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デジカメの「しくみ」
第13回 : 液晶モニタ研究 その2.
      〜ポリシリコンTFTと液晶の光源〜
 
液晶モニタの主流 TFT型の欠点と改良
動画をなめらかに表示するための改良
バックライトと反射型
液晶とデジタルカメラ選び
2005/09/21
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ソニーエリクソン社の携帯電話『W21S』の液晶モニタです。左がバックライトが消えているとき、右がバックライトが点灯しているときの液晶モニタです。まるで見えやすさが異なるのがおわかりいただけるでしょう。ちなみに『W21S』は、「低温ポリシリコンTFT」による“システムオングラス”技術を使った液晶モニタが採用されています。
 
■液晶モニタの主流 TFT型の欠点と改良
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●液晶モニタは動画が少し苦手
 

 前回、液晶モニタの中では、TFT型が品質的に優れているという話をしました。TFT型は当初高価だったものの、デジカメや携帯電話などさまざまな製品の液晶モニタにTFT型が使われるようになると、量産効果で価格も大幅に下落し、現在では液晶モニタの主流になっています。

 しかし液晶モニタは、チューブ式のCRTに比べると電極スイッチのオン・オフの応答性が悪いというデメリットがあります。これは、品質に優れているTFT型でも、CRTに比べるとレスポンスが悪いといわざるを得ないものでした。電極スイッチのオン・オフの応答性が悪いということは、動きの激しい被写体を動画で表示させるときにやや難あり、ということになります。デジカメでは、ファインダの代わりとして液晶モニタが使われることが多くなりつつありましたから、これは大きな問題となりました。このため、TFT型の中でも少しずつ改良が進められていったのでした。
 では今回は、このTFT型液晶モニタのさらなる進化についてと、液晶モニタで用いられている光源の種類と見やすさついて紹介していくことにしましょう。

   
■動画をなめらかに表示するための改良
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●もっとも最適な「単結晶シリコン」
 
【単結晶シリコンの結晶状態】
結晶の大きさも配列も規則的に並んでいます。分子配列も電子配列も規則性があるので、電子移動が高速です。
 
  動画をなめらかに表示させるには、電極スイッチのオン・オフの応答性を高める必要があります。これは、電子の移動が高速な素材を使ってTFT型液晶モニタを作成すればいいはずです。ここでは、TFT型を改良したいところですから、他の素材をチョイスするのは、あまり望ましいことではありません。そこで、分子配列も電子配列も規則的である「単結晶」の状態でTFT型液晶モニタを作成すればいいということになります。つまり、「単結晶シリコン」を使って薄膜トランジスタを生成すればいいということになります。
●最初は「アモルファスシリコン」から
 
【アモルファスシリコンの結晶状態】
結晶が存在しますが、それは大きさも配列も無秩序に並んでいます。
 
 しかし、実際には単結晶シリコンを使って薄膜トランジスタを生成するのは、技術的に非常に難しいことです。そこで、当初のTFT型液晶モニタでは、非結晶状態のシリコンを使って薄膜トランジスタを生成していました。この非結晶状態のシリコンのことを別名「アモルファスシリコン」といいます。もし、スペックの液晶モニタの項目で「アモルファスシリコン使用」などといったことが書かれていたとしたら、カッコよく見えるかもしれませんが、それはあまり優れている品質とはいえないということです。

 アモルファスシリコンには、結晶状態の部分も存在しますが、電子配列に規則性はありません。そのため、電子の移動速度は単結晶シリコンの500分の1程度にまで落ちてしまうこともありました。アモルファスシリコンを採用した初期のころのTFT型モニタの中には、充分に改良されたSTN型のモニタに比べても電極スイッチのオン・オフの応答性が悪く、動きの激しい動画を表示させると残像がほんのり残ってしまうものもあったほどです。

●一部に規則性がある「ポリシリコン」
 
【ポリシリコンの結晶状態】
部分的に単結晶化された状態が、いくつも集まって全体を構成しています。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
 
 高価なTFT型液晶モニタにもかかわらず、STN型液晶モニタに比べて品質が劣っているのは大問題です。そこで、より高速に電子が移動できる素材の開発が進みました。その中で、もっとも優れたものが、多結晶状態のシリコンを使う方法でした。これが「ポリシリコン」です。多結晶状態とは、単結晶シリコンのようにすべてが規則性をもっているわけではないのですが、部分的に規則性をもった個所がいくつか集まって全体を構成している状態を指します。つまり、単結晶シリコンとアモルファスシリコンの中間的な構造であるということができます。

 性能も、単結晶シリコンとアモルファスシリコンの中間的なもので、電子の移動速度は、単結晶シリコンの3分の1から5分の1程度の落ち込みですみます。つまり、アモルファスシリコンの100〜300倍も高速であるわけです。

