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デジカメの「しくみ」
第6回 : CMOSって良いの?! 悪いの?! その1      
 
CCDからCMOSへ
CMOSとCCDの違い
なぜCMOSのイメージはこれまで悪かったのか
CMOSは固定パターンノイズが問題になる
2005/04/13

スタジオグラフィックス公認 デジタルカメラの教科書
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デジタルカメラが普及し始めた7〜5年ほど前は、CMOSを採用したデジタルカメラというのは、綺麗に写真が撮れないということの代名詞のようなものでした。これは、トイカメラと呼ばれる廉価版のデジタルカメラが、あまり工夫が施されていないCMOSイメージセンサーを使っていたためで、CMOS自体に秘められた能力は、決して低いものではなかったのです。
 
■CCDからCMOSへ
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●デジ一眼とCMOS
   この連載は、やたらとデジ一眼ことデジタル一眼レフカメラの話題から始まりますが、今回もデジ一眼の話からです。スミマセン。景気が良いと云われていたデジタルカメラの出荷数にも翳りが見え始めていて、わたくしの四十肩と同じように右肩が上がらなくなってきてしまった現在、どうしても注目されるのは、未だに右肩上がりに販売数を伸ばしているデジ一眼に集まってしまうのは仕方のないことなんでしょうね。(ちなみに、まだ不惑は先のことなんですけれどねぇ…)
 そして、今回注目するのは撮像素子。デジ一眼で採用されている撮像素子は何種類かありますが、今回はCMOSに注目します。
   
●昔はCMOSは粗悪なイメージだった
 
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【ニコンもCMOSを採用】
ニコンのプロ向けのハイエンドデジタル一眼レフカメラ『D2X』。ニコン製のデジタル一眼レフカメラとしては、初めて撮像素子にCMOSセンサーを採用しています。
 
 最近のデジ一眼の製品とCMOSで注目されているといえば、ニコンの最新一眼レフタイプのデジタルカメラ『D2X』でしょう。今まで、CMOSを採用しているデジ一眼といえばキヤノンの独壇場でした。そこに、ついにニコンが参入してきたというわけです。おお、ニコンよ、おまえもか、といったところでしょうか。
 キヤノンでCMOSの実績があるのだから、ニコンが採用しても不思議はないのでは、と思われる方も多いかもしれませんね。特に、最近デジタルカメラに興味を持たれた方は、CMOSはキヤノン製の高級デジ一眼にも採用されているくらいですから、良いイメージがあるのかもしれません。しかし、実は数年前までは、CMOSタイプの撮像素子は粗悪なもの、というイメージが強かったのです。CCDと採用するようなコストがかけられないから、しかたがないのでCMOSを採用する、というのが当時の図式だったのです。

では、なぜ当時のイメージを覆すように高級デジ一眼にもCMOSが使われるようになったのでしょうか。そもそも、CMOSという撮像素子は、CCDよりも優れているものなのでしょうか。CCDよりも劣っているものなのでしょうか。

 では、今回は、このCMOSについて迫ってみましょう。

   
■CMOSとCCDの違い
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●CMOSって何?
 

 まずは、CMOSとCCDの違いをチェックしてみましょう。
 CMOSは「Complementary Metal Oxide Semiconductor」の頭文字をとった略語で、一般に「シーモス」と呼ばれています。日本語では、一般的に「相補型金属酸化膜半導体(あるいは相補性金属酸化膜半導体)」と訳されています。CMOSは、半導体の方式の1つを指している言葉で、撮像素子以外にもさまざまな用途で使用されています。これがCCDと違うことのひとつといえるでしょう。CCDは、撮像素子以外の用途で使われることはほとんどありません。しかし、CMOSは、撮像素子の他に、メモリとしてだけ使用したり、オートフォーカスのためのセンサとして使用されたりしているのです。そのため、さまざまな現場で改良を繰り返しており、最近ではCCDに比べて進化が速くなっているといえます。

 ちなみに、CMOSにはさまざまな種類がありますから、デジタルカメラで採用されている撮像素子ならば「CMOSイメージセンサ」と呼んで、CMOSメモリやCMOSオートフォーカスセンサなどと区別する必要があります。しかし、デジタルカメラの世界では「CMOSといえばCMOSイメージセンサのこと」という図式が一般化しているので、単に「CMOS」とだけ呼ばれることが多いのが現状です。

   
●COMSはシステムオンチップ
 

 CMOSとCCDは、用途だけでなく、データの読み出し方も大きな違いがあります。CCDは、本連載の「第5回 : CCDの電荷バケツリレーのしくみ」で解説したように、各画素で発生した電荷を、バケツリレーのような転送機能を使って増幅器に運び、そこで信号として扱えるようにしていました。ところが、CMOSは各画素で発生した電荷をその場所で信号として増幅し、取り出しているのです。つまり、増幅器である画素アンプが、それぞれの画素に用意されているのです。この信号は、CCDのようにバケツリレーで転送するのではなく、各画素に回路を繋げて個別に信号を取り出します。

 これは、CMOSがシステムオンチップという構造が可能なため実現できることです。CMOSは半導体の方式の1つ」と前述しましたが、CMOSは通常のLSIなどの回路を組み込むものと同じような製造プロセスで作られます。このとき、通常のLSIと同じように何層かの回路構造にしてイメージセンサーと画素アンプ、そしてそれを繋ぐ回路を同一のチップに詰め込むことが可能になっているのです。このように、いくつかの回路や機能を同一のチップに詰め込むことをシステムオンチップといいます。
 一方、CCDは製造プロセスが特殊なので、システムオンチップのような構造で回路を組み込むのは困難です。その結果、バケツリレーを利用したチップが一般的になってしまうのです。

 ちなみに、バケツリレーをしませんから、CMOSではスミアの発生はほぼ皆無という利点があります。スミアについては「第5回 : CCDの電荷バケツリレーのしくみ」を参照してください。


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【CMOSとCCDの信号読み出し】
CMOSは、各画素で蓄積した電荷をそこで増幅してしまい、各画素から配線を使って信号として読み出します。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
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■なぜCMOSのイメージはこれまで悪かったのか
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●CMOSは速く動くモノが撮れない?
 
