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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第21回夜景写真のRAW現像・工場編 (1)

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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

前回は夜景写真のRAW現像概要についてご説明いたしましたが、今回より実践編に入ります。テーマとして取り上げたのは人気の工場夜景です。工場夜景写真のRAW現像のテクニックについてお届けいたします。 by 編集部

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前回はRAW現像の概要やソフトウェアの種類などを解説しましたが、今回から待ちに待ったパート2の実践編に入ります。今回は定番の工場夜景写真のRAW現像がテーマとなりますが、6月の梅雨入り前の悪天候下で撮影した作例を少しでも綺麗に見せるテクニックをお伝えします。

写真1 RAW現像後の鹿島石油のプラント

作例1(RAW現像後)

Photoshop CC(Camera RAW)のフィルター類を駆使して、なんとか見せられるレベルを実現。露出だけでなく、色味も補正している。

[ ボディ:CANON EOS 5D Mark2 / レンズ:SIGMA APO 70-200mm F2.8 EX DG OS HSM / 焦点距離:128.0mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:4秒 / 絞り数値:F8.0 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

写真2 RAW現像前の鹿島石油のプラント

作例2(RAW現像前)

多少の悪天候でも撮影できる工場夜景においても、キリが発生するレベルまで空が霞むと撮影は困難。JPEGの画像を見ても本来の美しい輝きが全然感じられない。WBは「白色蛍光灯」を選択しているが、色被りのような現象が発生していて色味も厳しい。

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■Photoshop(Camera RAW)の起動

実践編では全てPhotoshop CCのCamera RAWを使って進めていきます。RAWデータを開く際、Adobe BridgeだとRAWデータのサムネイルも表示されるため使い勝手が良いです。CanonのDPPなどからもRAWデータをPhotoshopに転送できますが、色味が変わってしまうことがあるため、基本的には利用していない。なお、Camera RAWやLightroomはソフトのバージョンが古くなると最新機種に対応できなくなるため、常に最新バージョンを使うと良いだろう。

写真3 Camera RAWの起動画面

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Adobe BridgeでRAWデータをダブルクリックすると自動的にCamera RAWが起動する。今回は画像の右側の「基本補正」や「効果」を使ってRAW現像を進めていく。

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■RAW現像のワークフロー

それでは具体的にRAW現像のワークフローを見ていきたい。今回の作例は段階フィルターなど部分的に補正するフィルターは使わず、画像全体を均一に補正していく。順番は必ずしも下記の通りである必要は無いが、悪天候下で撮影した夜景写真はまず霞みを取り除くところから始めると良いだろう。

【1】かすみの除去(+30)

かすみの除去 +30

300mも離れていない場所からの撮影だが、それでも工場が霞んでいるため、軽めにフィルターをかけた。かけ過ぎると写真が暗くなるので注意したい。

【2】明瞭度(+40)

明瞭度 + 40

明かりにメリハリをつけるために明瞭度を気持ち高めにかける。

【3】露光量(+0.30)

露光量 +0.30

かすみ除去をかけると全体が暗くなりやすいので、全体を明るく補正。

【4】白レベル(+40)

白レベル

最も白い部分をより強調し、工場の光を目立たせる。

【5】色かぶり補正(+45)

色かぶり補正 + 45

全体的に緑っぽく色かぶりしていたため、+25から右にスライドバーを動かし、+45に設定した。極端に上げすぎると紫っぽい色になるため要注意。

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■カバー写真のRAW現像ワークフロー

同じ日に別の場所で撮影した工場夜景写真もRAW現像してみた。工場と距離があるためか、霞み具合がより目立ってしまうため、「かすみ除去」を強めにかけている。「明瞭度」を上げすぎると明暗差が目立ってしまうので、少しずつプラス補正して様子を見たい。下記に設定したパラメーターを記載しているので参考にして欲しい。

写真4 RAW現像前

before

空が大きく写り込む構図で工場の明かりとも距離があるためか、霞み具合がとても目立ってしまった。

写真5 RAW現像後

After

明瞭度などを上げて最大限綺麗に見えるように補正した。「かすみの除去」を強めにかけている分、露光量も高めに調整した。少し不自然に感じるなら明瞭度や白レベルを少し低めに補正してもいいだろう。

【1】かすみの除去(+50)

【2】明瞭度(+35)

【3】露光量(+0.40)

【4】白レベル(+30)

【5】色かぶり補正(+30)

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■今月のお勧め夜景スポット「東和田(鹿島石油 東門前)」

鹿島石油の東門の向かいにある歩道が撮影スポット。白く輝いている塔が美しく、まるでテーマパークのお城のようにも見える。目の前にフェンスがあるため、フェンスを隠すには望遠レンズが必須。
また、あえて作例のように標準レンズの画角(作例は35mm)で光跡を入れるのも面白いだろう。撮影時は門の前には近寄らず、反対側の歩道など離れた場所から撮影するようにしたい。

東和田(鹿島石油 東門前)
開放時間:終日(公道)
所在地:茨城県神栖市東和田
アクセス:東関東自動車道「潮来IC」より車で約30分
料金:無料
URL:鹿島石油 東門前

写真6 光跡と製油プラント

鹿島石油 東門前

撮影する位置によって塔の並び方が変化し、構図が限られるロケーションでありながら奥が深い。作例では車の光跡を入れているが、通行する車両の種類や向きによって色の変化が楽しめる。


著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。