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デジカメの「しくみ」
第4回 : デジタル対応レンズって何?!
 
「デジタル対応」って謳っているけれど
広角側を稼ぐための工夫としての「デジタル対応」
撮像素子に効率良く受光させるための「デジタル対応」
デジタルカメラには「デジタル対応」のレンズを
2005/02/09
スタジオグラフィックス公認 デジタルカメラの教科書
体系的に学ぶデジタルカメラのしくみ第2版 スタジオグラフィックス、デジカメのしくみ講座の著者、西井と神崎が執筆したデジカメの歴史、カタログの読み方、レンズや撮像素子のしくみなどをやさしく解説した書籍。待望の第二版
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オリンパスの「ズイコーデジタル (ZUIKO DIGITAL)14-45mm(28-90mm) F3.5-5.6」は、デジタルカメラ専用に設計された交換レンズ。デジタルカメラ向けに設計したことって何だろう?!
 
■「デジタル対応」って謳っているけれど
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●デジタル時代でもカメラの命は「レンズ」
   デジタルカメラ販売の伸びが鈍ってきたといわれていますが、デジ一眼こと一眼レフタイプのデジタルカメラは、まだまだ人気が高く、販売も好調なようです。そして、そのデジ一眼の楽しみといえばレンズ交換。焦点距離が異なるもの、同じ焦点距離でもF値の明るさが違うもの、絞りの羽の形状が違うもの・・・。さまざまなレンズが販売されていますから、これを取っ替え引っ替えデジ一眼にセットして撮影しまくっている方も多いのではないでしょうか。しかし、レンズを交換するだけで、まったく違うカメラに生まれ変わったのではないか、というほど、劇的に撮影できる写真が変わってきますから楽しいですよねぇ。デジタル時代になっても、レンズがカメラの命を握っていると云っても過言ではありませんよね。
   
●デジタル対応レンズというのがあるが…
 

  魅力あふれるデジ一眼が次々と登場しているわけですが、それに負けじとレンズの新製品達もわんさかリリースされています。あ、こんなのも出たから欲しい、あ、あんなのも使ってみたいなぁ・・・、なんて考えていると、気がついたら本体3台買えるような出費になっていて・・・、なんて話もよく聞いたりします。そんな中、フィルムタイプの一眼レフカメラと共用できる製品の他に、「デジタル対応」とか「デジタルカメラのために新設計した・・・」なんていうレンズを最近では見かけるようになりました。
 さて、この「デジタル対応」といわれるレンズは、通常のレンズとはどこが違うのでしょうか。今回は、デジタル対応レンズに迫ってみましょう。

 このページの冒頭に掲載したレンズは、オリンパスの「ズイコーデジタル (ZUIKO DIGITAL)14-45mm(28-90mm) F3.5-5.6」。「デジタル向けの交換レンズ」です。つまり、デジタルカメラ専用に設計された交換レンズ。フォーサーズシステム(Four Thirds System)規格を採用したことの他に、デジタルカメラ向けに設計した・・これって何だろう?!

   
■広角側を稼ぐための工夫としての「デジタル対応」
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●撮像素子のサイズによって焦点距離が変わってしまう
 

 レンズメーカーが「デジタル対応」と呼ぶ場合の根拠は、大きく分けて2種類あります。

 まずは、1種類目のデジタルカメラにしか使えないという意味で「デジタル対応」を使っている場合について解説しましょう。
 カメラレンズは、画角によって広角や望遠、そして標準といった分類がなされています。しかし、画角で使っている数値を使うと、望遠側がわずかな数値の変化しかなく、イメージが掴みにくくなってしまいます。そこで、通常は焦点距離と関連づけて、50mmの標準レンズ、400mmの望遠レンズ、といった具合で呼んでいるのです。ちなみに、300mm、400mm、500mmの公称対角線画角は、それぞれ8°10′、6°10′、5°となります。やはり少し分かりにくいですね。

