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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第6回 鉄道風景写真の構図と撮影設定

Posted On 22 5月 2019
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railway06

Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の6回目は、構図とカメラの設定について解説しております。構図の解説は鉄道写真以外にも応用可能な考え方ですので、ぜひご覧ください。今回の鉄道写真は 富士急行線・只見線・夕張支線 を掲載しております。 by 編集部

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みなさまこんにちは。鉄道写真家の遠藤真人です。前回は鉄道風景写真の基礎知識についてお話ししましたが、今回は鉄道写真を撮る際の構図の作り方や撮影設定についてお話ししてゆきます。被写体の特徴を踏まえて撮影設定を理解しましょう。

1.鉄道風景写真の構図

鉄道風景写真の中で最も人気が高いのは、自然の風景の中を走るローカル線です。山や海、季節の花と絡めた写真は誰もが撮影したくなる対象です。そしていざ撮影地に行くと、列車と共に山を入れるのか、花を入れるのか・・・と目移りしてしまうことも、よくあります。そこで、こちらでは構図を組み立てる上でのヒントを書いてゆきたいと思います。

写真1 富士急行線
焦点距離:150mm / シャッター速度:1/1600秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:320 大雪が降った翌日の珍しい風景。関東の雪景色は時間との勝負、午後にはほぼ溶けてしまう。着雪した木々にも注目。

焦点距離:150mm / シャッター速度:1/1600秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:320 大雪が降った翌日の珍しい風景。関東の雪景色は時間との勝負、午後にはほぼ溶けてしまう。着雪した木々にも注目。

こちらは関東一帯で雪が降った翌日に山梨県で撮影した写真です。この撮影で鍵を握るポイントは「 列車 」と「 富士山 」とのコラボレーションです。両者の配置場所やレンズの焦点距離を考えて、このような写真となりました。こちらの写真で構図の組み立て方を順序だてて解説します。

  1. 「 主役 」と「 脇役 」を決める
  2.  両者のバランスを考える
  3.  Z と逆N の法則

1-1 「 主役 」と「 脇役 」を決める

鉄道風景写真では、ファインダーを覗く前に決めておきたいことがあります。それは写真の中で「主役」と「脇役」を決めることです。つまり「車両」と「風景」のどちらを強調したいか考えます。鉄道風景写真では雄大な風景にとらわれて、主役がうやむやになり、構図が散漫になる写真も多く見受けられます。
それを未然に防ぎ、写真の軸が伝わるよう「主役」「脇役」を最初に決めることが重要です。今回は線路が手前、富士山が奥にある位置関係から、主役に列車を脇役に富士山と決めました。これが組み立て方の一歩目となります。富士山を脇役とは、贅沢なことですが、写真は潔さが大切です。

1-2 両者のバランスを考える

次に両者のバランスを考えましょう。主役を邪魔しない程度に、脇役の大きさはどの程度にするかを考えます。撮影した列車は2 両編成と短いため、姿がはっきり写るよう前もって横がちに構えました。サイド気味に光線が当たったことで、車両のカラーもはっきりと写っています。主役にふさわしい存在感となりました。

脇役である富士山はズームレンズを使い、画面内で大きさをコントロールしました。望遠側にするほど、圧縮効果が生まれ存在感が際立ちます。また構図の中に余計な構造物や標識が入らないよう、こちらもズームを使って調整しています。

1-3 Z と逆 N の法則

最後に画面を大きく使いましょう。鉄道風景写真では雄大さを表現したスケール感が重要となります。ただし、画面を大きく使う = 広角レンズで写す、とは限りません。主役と脇役のバランスを保った状態で、画面の中を大きく表現することが重要なのです。
ここで構図を考える際にヒントとなる、法則があります。それは「 Z・逆 N の法則 」です。こちらは視線誘導を用いたデザインの基礎手法です。特に構図の組み立てかたに迷った時などに有効的に使えます。鉄道に限らず、他のジャンルでも使える考えかたです。

図1
6-2_R
6-3_R

人間の視線の流れ方に一定の規則性があります。そして、この手法はとてもシンプルで容易に理解できます。実は書籍や新聞紙なども、この法則で画面構成されており、我々の日常生活にも馴染んでいる視線誘導法です。構図をバランス良く組み立てるには、それらを活用して始点もしくは終点の位置に「主役」「脇役」を配置します。すると画面全体を使って、風景を雄大に表現できるのです。この法則は● が始点、◼︎ が終点となり、視線が流れてゆく法則です。

写真2 写真1の画面構成

6-4_R

写真1も Z の法則に当てはめると、このような画面構成になります。実は安定した構図には Z が隠れていたのです。この Z をイメージしながら構図を考えるときには、画面の中心に大きく Z を意識するとバランスの良い写真となります。
そして、逆 N の法則とは縦の構図に使えるテクニックです。 N の形状に、右上から左下へ、書き順の逆方向へ視線が流れてゆく法則です。こちらも始点か終点にポイントとなるものを置くように、構図を決めてゆきます。