CMOSは、光を受けたり受け終わったりするタイミングが画素によってズレてしまうので、高速に動いている被写体を撮影した場合には、画像が歪んでいるように見えてしましまいます。(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ(写真提供:富士写真フイルム)』〜より)。
 
 このように、根本的な構造自体が異なるCCDとCMOSですが、ここでは、CMOSとCCDを比べたときに、CMOSの方が劣っているといわれている点をみていくことにしましょう。

 まず、CMOSはCCDに比べて、高速に動く被写体に弱いのです。おおげさに云うと、高速に動くモノを撮影したときに歪んでしまうのです。
 CCDは、「蓄積の同時性がある」という云い方をします。これは、CCDの各画素で光を照射しているタイミングがすべて揃っているという意味です。CCDは、電荷の転送を行うときに、すべての画素を総動員しなければいけません。つまり、照射が終わって転送を開始するタイミングは、すべての画素が同時なのです。もちろん、転送がすべて完了し、再び光の照射を受け始めるタイミングもすべての画素が同時に行われるのです。

 ところが、CMOSはこのタイミングが同時ではないのです。というのも、CMOSでは1つの画素が蓄積した電荷は、その場で増幅して信号として読み出しますが、この動作は同時に行えないのです。これは、読み出しの信号を伝送する回路を共用しなければいけないからです。先ほど提示した上の図を見てください。4つの画素に対して、個別に回路が繋がっているわけではなくて、縦方向の伝送回路は共用しています。このような回路で、上下に並んでいる2つの画素が同時に信号を転送したらどうなるでしょうか。信号が混ざってしまって、正しいデータは読み出せません。つまり、下の画素が信号を転送し終わるのを待って、その後に上の画素が転送を始めなければいけないのです。これが、転送のタイミングだけズレるだけなら問題はないのですが、光の照射を受けるタイミングもズレてしまうのです。というのも、CMOSの各画素は、データの転送をしていない間、光の照射を受けてしまうからなのです。つまり、光の照射を受け始めるタイミングも、受けるのをやめるタイミングも、各画素では同時ではないのです。このような条件下で写真を撮ると、被写体が高速に動いていた場合には、歪んだ画像が記録されてしまうのです。ちなみに、これは画素が増えれば増えるほど顕著になっていきます。

   
■CMOSは固定パターンノイズが問題になる
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 もうひとつ、CMOSがCCDに比べて大きく劣っていたもの、それはノイズです。特に、CMOSは、固定パターンノイズが大きく、画質に影響を与えていました。固定パターンノイズとは、各画素に用意された増幅器のバラツキによって発生するノイズで、CMOSの構造上、避けることができないものです。なぜ、避けられないかというと、CMOSが半導体であるためです。ここで、あれれ、と思われる方も多いかもしれませんね。半導体といえば、イメージとしては超精密機器。それなのにバラツキが出てしまうなんて、なんだか変ですよね。しかし、実は半導体というものは、実情は製品の個体ごとにかなりのバラツキがあるのです。これは、半導体が理論先行で作られるためです。

 例えば、完全に純粋な鉄の原子だけで構成された回路があったとしましょう。このとき、「摂氏何度に熱すると流れる電流はどれくらいで、ノイズはどれくらいになる」というのはしっかりと把握することができます。それは、原子によって物性はきちんときまっているからです。ところが、半導体はそうではありません。「摂氏何度に熱すると流れる電流はどれくらいで、ノイズはどれくらいになるはず」という物性の目標値が先に設定されます。そして、その物性になるように、さまざまな金属を特定の比率で混ぜ合わせてシリコン結晶を作れば良いかということを計算で導き出すのです。この計算はとても複雑ですし、また、比率や製法、そして製造時の温度や湿度などを完全に一致させないと同じ物性のものはできあがりません。しかし、実際には完全に一定な条件を保つのは困難ですし、金属の混合に部分的に偏りが出てきてしまうことも避けられず、どうしてもバラツキが生じてしまうのです。

 ちなみに、このバラツキは半導体の宿命で、規格自体にそのバラツキを考慮しているものもあるくらいです。半導体の1つであるトランジスタには、性能を比較する指針のひとつに直流増幅率βという値がありますが、製品によっては、この値の許容範囲を70〜700として規格を制定しているものもあるくらいです。乱暴にいうと、70倍に増幅してくれるものと700倍に増幅してくれるものが同じ製品名として名乗っているというわけです。これを許容してしまうのが半導体なのです。

 このような理由から、CMOSは、各画素に用意された増幅器のバラツキが出てしまい、固定パターンノイズが発生してしまうのです。ノイズは、本来写したい画像のデータにとっては邪魔なデータです。これが一緒に画像データに記録されるということは、色がくすんだり、常に一定の明るさの点が写真に残ってしまったりするのです。

 今回はチョット長くなってしまったので、ここまでにしましょう。次回は、これらCMOSの弱点を克服する技術について解説していきます。


Text by 西井美鷹(デジカメWEB)

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