鉄道写真家・煙道伸麻呂の鉄道写真撮影講座 第39回 おすすめ鉄道写真旅行06 ~ 都電荒川線
Photo : Masato Endoh
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鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 39 回目はおすすめ鉄道写真旅行の6回目として、都電荒川線をご案内いたします。東京都では2月2週目に入り、オミクロン株の感染者もピークアウトの様相を見せ始めてきました。このまま収束することを願います。収束した場合は春先に東京で都電荒川線の撮影はいかがでしょうか? by 編集部
<本記事は 2022 年 2 月現在の情報です。現地の状況はご覧いただく時期により記事内容と異なる場合がございます。>
みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。今回は路線紹介の前にお知らせがあります。わたくし遠藤は 2022 年2月6日より新しい名前になりました。
新名は「 煙道伸麻呂 」( えんどうのべまろ )です。「煙道」は蒸機をモチーフとしたライフワークの題名から、「伸」は 縁起の良い “ 延伸 ” に因んでいます。鉄道写真家 10 年の節目を迎え、心を新たに、これまで以上に写真活動へと励んで参ります。今度とも宜しくお願いいたします。
それでは本編へ戻りまして、東京さくらトラムこと都電荒川線の撮影スポットを紹介してゆきます。この路線は昭和時代に都心を縦横無尽に走っていた東京市電の生き残りです。他の鉄道とは違った雰囲気を感じられると思います。電停の間隔が短く、お散歩がわりの撮影にもおすすめの路線です。それではさっそくスタートです。
Index
1.東京さくらトラムこと都電荒川線
都電荒川線は東京を走る路面電車です。早稲田停留所から三ノ輪停留所を結ぶ、全長 12.2 キロの路線です。明治 44 年に王子電気軌道として開業した路線です。そののち東京市電を経て、昭和 18 年に都電となりました。ピーク時には 40 路線もあった都電ですが、現在は都電荒川線のみが現存しています。平成 29 年には都電荒川線の名称が「東京さくらトラム」へと変更されました。線路の幅は 1372 mmと馬車鉄道時代から続く、軌間を保っています。在来線の軌間は 1067 mmなので大幅に広いことがわかります。
2.都電荒川線の見どころ
路面電車をひとことで表すと、生活に密着した乗り物と言えるでしょう。交通機関のイメージとしてはバスに近い感覚かもしれません。沿線は花壇も多く、特にバラが有名です。桜も所々に育っており、花と一緒に撮影するポイントも賑わいます。
また都電荒川線の車両基地では年に一度、6月 10 日「路電の日」付近でイベントが開かれます。開催年度によって内容は異なりますが、運が良いと東京都電 6000 形が見られるかもしれません。現行の四角いデザインとは違った、丸みを帯びた懐かしいフォルムです。自力での走行はできませんが、堂々とした存在感があります。
3.撮影スポット1 飛鳥山停留所付近
最初に紹介する撮影地は飛鳥山電停付近です。こちらは北区の JR 王子駅からも近い場所です。立ち位置と機材次第で、様々な写真が撮れるスポットです。
まずは交差点を跨ぐ歩道橋からの撮影です。
こちらでは編成写真が撮影可能です。飛鳥山公園を左手に撮影します。ここは道路と線路が合流する併用区間です。車と同じように電車も道路信号を守ります。タイミングがあえば、停止した列車をじっくり撮影することも可能です。初心者でも慌てずにしっかりと撮影できます。
続いて飛鳥山電停に進入する列車を狙います。こちらのアングルからもスタンダードな鉄道写真を狙えます。桜の時期に合わせて狙いたいカットです。飛鳥山公園は桜の名所としても知られています。桜が咲く時期は撮影者も多い場所です。現在走っている車両の多くは LED 表示器を搭載しているため、シャッタースピードも工夫すると完璧です。カーブでは速度を落として走行するためチャンスでもあります。かなり線路に近いような写真ですが、実際は歩道にある柵の内側から十分に離れて撮影しています。
さらに高い場所からはこのような写真も撮影可能です。こちらは JR 王子駅の北にある、北とぴあ展望階からの眺めです。ここは JR の新幹線や在来線の撮影スポットとしても有名ですが、荒川線も撮影可能です。小さい路面電車を上から眺めると、模型の世界を見ているような感覚になります。
飛鳥山周辺で最後にご紹介するのはこちらです。こちらの撮影スポットは飛鳥山公園の中にあります。このアングルはかなり狭い場所にあるため撮影できるのは一名のみ。大塚方面へ線路が伸びてゆく風景を撮影できます。ここでは圧縮効果を体感できるでしょう。超望遠レンズが必須のアングルです。600 mm 〜 1000 mm まであると十分に楽しめます。
4.撮影スポット2 大塚駅前ー巣鴨新田ー庚申塚
こちらの区間はお散歩気分で撮影できる場所が点在しています。有名撮影地や定番アングルがあるわけではありませんが、住宅地や路地裏の雰囲気が多く残っています。生活感が感じられる風景が点在しています。天気の良い日は線路沿いに歩いてみるのも良いでしょう。
スナップのコツはものの視点や角度を変えて撮影することです。このようにミラーに映った電車も撮影してみると面白いです。ミラーに限らず、ガラスなど反射するものを見つけて挑むと楽しく時間を過ごせます。
スナップでは画角を広めに周囲の情景なども入れ込むと良いでしょう。撮った時には気づかずとも、後から見直すとその時代の生活感や空気を感じられる一枚が撮れているかもしれません。気軽にたくさん撮影することをオススメします。
5.撮影スポット3 学習院下ー面影橋
次にご紹介するのはこちらです。学習院下の停留所から、徒歩3分ほどの場所にあります。都電の踏切近くから撮影しましょう。激しいアップダウンの急勾配をゆく列車を撮影できます。
ここでも超望遠レンズがオススメです。歩道からの撮影なので三脚の使用は控えましょう。焦点距離が長いレンズほど圧縮効果が期待できます。4月上旬春にはこのように画面奥と、手前側の鉄橋付近に桜が咲くポイントでもあります。
秋や冬の陽が短い時期は列車にスポットライトが当たったように撮影することも可能です。こちらも先ほどと同じ場所からの撮影ですが、イメージが全く違います。この時期はビル陰との戦いなので、撮影時間をよく考えて狙いを定めましょう。
6.次回予告
都電荒川線の撮影地紹介はいかがでしたでしょうか。都会を走るチンチン電車は独特の雰囲気があって一日中楽しめます。一日乗車券もあるので季節を変えて色々撮影してみてくださいね。さて次回はライカで撮影する鉄道写真です。ぜひご期待ください。
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
遠藤真人