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萩原和幸の新製品レンズレビュー 
 レンズベビー Velvet56<スナップ編>

 


TOPIX

前回の萩原和幸レンズレビューでは、レンズベビー Velvet56 を使ったポートレートをお届けしました。今回は同じ Velvet56 を使ってスナップに挑戦する写真家・萩原和幸氏。Velvet56 のどこかノスタルジックでファンタジックなソフト効果が、スナップでどこまで使えるのか。今回も萩原氏の独自の切り口でレンズレビューをお届けします。お楽しみください。 by 編集部

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■ 「 クラシックポートレートレンズ 」はスナップでも使えるか?

写真1 Lensbaby Velvet56SE
このレンズには Velvet56 と Velvet56SE の2種類が用意されている。違いは鏡胴の仕上げ。今回はシルバーの Velvet56SE を使用した

このレンズには Velvet56 と Velvet56SE の2種類が用意されている。違いは鏡胴の仕上げ。今回はシルバーの Velvet56SE を使用した

今回は、前回に引き続きレンズベビー Velvet56 のレビューをお届けしよう。

前回はポートレートで写りの面白さや魅力についてお伝えしたが、今回はスナップ編。発売元のケンコー・トキナーでは「 クラシックポートレートレンズ 」と表現しているが、スナップに持ち出しても、その面白みは存分に楽しめるはずだ。

このレンズベビー Velvet56 の詳細については、前回のレビューをご覧いただきたいが、簡単にスペックを書いておこう。

写真2 レンズキャップ
キャップも鏡胴と同じ仕上げになっている

キャップも鏡胴と同じ仕上げになっている

Velvet56 は、マニュアルフォーカス専用レンズで、焦点距離は 56mm、開放値は F1.6。絞りは開放 f1.6 ~ 16 まででクリックは一絞りごと。電子接点は非搭載。最短撮影距離は 13cm、最大倍率は 1:2。フィルター径は 62mm。レンズ構成は3群4枚、絞り羽根は9枚だ。このレンズには Velvet56 と Velvet56SEの2種類が用意されている。対応マウントは Velvet56 がニコンF用、キヤノン EF 用、ペンタックスK用、ソニーA用、ソニーE用、フジX用、マイクロフォーサーズ用の7種類、Velvet56SE はキヤノン EF、ニコン F の2種類が用意されている。

写真3 EOS 5D MarkⅢ に装着
カメラは今回 Canon EOS 5D MarkⅢ を使った

カメラは今回 Canon EOS 5D MarkⅢ を使った

今回のスナップ撮影のカメラは、前回同様 Canon EOS 5D MarkⅢ にブラックの Velvet56 を装着した。フルサイズなので、焦点距離は 56mm。ほぼ標準レンズ画角での撮影だ。

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Lensbaby Velvet 56

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Lensbaby Velvet 56

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■ スナップ作例で実力を観てみよう

早速、実写をご覧にいれよう。Velvet56 は高次球面収差によるソフト効果の得られる描写が最大の魅力。絞りごとにソフト効果に違いが出るが、せっかくの F1.6 という明るいレンズなので、ついつい開放近くを使いたくなるが、実際に撮ると、光の具合によってはハレたように真っ白になってしまうこともある。また絞り f4 あたりから絞るごとにキレのあるシャープな描写へと性格を変えるが、同時に背景のボケも小さくなるので、背景整理やテーマの明確性の面から、いわゆる一般的な標準レンズでのスナップ撮影とは違う意識での撮影が悩ませるところでもあり、面白い面でもある。「 お〜っ、こんな感じに出るんだ 」という関心もあり、同じ被写体にレンズを向けても、変化の面白みが尽きない。

※ 注意
以降の写真で、実画像の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示には注意してください。

写真4 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 半  1/2000 秒 )+1.7EV 補正 ISO:200 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 半 1/2000 秒 )+1.7EV 補正 ISO:200 AWB RAW

写真5 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 半  1/8000 秒 )-1.0EV 補正 ISO:200 AWB RAW どこか幻想的な雰囲気を漂わせてくれる、独特のソフト感がたまらない。

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 半 1/8000 秒 )-1.0EV 補正 ISO:200 AWB RAW
 どこか幻想的な雰囲気を漂わせてくれる、独特のソフト感がたまらない。

写真6 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0  1/250 秒 )+0.7EV 補正 ISO:200 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 1/250 秒 )+0.7EV 補正 ISO:200 AWB RAW

写真7 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f1.6 半  1/1600 秒 )+1.3EV 補正 ISO:200 AWB RAW 周辺に行くに従いソフト感やボケ感が大きくなるので、開放近い絞り時にはこのような描写に。グルグルが気になると見るか、個性的な写りと見るか、それは撮影者次第だ。

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f1.6 半 1/1600 秒 )+1.3EV 補正 ISO:200 AWB RAW
 周辺に行くに従いソフト感やボケ感が大きくなるので、開放近い絞り時にはこのような描写に。グルグルが気になると見るか、個性的な写りと見るか、それは撮影者次第だ。

写真8 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0  1/3200 秒 )+0.7EV 補正 ISO:200 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 1/3200 秒 )+0.7EV 補正 ISO:200 AWB RAW

写真9 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0  1/250 秒 )+2.0EV 補正 ISO:200 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 1/250 秒 )+2.0EV 補正 ISO:200 AWB RAW

写真10 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f1.6  1/320 秒 )+2.0EV 補正 ISO:200 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f1.6 1/320 秒 )+2.0EV 補正 ISO:200 AWB RAW

