絶対に入らないこと。

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■撮影スポット(6)扇橋

扇町の手前にある橋の歩道が撮影スポット。正面に昭和電工の特徴的な形をしたプラントが写せる。ただし、手前に線路があることから、電線が写り込んでしまうのが惜しいところ。時間帯や曜日によって、プラントの中心部が消えていることが多く、平日の遅くない時間帯の方が点灯している可能性が高そうだ。(地図

写真13 昭和電工を2018年10月撮影

昭和電工

[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF24-105mm F3.5-5.6 IS USM / 焦点距離:78mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:6秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
写真14 同じ場所で2015年10月撮影

昭和電工

以前は長期連休日に照明が落ちていて、平日はプラント全体が明るく輝いていた。

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■今月のお勧め夜景スポット「生田配水池」

川崎市内の工場を除く郊外にある夜景スポット。川崎郊外では最も夜景が美しい場所として知られている。遠くは狛江・世田谷方面の街明かりが広がり、天気が良ければ東京タワーや東京スカイツリーも見渡せる。どちらかと言えば、観賞向けの夜景スポットだが、夜景撮影も十分楽しめるだろう。アクセスは難しくないが、急な階段を上るより、南側のスロープを経由しての訪問がおすすめ。

生田配水池
営業時間:終日開放
所在地:川崎市多摩区生田5-30-1
アクセス:小田急「生田駅」から徒歩約15分
(入口から徒歩5分圏にコインパーキングあり)
料金:無料
URL:https://www.nightview.info/yakei/detail/ikuta_haisuichi/

写真15 東京スカイツリーと東京タワーのコラボ夜景

生田配水池の夜景

作例は望遠レンズで撮影(焦点距離:141mm)。左手に東京スカイツリー、右手に東京タワーが見渡せる。広角レンズから望遠レンズまで様々なレンズワークが楽しめるだろう。

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。