魅力あふれるデジ一眼が次々と登場しているわけですが、それに負けじとレンズの新製品達もわんさかリリースされています。あ、こんなのも出たから欲しい、あ、あんなのも使ってみたいなぁ・・・、なんて考えていると、気がついたら本体3台買えるような出費になっていて・・・、なんて話もよく聞いたりします。そんな中、フィルムタイプの一眼レフカメラと共用できる製品の他に、「デジタル対応」とか「デジタルカメラのために新設計した・・・」なんていうレンズを最近では見かけるようになりました。 さて、この「デジタル対応」といわれるレンズは、通常のレンズとはどこが違うのでしょうか。今回は、デジタル対応レンズに迫ってみましょう。
このページの冒頭に掲載したレンズは、オリンパスの「ズイコーデジタル (ZUIKO DIGITAL)14-45mm(28-90mm) F3.5-5.6」。「デジタル向けの交換レンズ」です。つまり、デジタルカメラ専用に設計された交換レンズ。フォーサーズシステム(Four Thirds System)規格を採用したことの他に、デジタルカメラ向けに設計した・・これって何だろう?!
レンズメーカーが「デジタル対応」と呼ぶ場合の根拠は、大きく分けて2種類あります。
まずは、1種類目のデジタルカメラにしか使えないという意味で「デジタル対応」を使っている場合について解説しましょう。 カメラレンズは、画角によって広角や望遠、そして標準といった分類がなされています。しかし、画角で使っている数値を使うと、望遠側がわずかな数値の変化しかなく、イメージが掴みにくくなってしまいます。そこで、通常は焦点距離と関連づけて、50mmの標準レンズ、400mmの望遠レンズ、といった具合で呼んでいるのです。ちなみに、300mm、400mm、500mmの公称対角線画角は、それぞれ8°10′、6°10′、5°となります。やはり少し分かりにくいですね。
普段から使っているので、何mmといわれるとだいたいの撮影範囲のイメージができてしまっている焦点距離ですが、実は同じ画角でも撮像素子のサイズによって焦点距離は変わってしまいます。例えば、35mmフィルムサイズの撮像面を基準にし、同じ画角のレンズを2分の1インチサイズの撮像素子で作ろうとしたときには、焦点距離を5.4分の1にしなければいけないのです。
つまり、35mmフィルムサイズで50mmの画角のレンズは、1/2インチ用なら9.3mmで設計しなければいけないのです。これがデジ一眼で問題になる、同じレンズを使っても、焦点距離が長くなってしまうというヤツです。下の図は、同じ画角で、1/2インチや1/4インチのCCDと35mmフィルムサイズではどれくらい焦点距離が違うのか、というのを模式図にしたものです。随分違うのが分かりますね。ちなみに、デジ一眼で多く用いられているAPS-Cサイズと呼ばれている撮像素子を使った場合には、1.5〜1.6倍の違いになります。
日本人は、インチという単位をあまり使わないので、上の図を見ても違和感はないと思われますが、インチとミリの両方に精通している方には、少し奇異に見えることでしょう。チョット本筋から外れてしまいますが、その理由を解説しておきましょう。
両方に精通している方が疑問に思うのは、「1/2インチって、35mmに対してこんなに短いんだっけ?!」ということだと思います。実は、CCDなどの撮像素子で使われるインチは、通常の1インチ=25.4mmではないのです。
例えば、CCDの1/2インチは12.7mmではなく、約8mm程度しかないのです。これは、撮像素子が、かつては真空管であったことが起因しています。例えば、1/2インチの真空管を使って撮像素子(撮像管)を作ったとしましょう。しかしこのとき、撮像素子は1/2インチ、すなわち12.7mmのサイズを確保することができないのです。なぜなら、真空管はガラスで作られていますから、この厚みを差し引いたエリアにしか撮像素子の部分を作ることができないからです。1/2インチサイズの真空管を使った場合には、だいたい8mmくらいのサイズの撮像素子ししか作れません。これが、CCDなどの撮像素子でも慣例的に使われているのです。
この焦点距離だと、レンズの直径も大きくなりがちで、今までではかなり高価なレンズしかない焦点距離でしたから、デジ一眼で広角を撮影するのはお金がかかる、という状況になってしまったのです。この状況がずっと続くようでは、デジ一眼は普及していきません。
そこで、カメラレンズメーカーは、小さくて安いレンズでも焦点距離が短くなるように、レンズの一番後から撮像素子までの距離を短くしたレンズを作りました。これで、普及価格帯でも28mm程度の広角レンズがデジ一眼でも楽しめるようになったのですが、このタイプのレンズには1つだけ欠点がありました。それは、あまりにも撮像素子側までレンズを長くしたためにカメラの中にまでレンズが入り込んでしまい、今までのフィルム式のカメラには装着できなくなってしまったのです。つまり、特別な機構を用いたデジ一眼しか使えない、という事態が発生したのです。これが、デジタルカメラにしか使えないという意味での「デジタル対応」と謳っているレンズなのです。
さて、ここでレンズの仕事を考えてみましょう。レンズというのは、多くの光を受光面に届けるのが仕事です。しかし、単純に1枚のレンズで集めたのでは、表示される映像は湾曲してしまいます。虫眼鏡で辞書などを見ているときに、端の方が歪んで見えることがあることからも、1枚のレンズだけでは綺麗な映像が映し出せないのは分かるでしょう。そこで、カメラのレンズというのは、映像が湾曲したりしないように、何枚もの凹レンズや凸レンズを組み合わせて構成されています。このことによって光は屈折して進んでくるのですが、フィルムタイプのカメラレンズの場合は、撮像面に垂直に光が入るように設計しなくても問題はありませんでした。斜めに光が入ってきても、撮像面の表面はフラットなので、照射される光が少なくなるといったことはないからです。ところが、CCDやCMOSの受光面は仕切りよりも窪んだ位置にあるわけですから、斜めに入ってきた場合には仕切りに遮られてしまうのです。このような状態では、偽色が発生してしまったり、光量が少ないために暗い画像になってしまいます。これを避けるためには、光が受光面に垂直に照射されるように設計したカメラレンズが必要になります。この、受光面に垂直に光が照射されるように設計されたカメラレンズを「デジタル対応」と謳っているのです。