 普段から使っているので、何mmといわれるとだいたいの撮影範囲のイメージができてしまっている焦点距離ですが、実は同じ画角でも撮像素子のサイズによって焦点距離は変わってしまいます。例えば、35mmフィルムサイズの撮像面を基準にし、同じ画角のレンズを2分の1インチサイズの撮像素子で作ろうとしたときには、焦点距離を5.4分の1にしなければいけないのです。

 つまり、35mmフィルムサイズで50mmの画角のレンズは、1/2インチ用なら9.3mmで設計しなければいけないのです。これがデジ一眼で問題になる、同じレンズを使っても、焦点距離が長くなってしまうというヤツです。下の図は、同じ画角で、1/2インチや1/4インチのCCDと35mmフィルムサイズではどれくらい焦点距離が違うのか、というのを模式図にしたものです。随分違うのが分かりますね。ちなみに、デジ一眼で多く用いられているAPS-Cサイズと呼ばれている撮像素子を使った場合には、1.5〜1.6倍の違いになります。


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【同じ画角でも撮像素子のサイズによって焦点距離は違ってくる】
撮像素子が小さくなれば、焦点距離は短くなる。(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
   
●チョット余談ですが・・・
 

  日本人は、インチという単位をあまり使わないので、上の図を見ても違和感はないと思われますが、インチとミリの両方に精通している方には、少し奇異に見えることでしょう。チョット本筋から外れてしまいますが、その理由を解説しておきましょう。

 両方に精通している方が疑問に思うのは、「1/2インチって、35mmに対してこんなに短いんだっけ?!」ということだと思います。実は、CCDなどの撮像素子で使われるインチは、通常の1インチ=25.4mmではないのです。

 例えば、CCDの1/2インチは12.7mmではなく、約8mm程度しかないのです。これは、撮像素子が、かつては真空管であったことが起因しています。例えば、1/2インチの真空管を使って撮像素子(撮像管)を作ったとしましょう。しかしこのとき、撮像素子は1/2インチ、すなわち12.7mmのサイズを確保することができないのです。なぜなら、真空管はガラスで作られていますから、この厚みを差し引いたエリアにしか撮像素子の部分を作ることができないからです。1/2インチサイズの真空管を使った場合には、だいたい8mmくらいのサイズの撮像素子ししか作れません。これが、CCDなどの撮像素子でも慣例的に使われているのです。


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【真空管を使った撮像管と撮像面】
ガラスの厚みを考慮しなければならないので、撮像面は若干小さくなってしまっていた。デジタルカメラ時代になっても、この慣例は残ってしまっている。
(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
   
●デジ一眼は広角が苦手
 
【デジタルカメラにしか使えないレンズ】
キヤノンの広角レンズ「EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM」は、カメラの奥の方までレンズの一番後が入っていく設計。そのため、EOS 20DおよびEOS Kiss Digital以外のEOSカメラには装着できない。2005年2月9日現在。
 
  風景を撮影する場合には、広角レンズが多く用いられます。ところが、フィルムタイプのカメラで使っていたレンズをそのままデジ一眼で使おうとすると、先ほど述べたように焦点距離が1.5〜1.6倍延びてしまいます。すると、広角で風景を撮影するのに多く用いられる28mmのレンズが、45mm程度まで焦点距離が伸びてしまうことになります。これはもうほとんど標準レンズの領域ですよね。だからといって、28mmになるレンズというと18mm程度の焦点距離になります。

 この焦点距離だと、レンズの直径も大きくなりがちで、今までではかなり高価なレンズしかない焦点距離でしたから、デジ一眼で広角を撮影するのはお金がかかる、という状況になってしまったのです。この状況がずっと続くようでは、デジ一眼は普及していきません。

 そこで、カメラレンズメーカーは、小さくて安いレンズでも焦点距離が短くなるように、レンズの一番後から撮像素子までの距離を短くしたレンズを作りました。これで、普及価格帯でも28mm程度の広角レンズがデジ一眼でも楽しめるようになったのですが、このタイプのレンズには1つだけ欠点がありました。それは、あまりにも撮像素子側までレンズを長くしたためにカメラの中にまでレンズが入り込んでしまい、今までのフィルム式のカメラには装着できなくなってしまったのです。つまり、特別な機構を用いたデジ一眼しか使えない、という事態が発生したのです。これが、デジタルカメラにしか使えないという意味での「デジタル対応」と謳っているレンズなのです。

