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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第45回 日本三大夜景で知られる長崎夜景の撮り方

Posted On 2018 8月 20
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

全国各地の夜景撮影スポットの撮り方を解説している本シリーズ。その8回目は「 長崎夜景 」を取り上げました。九州地方では 「 第39回 北九州夜景の撮り方 」に続き2度目のピックアップですね。それではご覧ください。 by 編集部

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8月に入り、7月の猛暑日続きに比べると、少し暑さが和らいだように思います。今月は、夜景写真家・岩崎 拓哉が夜景撮影を本格的に始めるきっかけとなった、長崎の夜景を紹介します。長崎を訪問してから今月で丸15年を迎えますが、当時に比べて長崎の夜景が全国で知られるようになり、観光地化が進みました。今回は、稲佐山を中心に穴場スポットも含め、5ヶ所ほど紹介します。

写真1 稲佐山の展望台の様子

稲佐山の展望台

稲佐山が観光客に知られるようになり、展望台にフットライトが設置されるなど、整備が進んでいる。外国人観光客や家族連れまで幅広い層で賑わう。

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■長崎県の特徴

長崎県は人口が約134万人で、人口の約半数は長崎市と佐世保市に在住している。県内には離島が多く、海岸線の長さも全国で1位・2位を争うほど。明治日本の産業革命遺産が世界遺産にも選定されており、中でも旧グラバー住宅は多くの観光客で賑わう。

写真2 長崎県の地図

長崎県の地図

長崎県は離島が多く、全部で971島もあるとされ、47都道府県の中で最も多い。

(地図素材:CraftMap

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■長崎の夜景撮影のポイント

長崎で夜景撮影を楽しむ上で、移動手段の確保が大きな課題となりそうだ。一般的な観光客は稲佐山へはロープウェイを使うことが多く、特に週末や連休日に訪問すると待ち時間が発生する可能性もあり、車で訪問した方が機材も運べて、移動がスムーズだろう。対岸の丘陵地帯からも夜景が見渡せるが、坂道が急な場所が多く、初心者ドライバーには運転が難しい。ある程度運転に慣れているならレンタカーでも回れるが、タクシーや路面電車もうまく活用すると良いだろう。

写真3 住宅街の中にある斜行エレベーター

IMG_5331

グラバースカイロードには斜行エレベータと垂直エレベーターがあり、住宅地の坂がいかに険しいかを思い知らされる。その分、眺めの素晴らしい場所が多い。

(1)温暖な気候のため年中撮影を楽しめる

長崎県は年間を通じて温暖な気候で、旅行の計画も立てやすい。年中撮影を楽しめるが、秋~冬にかけての空気が澄んだ時期の方が、キレイな写真が撮れる可能性が高い。また、女神大橋のライトアップは23時に完全に消灯するため、1日たっぷり撮影をするなら、日没が早い秋冬の方が適切だ。

(2)丘陵地帯の坂道が険しいため、タクシーも活用したい

稲佐山はロープウェイでアクセスでき、ベイエリアの夜景スポットは路面電車で手軽に訪問できるが、丘陵地帯にある他の夜景スポットは車でのアクセスがメインで、坂道が険しいため、運転に不慣れな人にはあまりおすすめできない。そのため、タクシーを貸し切って夜景スポットを巡るのも一案。

(3)広角から望遠まで様々なレンズが活かせる

稲佐山や鍋冠山から撮影する時は街全体を俯瞰するため、広角レンズの使用頻度が高いが、女神大橋やクルーズ船などを狙って写すには望遠レンズも欠かせない。

(4)クルーズ客船の入港日を狙いたい

中国大陸から訪れる団体観光客向けにクルーズが運航されており、クルーズ船が停泊する時間帯は、港が普段以上に煌びやかに輝く。「長崎港ホームページ」にクルーズ船の寄港スケジュールが掲載されているので、参考にしたい。

