【CMOSの特性を活かしたクロップ高速機能を搭載した『D2X』】
ニコンの『D2X』(写真上)に搭載されている「クロップ高速機能」(下画面)では、CMOSの中央部分だけを使って撮影を行います。12.4メガピクセルすべての画素を使って高速連続撮影を行ったときには5コマ/秒の撮影ですが、撮像素子の中央部6.8メガピクセルを使用したクロップ高速機能は、8コマ/秒の高速連続撮影が可能になります。 |
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●蓄積の同時性を行う工夫
CMOSはCCDに比べて、高速に動く被写体に弱いという特性がありました。蓄積の同時性がないための障害でしたね。まずは、このデメリットに対する工夫を紹介しましょう。
蓄積の同時性が行われないのは、画素によって蓄積を終了するタイミングに差があるためでした。そこで、電荷の読み出しを開始するときに、CMOSに照射する光を意図的に遮断したらどうなるでしょうか。一番最初の画素が電荷の読み出しを終了し、再び電荷の蓄積をはじめようとしても、遮光されているので電荷は蓄積されません。これなら、蓄積の同時性が確立できるはずです。
この遮光は、機械的なシャッター、つまりメカニカルシャッターを使って行うことができます。「えー、カメラにシャッターを使うのなんて当たり前じゃないの?」と思われるかもしれませんが、安価なデジカメや携帯電話ではメカニカルシャッターは用いられていないことが多かったのです。それは、蓄積した電荷を無くしてしまうというCCDやCMOSの特性を使えば、シャッターの機能と同じような効果を得ることができます。この特性のことを電子シャッターといいます。安価なデジカメや携帯電話にはメカニカルシャッターを搭載せずに、電子シャッターだけで撮影するしくみのものが多かったのです。
最近では、CCDやCMOSとメカニカルシャッターを一体となったユニットが登場してきて、携帯電話などに採用されるようになりました。携帯電話で撮影した写真が高画質になってきた理由のひとつは、このメカニカルシャッターの搭載といわれています。もちろん、CMOSの採用が多くなってきたデジタル一眼レフカメラには、高性能なメカニカルシャッターが搭載されていますから、「高速に動く被写体に弱い」というデメリットを被ることはないわけです。
●CCDよりも素早く読み出しを行う
前回、CMOSの方がCCDよりも劣っているような説明をしました。しかし、CMOSの方が優れている部分もあるのです。その中のひとつは、電荷の読み出しについてです。
CCDの電荷を読み出すには、バケツリレーによって電荷を増幅器に転送する必要があります。そのため、信号を読み出すためにある程度の時間が必要になります。増幅器を2つ用意して、CCDを真ん中で左右2つに分けて転送を行い、時間を短くする方法もありますが、どうしても縦方向に分割することはできません。また、CCDの特性や技術的に、2つ以上に分けて転送させることは難しいとされているので、効果的に読み出し時間を短くすることはできないといっていいでしょう。
一方のCMOSは、バケツリレーを行わず、それぞれの画素で信号を増幅し、読み出しを行います。そのため、いくつかのブロックに分けて読み出すことが可能になのです。さすがに、何百にも分けて読み出すの無理ですが、4つや6つに分けて読み出すのは問題なく、実用化されています。つまり、効果的に読み出し時間を短くすることができるのです。
読み出しが速ければ、次の撮影までのインターバルを短くすることができます。つまり、連写が可能になりやすいのです。もちろん、連写機能を実現するには、高速にデータを蓄積できるバッファメモリを大容量で確保していなければいけないので、CMOSを採用すればいいというものではないのですが、余裕をもって連写機能を設計できるという利点があるのです。
最近では、このブロック分割して読み出すというしくみを積極的にデジタルカメラの機能として搭載した製品も出てきました。ニコンの最新デジタル一眼レフカメラ『D2X』には、クロップ高速機能というしくみを備えています。これは、ブロック分割した中央部分のデータだけを読み出して写真画像のデータとして使うというしくみです。このことによって、連写速度が大幅に向上していますが、これはCMOSならではの機能です。CCDで同じようなことをやろうと思っても、構造上、一度すべてのデータを取り出してから、画像処理部分でトリミングを行わなければならず、連写機能が大幅に向上するようなことはありません。 |