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■撮像素子に効率良く受光させるための「デジタル対応」
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●CCDの受光面は奥まっている
   しかし、このような広角レンズでなくても「デジタル対応」と謳われているレンズが数多く存在します。これらは、今までのフィルム式のカメラようのレンズとどのような違いがあるのでしょうか。では、もう1種類のデジタルカメラに適しているという意味で「デジタル対応」を使っている場合について解説しましょう。
 この違いに重要な役割を果たすのが光を受光するところです。フィルムタイプのカメラならもちろんフィルムですし、デジタルカメラだとCCDやCMOSになりますね。この物理的な構造が、フィルムタイプとデジタルとでは、大きく違っているのです。ちなみに、フィルムタイプはCCDと違って化学変化を利用している、とか、そういったことではありませんよ。表面の形状の問題です。
 みなさんも現像済のフィルムを見たことがあると思いますが、これは表面に凹凸などは無い、フラットな状態ですよね。現像前のカメラの中に入って撮影に使っているときも、これと同じく表面に凹凸はありません。ところが、CCDやCMOSの表面というのは凹凸のないフラットな状態ではないのです。画素同士を区切っている仕切りが、受光面よりも前に飛び出した形状になっていて、窪んだ処に受光面が位置しているのです。
   
●光が受光面に垂直に入ってくるように設計
 

 さて、ここでレンズの仕事を考えてみましょう。レンズというのは、多くの光を受光面に届けるのが仕事です。しかし、単純に1枚のレンズで集めたのでは、表示される映像は湾曲してしまいます。虫眼鏡で辞書などを見ているときに、端の方が歪んで見えることがあることからも、1枚のレンズだけでは綺麗な映像が映し出せないのは分かるでしょう。そこで、カメラのレンズというのは、映像が湾曲したりしないように、何枚もの凹レンズや凸レンズを組み合わせて構成されています。このことによって光は屈折して進んでくるのですが、フィルムタイプのカメラレンズの場合は、撮像面に垂直に光が入るように設計しなくても問題はありませんでした。斜めに光が入ってきても、撮像面の表面はフラットなので、照射される光が少なくなるといったことはないからです。ところが、CCDやCMOSの受光面は仕切りよりも窪んだ位置にあるわけですから、斜めに入ってきた場合には仕切りに遮られてしまうのです。このような状態では、偽色が発生してしまったり、光量が少ないために暗い画像になってしまいます。これを避けるためには、光が受光面に垂直に照射されるように設計したカメラレンズが必要になります。この、受光面に垂直に光が照射されるように設計されたカメラレンズを「デジタル対応」と謳っているのです。


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【フィルムタイプのレンズでは充分な光が受けられないことも】
フィルム式のカメラ用のレンズでは、光が斜めに照射しても大きな問題にはならないケースが多いのですが、デジタルカメラでは撮像素子の受光面が窪んでいるため、垂直に光が照射されるような設計をする必要があるのです。(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』(神崎洋治・西井美鷹:著/日経BPソフトプレス刊)より引用)
   
■デジタルカメラには「デジタル対応」のレンズを
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   デジ一眼も高画素化が進んできています。いくら撮像素子が大きいといっても、高画素化すれば光が受ける面積は小さくなっていきます。(詳しくは「第3回 : 画素数と画質の関係」を参照してくださいね)したがって、できるだけ多くの光を効率良く撮像素子に届くようなレンズを使って撮影する必要がでてくるわけです。今までの資産を活用して、手軽で安価に撮影を楽しむのもいいのですが、デジタル対応のレンズもぜひ1本揃えてみてください。今お使いのレンズは、意外にデジ一眼の真価を引き出してはいないかもしれませんよ。

Text by 西井美鷹(デジカメWEB)

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