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■撮影スポット(1)稲佐山

長崎どころか九州で最も知られた夜景スポット。古くから日本三大夜景で知られており、展望台は観光客や家族連れでごったがえす。長崎港を中心に大パノラマが広がり、立体感のある光が視界一面に広がる。眺めているだけでもその美しさには圧倒されるが、地形に特徴があることから、撮影においても構図や焦点距離の変化を楽しめる。写真4の作例はトワイライトタイムに撮っているが、東向きとなるため、西向きのようなグラデーションは期待できない。1晩で鍋冠山など複数のスポットを巡るなら、レンタカーなどを活用して、先に鍋冠山を訪問するルートも良いだろう。(地図

写真4 広角レンズで長崎港の大パノラマを写す

稲佐山

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD / 焦点距離:21mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真5 望遠レンズで豪華クルーズ船を写す

クルーズ客船と長崎港

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:TAMRON SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD / 焦点距離:200mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:6秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(2)鍋冠山公園

稲佐山に次いで有名な夜景スポット。稲佐山の反対側にあり、長崎ベイエリアの街明かりが間近に見渡せる。女神大橋も見渡せ、展望台もリニューアルされており、雰囲気も良くなっているようだ。ベイエリアを望遠レンズで画面一杯に写すのも良いし、広角寄りの画角で稲佐山方面を写すのも絵になるだろう。(地図

写真6 稲佐山と長崎ベイエリアを見渡す

鍋冠山

[ ボディ:CANON EOS 5D MarkII / レンズ:EF16-35mm F2.8L II USM / 焦点距離:31mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(3)女神大橋 駐車場

女神大橋のベストビューポイント。歩道からも長崎港の夜景を見渡せるが、駐車場からは斜めに女神大橋が見渡せる。橋の下は車の通行量が多いため、光跡を入れるのも良い。「女神大橋のライトアップ」は23時まで段階的に減光していくので、21時までに撮影を終えるとベストだ。(地図

写真7 ライトアップされた女神大橋を写す

女神大橋

[ ボディ:CANON EOS 5D MarkII / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(4)長崎水辺の森公園

長崎港に面した公園で、夜景観賞から撮影まで幅広いシーンで楽しめる。稲佐山や女神大橋が見渡せるが、豪華クルーズ船の寄港タイミングを狙うと、クルーズ船と女神大橋を一緒に写せる。長時間露光で海面への光の反射をきれいに写し込みたい。(地図

写真8 豪華クルーズ船と女神大橋を写す

水辺の森公園

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF24-105mm F4L IS USM / 焦点距離:40mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:25秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(5)出雲近隣公園

観光スポットとして紹介されているが、公共交通機関ではアクセスが難しい場所のため、どちらかと言えば地元向けの夜景スポットと言える。浄水場の跡地に整備された公園で、丘陵地帯の住宅街の明かりが見渡せ、まるで光に包まれているかのような錯覚に陥る。公園は街灯で照らされて雰囲気も良く、さほど道が険しくないため、稲佐山や鍋冠山を訪問した後に立ち寄ってみても良いだろう。(地図

写真9 すり鉢状の街明かりを写す

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[ ボディ:CANON EOS 5D MarkII / レンズ:EF16-35mm F2.8L II USM / 焦点距離:35mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:13秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■今月のお勧め夜景スポット「弓張岳展望台」

最後に長崎市以外の夜景スポットを紹介。佐世保市にある弓張岳展望台は、稲佐山に続いて有名な夜景スポットであり、佐世保湾を中心に米軍基地や街明かりが見渡せる。広角レンズで佐世保の街明かりを写すのも良いが、手前の木々が影となってしまうため、標準~望遠レンズで街や道路の明かりを画面いっぱいに写す方が迫力が出せるだろう。

弓張岳展望台

開放時間:終日開放
所在地:長崎県佐世保市小野町(地図
アクセス:佐世保中央ICから車で約15分
料金:無料
URL:https://www.nightview.info/yakei/detail/yumiharidake/

写真10 米軍基地と佐世保道路を望遠レンズで写す

弓張岳展望台の夜景

湾曲する佐世保道路の形が美しく、暖色系の明かりが眩い米軍基地を約88mmの焦点距離で撮影した。佐世保道路を中心に写すなら120~150mm前後の焦点距離での撮影もおすすめしたい。

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。