写真11 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0  1/60 秒 )+2.0EV 補正 ISO:200 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 1/60 秒 )+2.0EV 補正 ISO:200 AWB RAW

写真12 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f1.6 半  1/40 秒 )+0.7EV 補正 ISO:1600 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f1.6 半 1/40 秒 )+0.7EV 補正 ISO:1600 AWB RAW

写真13 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f1.6 半  1/4000 秒 )-1.7EV 補正 ISO:1600 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f1.6 半 1/4000 秒 )-1.7EV 補正 ISO:1600 AWB RAW

写真14 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0  1/320 秒 )-1.3EV 補正 ISO:1600 AWB RAW 独特のにじみ感が私の大のお気に入り。これをデジタル処理で出そうにもなかなか難しい。水滴でも付いているような、湿気を含んだようなにじみだ。

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 1/320 秒 )-1.3EV 補正 ISO:1600 AWB RAW
 独特のにじみ感が私の大のお気に入り。これをデジタル処理で出そうにもなかなか難しい。水滴でも付いているような、湿気を含んだようなにじみだ。

写真15 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 半  1/320 秒 )-1.7EV 補正 ISO:1600 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 半 1/320 秒 )-1.7EV 補正 ISO:1600 AWB RAW

写真16 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り f2.8  1/2500 秒 ISO:200 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り f2.8 1/2500 秒 ISO:200 AWB RAW

写真17 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 半  1/250 秒 )+1.0EV 補正 ISO:1600 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.0 半 1/250 秒 )+1.0EV 補正 ISO:1600 AWB RAW

写真18 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.8  1/2000 秒 )+0.7EV 補正 ISO:800 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.8 1/2000 秒 )+0.7EV 補正 ISO:800 AWB RAW

写真19 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.8  1/8000 秒 ) ISO:800 WB:マニュアル  RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞り優先 AE( f2.8 1/8000 秒 ) ISO:800 WB:マニュアル  RAW

写真20 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ f2.0 半  1/160 秒 ISO:200 WB:電球 RAW レンズベビー Velvet56 は、最短撮影距離 13cm 最大倍率 1:2 での近接撮影が可能。被写体に近づけばそれだけボケも大きくなり、絞りに伴うソフト感もその分多く感じられる。どことなく妖艶なソフト感で、それが薔薇とマッチしている。

Canon EOS 5D MarkⅢ f2.0 半 1/160 秒 ISO:200 WB:電球 RAW
 レンズベビー Velvet56 は、最短撮影距離 13cm 最大倍率 1:2 での近接撮影が可能。被写体に近づけばそれだけボケも大きくなり、絞りに伴うソフト感もその分多く感じられる。どことなく妖艶なソフト感で、それが薔薇とマッチしている。

写真21 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ f2.0  1/160 秒 ISO:200 WB:電球 RAW 輝く水滴が、まるで宝石のように目映い。ベールに包まれたような、ソフトな描写が見るものを魅了する。

Canon EOS 5D MarkⅢ f2.0 1/160 秒 ISO:200 WB:電球 RAW
 輝く水滴が、まるで宝石のように目映い。ベールに包まれたような、ソフトな描写が見るものを魅了する。

写真22 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞りf1.6  1/160 秒 ISO:200 AWB RAW 絞りによるボケの違いは、好みが分かれるところ。ホワッとさせるか、キリッとした面も重視するか…。どちらの描写も面白い。

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞りf1.6 1/160 秒 ISO:200 AWB RAW
 絞りによるボケの違いは、好みが分かれるところ。ホワッとさせるか、キリッとした面も重視するか…。どちらの描写も面白い。

写真23 実画像
Canon EOS 5D MarkⅢ 絞りf2.8  1/80 秒 ISO:200 AWB RAW

Canon EOS 5D MarkⅢ 絞りf2.8 1/80 秒 ISO:200 AWB RAW

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■ 総評

前回も述べたが、ソフトは昨今全盛のデジタル処理によるソフト効果とはまるっきり異なり、レンズの中心にはしっかりと芯が残る描写だ。それでいて光学フィルターによるソフト系やフォギー系とも違う独特のもの。この強弱を被写体の雰囲気に対してどれだけコントロールするかが、このレンズの面白さだ。撮影では、直射日光のようにメリハリの利いた硬い光質のライティング下では、開放近くでは大きくハレてしまう。ソフト効果も大きいことを考えると、光がいくらか回った環境下での撮影をおススメしたい。また汎用のフードを装着しているとさらに安心だ。また、レンズの性格上、オートでは露出が安定しない( アンダーオーバーが良く変わる )ので、その点はご愛嬌ってことで撮影にはゆったりとした心持ちで臨むといいだろう。絞りによる描写の大きな性格の違い、13cm までの近接撮影可能など、大いに「 遊べる 」レンズだ。現在は現行マウントに対応しているので、お手持ちのカメラにほぼ装着できるだろう。遊びレンズとしては少々高価ではあるが、面白みはどのレンズにも変えられない。ボケファン、滲みファン、ソフトファン……一度使ってしまったらハマるに違いない! 私はすでに現場に必ず持っていくレンズになっている。少々トリッキーではあるが( 笑 )。

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著者について
■ 萩原 和幸 (はぎわら かずゆき) 写真家 ■   1969年 静岡県出身。東京工芸大学写真技術科卒業、静岡大学人文学部法学科卒業。 写真家・故今井友一氏師事。独立後、K&S Photograph∞を設立。 フリーランスのフォトグラファーとして雑誌での撮影・執筆や広告撮影などで活動中。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。静岡デザイン専門学校非常勤講師。