●製造コストを下げた「低温ポリシリコン」
 

 ポリシリコン液晶には、ひとつ大きな問題がありました。ポリシリコンを生成するには、1000度以上に加熱する必要があったからです。なぜ、これが問題かというと、液晶モニタで薄膜トランジスタを生成するのは、ガラス面に行うからです。つまり、1000度以上に加熱にも耐えられるような強化ガラスを用いなければならなくなります。ところが、1000度以上に耐えられる強化ガラスというのはとても高価なのです。つまり、製造コストがとても高くなってしまうのです。

 そこで、アモルファスシリコンと同程度、つまり500度くらいで薄膜トランジスタを生成できるポリシリコンが開発されました。これを通常のポリシリコンと区別するために「低温ポリシリコン」と呼んでいるのです。この低温ポリシリコンの登場によって、激しい動きの動画にも追随できる性能の高いTFT型液晶モニタが、比較低価格で製造できるようになったのです。現在、TFT型液晶モニタの多くが、この低温ポリシリコンを採用するようになっています。多くの場合、アモルファスシリコンを採用したTFT型液晶モニタとの差別化を図るために「低温ポリシリコンTFT」と呼ぶことが多いようです。デジカメや携帯電話を選ぶときには、注意してスペックを読むと良いでしょう。

   
■バックライトと反射型
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●液晶は自身が発光はしない
   液晶モニタの見やすさは、どのような方式が採用されているかだけではなく、採用する光源にも左右されます。というのも、液晶自体は発光しないために、別に発光する光源が必要になるからです。この光源によって、液晶パネルの見た目の明るさが変わります。また、外の明るさを利用する場合と、発光体を内蔵する場合とでは、バッテリの持続時間に大きな影響を与えます。
では、液晶モニタに使われる代表的な光源について紹介していきましょう。
   
●透過型液晶モニタ
   液晶パネルの背面に光源となる発光体を設置して、液晶パネルを見やすくする方法があります。光が背面から液晶パネルの後ろから前面に透過してくるので、この方法を採用したものを「透過型液晶モニタ」といいます。背面に設置された光源をバックライトといいます。
 液晶パネルと同じ面積の光源を用意するのが、もっとも見やすい液晶パネルを作成する方法です。しかし、この方法だと膨大な消費電力となってしまい、バッテリで駆動するデジカメや携帯電話には適していません。そこで、光を誘導する導光板と液晶パネル側に光を反射させる反射シートを用いて液晶パネル全体に光が照射されるようにし、消費電力を低減させているものもあります。このしくみでは、導光板と反射シート、光源までを含めてバックライトと呼んでいます。

 透過型液晶モニタで画像を見やすくはっきり表示させるには、常にバックライトを転倒させておく必要があります。そのため、バッテリへの負担が大きくなって、動作時間が短くなってしまう傾向があります。また、晴天下の屋外では、バックライトの光量が太陽の光に負けてしまい、画面が見えにくいという状況になってしまうこともあります。


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【透過型液晶モニタ】
液晶パネルの背面から光を透過させて、見やすさを向上させるしくみです。 (『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
   
●反射型液晶モニタ
   透過型液晶モニタとおなじように反射シートは液晶パネルの背面に設置しますが、導光板は液晶パネルの前面に配置しているしくみの液晶モニタです。光源は、導光板の側に設置しますから、フロントライトと呼ばれます。
 こうすることによって、晴天下の屋外では太陽光を、室内ではフロントライトを光源にすることができるというわけです。太陽光を利用している場合は、光源を光らせる必要がないため、屋外で使う機会が多い場合は、消費電力に優れた方式だといえます。しかし、太陽光を中心に設定してあるため、フロントライトを動作させても光量不足で見にくい製品があったりもします。


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【反射型液晶モニタ】
太陽光を利用する屋外での使用に優れています。 (『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
   
●半透過型液晶モニタ
    屋外では太陽光、屋内ではバックライトを利用するしくみになっていて、反射型液晶モニタと呼ばれています。透過型液晶モニタと反射型液晶モニタの両方の機能を取り入れたもので、それぞれのメリットを受け継いでいるといえるでしょう。デジカメや携帯電話での採用も多くなっています。


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【半透過型液晶モニタ】
屋外では太陽光、屋内ではバックライトを利用するしくみで、太陽光を利用するときは反射型液晶モニタ、バックライトを利用するときは透過型液晶モニタの特徴を利用します。 (『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
   
■液晶とデジタルカメラ選び
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●より見やすい液晶モニタの製品を選ぼう
   大きな液晶モニタをファインダとして使って撮影するのがデジカメの利点です。また、一眼レフでも、その場で撮影した画像を確認するのはデジカメならではの特長です。
液晶モニタが見にくければ、これらの利点が半減してしまうといっても良いでしょう。
2つの製品で悩んだりしたら、このような液晶モニタの違いで選んでみるのもひとつの選択肢ではないでしょうか。
Text by 西井美鷹(デジカメWEB)

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