2005/10/05
冒頭写真にあるデジカメは、富士写真フイルム株式会社の新製品『FinePix S9000』です。
レンズ交換ができないタイプの一眼レフデジタルカメラですが、35mmフィルム換算で28mm〜300mm相当の高精細フジノン光学式10.7倍ズームレンズを搭載しています。このレンズ、メーカいわく「ハイブリッド非球面レンズ1枚、ガラスモールド非球面レンズ2枚を採用し、レンズ収差を徹底補正。さらに多群移動方式を採用。」ととても力の入ったものです。このようにレンズ交換ができないタイプのデジカメも、レンズへの注目が高くなっています。
それでは本題に入りましょう。
暑い日もありますが、朝晩はすっかり涼しい風が吹くようになりました。このように秋が本格化してくるとカメラの新製品が発表されることが多くなります。冬のボーナス商戦を狙った製品がチラホラと市場に投入されてくるためです。ことしもいくつかのメーカから注目の製品が登場しています。この「スタグラ」をご愛読されている皆様だと、注目は35mmフィルムサイズの撮像素子を装備した、キヤノンの『EOS 5D』あたりでしょうか。
このようにレンズ交換式のデジカメが普及してきたおかげで、レンズも脚光があたるようになってきました。いや、たしかに以前からもレンズはチェックすべきパーツではあったのですが、フィルムを使ったいわゆる銀塩カメラに比べると、比較的軽視されがちなところもありました。それよりもCCDやCMOSといった撮像素子への関心が高かったという感じでしょうか。しかし、最近は採用されている撮像素子による差が少なくなってきていることもあって、レンズに関する注目の比重が特に高くなっているようです。しかも、レンズ交換ができないタイプのデジカメを購入する方も、「このデジカメは、良いレンズを使っているのかなぁ。」なんて気にすることも多くなってきたようです。
ところで、高いレンズと安いレンズの決定的な差はなんでしょうか。どうして、さまざまなくふうを施した高額なレンズが開発されているのでしょう。実は、レンズには大敵となる現象があり、これをなるべく軽減するためのくふうがされているのです。このくふうが緻密で高度なものになるほど、レンズが高額になっていくというわけです。このレンズの大敵を知っておくと、レンズをチョイスする際のスペック比較に役立つだけでなく、撮影時にどのレンズを使おうか、という判断にも役立ちます。 では今回から数回、この「レンズの大敵」なるものを取り上げていきましょう。
ちなみに、ピンホールカメラというと、なんとなく小学生のときに実験した「日光カメラ」を想像してモノクロの写真しか撮影できないというイメージがありませんか。しかし、感光紙がカラーなら、しっかりとカラー写真を撮影することは可能なのです。 実は、ピンホールカメラは現在でも入手可能です。日本ポラロイドから発売中の『ピンホール 80』が比較的入手しやすいと思います。このカメラをつかって、レンズを使わないカラー写真の撮影に挑戦してみてはいかがでしょうか。
レンズを使わずに撮影できるのに、レンズが用いられるようになったのはなぜでしょうか。
それは、装置のサイズを小さくしたままで、多くの光を集められるからです。今回は、レンズに着目したいので、古代のカメラオブスクラのしくみなどは省略させていただきますが、この項目を詳しく知りたいという方は、日経BPソフトプレス社刊の『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』をご覧ください。
しかし、1枚の凸レンズだけでは鮮明でクリアな写真を撮影できません。デジタルカメラも例外ではありません。なぜなら、凸レンズだけでは綺麗な「像」を映し出すことができないからです。試しに凸レンズの代表格である虫眼鏡をのぞいてみてください。虫眼鏡の多くは、凸レンズ1枚でできています。のぞくとレンズからある一定の距離で映像のピントが合致して、大きな像が見えるようになります。このとき、像をよく観察してみてください。端のほうが色がにじんだり、ボヤけたり、そして歪んだりしていると思います。この像が、そのまま写真となるわけですから、1枚の凸レンズだけでは鮮明でクリアな写真を撮影できないというのがおわかりいただけると思います。
このように、色がにじんだり、ボヤけたり、そして歪んだりしてしまう現象を総称して「収差」といいます。収差は、レンズ表面のカーブだけでなく、材質や大きさなどによっても大きく変化します。
収差は、色ズレや歪みなどの無い、鮮明でクリアな写真を撮影するには、とても邪魔な現象です。この収差こそが「レンズの大敵」なのです。この収差を完全になくすことは、ほぼ不可能といわれています。そこで、なるべく少なくするために、さまざまなくふうを施した高額なレンズが開発されているというわけです。
では、それぞれの収差に関して、現象とその対策について説明していくことにしましょう。 しかし、それぞれ意外とボリュームがありますから、詳細は次回ということにしましょう。 では、次回をお楽しみに。