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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第5回:夜桜の撮り方(後編)

Posted On 2015 3月 26
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

先週末から週初めの気温上昇でほころび始めた桜ですが、寒の戻りで一休みですね。週末から来週にかけては再度気温が上昇する見込みですので、関東以西では来週には桜シーズンの本格到来でしょうか。ご好評いただいた前篇に引き続き後編をお楽しみください。 by 編集部

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前編」では夜桜撮影に必要な機材や基本的な撮影方法について解説しましたが、後編ではホワイトバランス・絞り・ISO感度などの設定による作例の変化など応用的な内容を中心に取り上げたいと思います。また、夜桜と夜景やライトアップを組み合わせた作例もご紹介したいと思います。

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■応用1:ホワイトバランスによる変化

夜桜の撮影時のホワイトバランス設定はこれが正しいという正解はありません。最近のデジタルカメラは「オート」であればたいてい見た目通りの綺麗な写真が撮れますが、せっかくなので代表的なホワイトバランスの色温度で作例を比較してみました。

写真1 夜桜名所の全体風景

ホワイトバランス(遠景)

千鳥ヶ淵で撮影。空はやや色がくすんでいて、当日はあまり綺麗な夜空ではなかった。「オート」が最も見た目に近い色に仕上がったが、「白色蛍光灯」の方が桜の花が綺麗に色づいて、写真としての雰囲気の良さは白色蛍光灯に軍配が上がる。

写真2 桜の木全体を撮影

ホワイトバランス(桜全体)

続いて千鳥ヶ淵で桜の木全体を撮影。広角ズームレンズを使用。見た目に近いのは「オート」「太陽光」だが、桜の花の色自体は「白色蛍光灯」が最も綺麗に見える。ケルビン(K)を手動で調整できるなら白色蛍光灯と太陽光の間の数値(例:4600K前後)にしても面白いかもしれない。

写真3 桜の花をアップで撮影

ホワイトバランス(アップ)

松田山(西平畑公園)で撮影した早咲桜(河津桜)。桜の花にピント合わせ、アップで撮影。今回の作例では「オート」と「白熱電球」が最も見た目と近くなった。ライティングに使われる照明の色合いによって、最適なホワイトバランスの設定が変わってくるように感じられる。松田山では暖色系の照明が使われていた。

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■応用2:絞り ( F値 ) による変化

続いて絞り値の変化を見ていきたい。50mmの単焦点レンズ(開放絞り値F1.4)で開放から2段ずつ絞っていき変化をチェックした。F1.4だと被写界深度が浅すぎて背景がボケ過ぎているようにも感じられる。F5.6以上だと背景が少々やかましく感じる。今回の作例ではF2.8がベストショットと言える。

写真4 絞り値(F1.4)

絞り値(F1.4)

写真5 絞り値(F2.8)

絞り値(F2.8)

写真6 絞り値(F5.6)

絞り値(F5.6)

写真7 絞り値(F11)

絞り値(F11)
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■応用3:ISO感度の設定 ( ブレの防止 ) による変化

一般的な夜景撮影であれば、三脚でカメラを固定しISO感度を低めに設定して長時間露光をするのが主流だが、夜桜の場合は風によって被写体が揺れてしまい、カメラの固定が無意味になってしまうことも。ブレを防ぐ方法は大きく2つ。1つはISO感度を高めに設定してシャッター速度を少しでも早くする方法。2つ目は絞りを開放寄りにして少しでもシャッター速度を短くする方法がある。ただし、絞りを変えると被写界深度が変わってしまうため、今回はISO感度を上げることでブレを回避した。

写真8 失敗例(ISO 200 / シャッター速度 4秒)

失敗例

写真9 成功例(ISO 1600 / シャッター速度 0.5秒)

成功例
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■応用4:夜桜+アルファ

最後に夜桜と俯瞰夜景やライトアップ組み合わせた作例を紹介します。夜桜名所は高台よりも平地にあることが多いのですが、夜景スポットとして有名な場所であれば夜桜と夜景を一緒に観賞できることも。また、東京タワーや東京スカイツリーなどのランドマーク付近で夜桜と一緒に撮影するのも面白いでしょう。

写真10 夜桜+俯瞰夜景

夜桜+俯瞰夜景

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:22.0mm / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:3.2秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:400 ]

夜桜と夜景を一度に楽しめる関東でも屈指の展望公園。撮影時は夜桜と夜景で適正な露出が大きく変わるため、夜景も綺麗に見えるように、露出は夜景の方を優先して合わせた。夜桜の方は色飛びしているが許容範囲内だろう。

写真11 夜桜+ライトアップ

夜桜+ライトアップ

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:20.0mm / 撮影モード:絞り優先AE / シャッター速度:1.6秒 / 絞り数値:F5.6 / ISO感度:400 ]

東京スカイツリータウンの付近にある「東武橋」で撮影。超広角レンズがあれば横構図でも東京スカイツリー全体が入るが、あえて縦構図で撮影。なるべく。桜の花と東京スカイツリーが重ならないような構図にした。

夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第4回:夜桜の撮り方(前編)は コチラ

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■今月のお勧め夜景スポット「千鳥ヶ淵」

皇居西側の千鳥ヶ淵と英国大使館に挟まれる場所にあり、緑道を歩きながら夜桜を楽しめる。週末は混雑するので平日の訪問がおすすめ。ライトアップは22時ごろまで。

千鳥ヶ淵

開催日:通年3月末~4月上旬頃まで(桜の開花状態により変動)

所在地:東京都千代田区九段南2丁目~三番町先

アクセス:東京メトロ東西線・半蔵門線・都営新宿線九段下駅から徒歩

料金:無料

URL:千代田のさくらまつり(ライトアップ情報)

写真12 千鳥ヶ淵

千鳥ヶ淵

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。