夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第56回 川崎・四日市に匹敵!茨城・神栖工場夜景の行き方&撮り方入門
Photo : Takuya Iwasaki
TOPIX
今月の岩崎拓哉の夜景撮影講座は人気の工場夜景を取り上げました。川崎・四日市に迫る工場夜景だと評価する茨城・神栖エリアの工場夜景の撮り方を解説いたしました。意外と知られていない茨城・神栖エリアの撮り方をお楽しみください。 by 編集部 |
今月は川崎・四日市に迫る規模の工場夜景が楽しめるエリアでありながら、意外と知られていない茨城・神栖エリアを紹介します。製油所の近くから撮影できるポイントや展望環境が整備された公園まで幅広いシーンで工場夜景を堪能できます。車での移動が欠かせないエリアですが、工場夜景ファンなら一度は足を運びたいエリアです。
写真1 望遠レンズで化学工場を写す
[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:135mm / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
■茨城・神栖の特徴
茨城県神栖市は鹿島臨海工業地帯にあり、重工業が盛んなエリアで、約150社の企業と22,000人規模の従業員を有します。鹿島アントラーズのホームグランドであることからスポーツ施設が充実しており、ピーマンの作付面積が全国1位となっています。立地する工場としては、「製油:鹿島石油」「化学:三菱ケミカル、三井化学、信越化学」「飼料:昭和産業、中部飼料、JA東日本くみあい飼料」「発電:東京電力フュエル&パワー鹿島火力発電所」などを有します。
写真2 茨城県神栖市周辺の地図
神栖市は茨城県の最も南東に位置し、水戸や日立からも遠い。隣接する鹿嶋市は鹿島神宮が有名。(地図:CraftMap)
■茨城・神栖の夜景撮影のポイント
神栖市は川崎市や四日市市に比べて自治体がさほど工場夜景観光をPRしていないようで、現地の情報も少ないため、訪問前に撮影スポットを地図やインターネットで確認したり、明るい時間に下見をしておくと安心して撮影に挑めるでしょう。単独での訪問が不安であれば、グループで訪問するか、旅行会社が主催する写真撮影ツアー等に参加すると良いでしょう。
(1)車での移動が必須
神栖市には貨物駅しかなく、旅客駅が無いため、夜景スポットは車で巡るのが基本。
(2)秋~冬の撮影がベター
砂山都市緑地や港公園など工場から離れた場所から撮影するシーンが多いため、できれば秋~冬の空気が澄んでいるシーズンの訪問が望ましい。なお、港公園展望塔からの夜景を撮る場合は、トワイライトタイムに限るが、日没の早い11月下旬から12月中旬であればギリギリ撮影できる。
(3)望遠レンズ+中・大型三脚の持参が必要
工場の近くで撮れる場所もあるが、望遠レンズを使うシーンがほとんどなので、ブレに強い安定感ある三脚を持参しよう。
(4)真っ暗な場所が多いので安全面への配慮が必要
港公園は夜間でもさほど暗くないが、他の撮影スポットは真っ暗な場所が多いため、懐中電灯の持参が必須。駐車場が無い撮影スポットもあるため、車の停車場所には注意が必要。
■撮影スポット(1)鹿島石油 東門前付近
通称「シンデレラ城」とも呼ばれており、砂山都市緑地と並んで神栖を代表する工場夜景スポット。鹿島石油の東門前の反対側の歩道が撮影ポイント。間近で製油所のプラントを見渡せ、製油所独特の重圧感と美しさが感じられます。工場と距離は近いものの、広角レンズでの撮影より望遠レンズでの撮影がおすすめで、プラントの一部を切り取る構図の方が絵になります。なお、交通量はさほど多くありませんが、車の往来もあるので、標準レンズで車の光跡を一緒に写す構図もおすすめです。(地図)
[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:100mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]
[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:33mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]
■撮影スポット(2)砂山都市緑地
津波避難場所として整備された公園で、駐車場から数分歩くと眺望の優れた広場(待避所)があり、化学工場を中心とした工場の大パノラマが見渡せます。写真7の作例のように標準レンズで全景を写すのも良いですが、望遠レンズで工場の一部を切り取る方が臨場感のある作品になります。なお、工場とは少し距離が離れているため、天候の影響を受けやすく、できるだけ空気の澄んだ秋~冬に訪問するのがおすすめです。(地図)
[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:94mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]
[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:24mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]
■撮影スポット(3)県道117号線
県道沿いの歩道が撮影ポイントで近くに駐車場などは無いので、訪問には少々神経を使う場所です。鹿島石油の製油所を南方向から見渡せますが、製油所とは距離が離れているため、望遠レンズでの撮影が欠かせません。トラックの交通量もそれなりにあるため、標準レンズで車の光跡を一緒に写すのも良いでしょう。なお、周囲は街灯が無く真っ暗なので、安全面には最大限の注意が必要です。(地図)
[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:160mm / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:8秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]
■撮影スポット(4)港公園
工業地帯の一角にあり、8千本もの南国の樹木が植えられた自然豊かな公園。海岸沿いの遊歩道が撮影ポイントで、対岸に製鉄所や製油所を見渡せます。高度がないため、単調な写真になりがちですが、海面に反射した工場の灯りを入れるなど構図に工夫を持たせると良いでしょう。なお、公園の西側にはサイロが見渡せるポイントがあり、望遠レンズで画面一杯にサイロやパイプを写す構図も良いでしょう。(地図)
[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:70mm / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
[ ボディ:CANON EOS 6D MarkII / レンズ:CANON EF70-300mm F4-5.6 IS II USM / 焦点距離:108mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
■撮影スポット(5)港公園展望塔
全国でも貴重な工場を見渡せる展望施設ですが、17時までしか営業していないため、夜景が眺められる時期は11月末~12月中旬に限定されています。展望塔は屋内と屋外に別れ、屋内は窓ガラスがあるため、写り込み対策が必要です。屋上は強風に気をつける必要がありますが、360度の大パノラマの迫力に圧倒されます。限られた時間での撮影となりますが、先に暗くなる東方向(製油所や製鉄所が見える側)を撮影すると良いでしょう。なお、天気が良ければ西方向に富士山が見渡せることあります。(地図)
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:1.6秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:3.2秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]
■今月のお勧め撮影スポット「なさか夕日の郷公園」
神栖の工業地帯から夕日を望める場所は多くありませんが、なさか夕日の郷公園は潮来ICから車で10分ぐらいの場所にあり、展望台も整備されていて、天気が良ければ夕日が綺麗に見渡せます。作例は、超望遠レンズで鉄塔と夕日を大きく写しています。
なさか夕日の郷公園
営業時間:終日開放
所在地:茨城県神栖市下幡木4571-1
アクセス:東関東自動車道「潮来IC」より車で約10分
料金:無料
URL:なさか夕日の郷公園/ 茨城県神栖市