写真3 只見線

6-5_R

写真4 写真3の画面構成

6-6_R

こちらは「 第5回 鉄道風景写真の撮り方 」でご紹介した只見線の第二橋梁の写真です。こちらは縦の構図なので、N の文字が隠れています。構図を作る一つの方法として、このように視線誘導「Z・逆N の法則」を意識して画面を構成してみましょう。鉄道風景写真の完成度はより高くなります。

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2.鉄道風景写真の撮影設定と機材

撮影のテクニックで忘れてはならないのが、撮影機材の選び方です。現行販売されているミラーレスや一眼レフの多くのカメラは、昔に比べて圧倒的に高性能、安価ものが多く、まさに天国のような状態です。センサーサイズも 1 インチ程度のものから、中判サイズまで匹敵するものまで幅広く販売されています。それでは鉄道風景写真を撮影したい時には、どのような機材が必要なのでしょうか。

鉄道風景写真でも、やはり風景写真と同じように大きなセンサーサイズのカメラを使い、レンズを絞り込みます。被写界深度( =ピントが合っているように見える範囲 )を深くすることでより多くのメリットが生まれます。良い画質を生み出す組み合わせが最適解です。レンズは広角から超望遠まで…さまざまです。

カメラ本体は編成写真では APS サイズのセンサーカメラを多く使いますが、鉄道風景写真では 35 ミリ判フルサイズカメラの使用頻度が高くなります。なぜならば、センサーサイズが大きいカメラほど高画素化が進んでいると言う事実も関係しています。鉄道風景写真は写真を大きく引伸ばす機会も多いため、データの情報量が多い機材=画素数の多いカメラほど有利となります。大判や中判サイズのカメラもおすすめの機材です。高画素のカメラを使うことで、被写体を小さく扱っても、しっかり解像しているという安心感もあります。そうなれば、大胆な構図や創作的な写真にもチャレンジができるのです。

もちろん35 ミリ判以上の大きなカメラならば、さらに高画質かつ高精細です。大きなカメラシステムも鉄道風景写真にはオススメの分野です。

写真5 只見線
焦点距離:48mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:250 こちらは絶景の只見線、第一橋梁の撮影ポイントだ。昔は森林だったこの場所が、今では環境整備され有名な撮影ポイントとなった。地元から愛されるローカル線に、これからもエールを送りたい。

焦点距離:48mm / シャッター速度:1/400秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:250 こちらは絶景の只見線、第一橋梁の撮影ポイントだ。昔は森林だったこの場所が、今では環境整備され有名な撮影ポイントとなった。地元から愛されるローカル線に、これからもエールを送りたい。

実際の撮影では、シャッタースピードは 1/320 秒から 1/1000 秒の範囲で選択することが多いです。絞りの値は 35 ミリ判フルサイズのカメラを使用するときには F 値が F7.1 から F11.0、 APS サイズであれば F5.6 から F8.0 の範囲で設定することをお勧めします。これは F 値の絞りすぎが原因で描写力が低下する、回折現象( 小絞りボケ )を避けることが最大の目的です。感度は ISO100 から ISO500 程度の範囲であれば、日中は問題なく使用できます。

写真6 夕張支線
焦点距離:28mm / シャッター速度:1/180秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:1000 日の入り直後の暗い時間には三脚は必須アイテムだ。最終期間は三両編成の長い編成で、夕張支線のお別れに華を添えた。

焦点距離:28mm / シャッター速度:1/180秒 / 絞り数値:F5.0 / ISO感度:1000 日の入り直後の暗い時間には三脚は必須アイテムだ。最終期間は三両編成の長い編成で、夕張支線のお別れに華を添えた。

また、鉄道風景写真では三脚を使用する機会も多いです。その最大の理由は前項にもあるように、組み立てた構図を固定するためです。編成写真では俊敏さが求められますが、鉄道風景写真はじっくりと準備に時間を費やし、撮影する機会が多いことも挙げられます。

また線路から遠い撮影場所ほど、列車の動体ブレのリスクが軽減されます。高速のシャッタースピードは不要となり、結果として三脚を使う機会が増えます。鉄道写真は昔から、重たい大型三脚が人気でしたが、最近は三脚の選びかたも変わってきました。今の人気は軽くて高性能なカーボン三脚です。

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カメラの小型軽量化に合わせて、三脚も小型軽量ながら高精度化しています。撮影地までの移動を考えると、可能な限り機材を軽くしたいのは自然なことです。海外への撮影も同じ発想で、カバンの中に入る程度の大きさのトラベル三脚が人気です。荷物の隅に忍ばせてゆく機会もよくあります。またミラーレス機は、ミラーショックがないためプロの間では、大型三脚が敬遠されることも多いようです。

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3.次回予告

いかがでしたでしょうか。
今回は鉄道風景写真の撮影テクニックをお送りいたしました。 Z ・逆 N の法則は役に立つので、ぜひマスターしたいところです。次回は鉄道イメージ写真の基礎知識をお送ります。

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遠藤真人
著者について
鉄道写真家 1989年生まれ 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会 会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了され、カメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップ企画を行う。また、イベント・メディア出演・写真教室講師を務めるなど活動は多岐にわたる。
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