武石修のレンズレビュー
タムロン70-180mm F/2.8 Di III VXD(Model A056)ポートレート編
Model:西島ミライ Photo : Osamu Takeishi
TOPIX
今回の武石修のレンズレビューは、本年6月にスナップでレビューしたタムロン70-180mm F/2.8 Di III VXD(Model A056)を再度その描写をポートレートで試してみた。本レンズはソニーミラーレス一眼 Eマウント対応で、2020 年5月に発売が開始されている。モデルは元バスガイドで、グラビアを中心に、撮影会、広告等幅広く活動中の西島ミライさんにお願いした。それではお楽しみください。 by 編集部 |
Index
1.ポートレートに最適な望遠ズームレンズ
今回は、タムロンの大口径望遠ズームレンズ「 70-180mm F/2.8 Di III VXD(Model A056)」のポートレート編をお伝えする。スペックなどの詳細は前回のスナップ編にまとめてあるので、そちらをご覧いただきたい。
ポートレート撮影では、背景を大きくボカせることなどから「 70-200mm F2.8 」が定番レンズの1つとして昔からよく使われている。特に 100mm を超えるズーム域では、大きなボケによって被写体が背景から分離できるため、とても立体感のある写りになる。
一方 70-200mm F2.8 は高級レンズとしても知られ、カメラメーカー純正ともなればカメラ本体を上回るほどの価格のため、なかなか購入に踏み切れない人も多いだろう。その点、70-180mm F/2.8 Di III VXD は実勢価格が 10 万円台前半と比較的買いやすいのがポイントとなっている。
2.小型軽量で歩きながらのポートレートに最適
本レンズのもう1つの特徴は小型軽量という点で、望遠端を 180mm に抑えていることで、重量も1kgを切る 810 g ほどとなっている。今回は町中を歩きながら撮影したが、この重さだとストラップで長時間提げていても苦にならない。
今回もソニーα7 IIIと組み合わせて試写した。AF 速度自体はものすごく速いわけではないが、実用上は十分だと思う。フォーカスモード( AF-S、AF-A、AF-C、DMF、MF )はいずれも使用可能。今回は顔/瞳 優先 AF で主に撮影したが、合焦精度も問題なかった。
もちろんボディ内手ブレ補正も動作するので、感度を上げるなどすれば三脚を使わずとも夜景を写すことができる。
3.作品による評価
70-180mm F/2.8 Di III VXD(Model A056)をソニーα7 IIIに装着して、実写画像をチェックしていく。作例は全てα7 IIIのRAWファイルをAdobe Lightroom Classic(プロファイル補正は使用せず)で現像している。
ご注意
写真の 実画像 の文字をクリックすると、カメラで撮影した実画像が別タブで表示されます。ファイルサイズが大きいのでモバイル端末での表示にご注意ください。文中のサムネイル画像をクリックすると、リサイズされた画像がポップアップ表示されます。
中望遠域で少し離れた場所からのショット。こうしたシーンでも顔認識AFで快適に撮影できる。シャープすぎない描写のようで、ポートレートにはとりわけ適しているように感じた。
こちらも100mm強の使いやすいズーム域で狙ったショット。植物の後ボケが自然で好ましい。
敢えてごちゃごちゃした街の風景の中で、日中シンクロを用いて背景をアンダーにしてみた。絞り込んだ状態でも電線のボケがうるさい感じにはなっていない。
少し絞り込んで階段も含めて状況がわかるカットにした。石の質感がよく伝わってくる一方で、右側の植物のボケ感も自然なのがよい。
画面内に太陽が入る構図で逆光耐性をチェックした。特に目立ったゴーストやフレアは発生しておらず、また人物のコントラストも十分であった。独自のBBAR-G2 コーティングの力であろう。
自然光かつモノクロで階調を確認した。ハイライトからシャドウまで滑らかにつながっており、文句なしといったところ。
こうしたレンズは望遠端に目が行きがちだが、広角端の 70mm だと“望遠レンズ感”が少なく、見た目に近く撮れる。おおいに活用したい焦点距離だ。被写体に近づけば F2.8 でも前後を結構ぼかすことができる。
こちらも 70mm で全身を収めたもの。単焦点レンズほど大きなボケは期待できないが、F2.8 はプラスに考えれば、適度に周りの情報を含められる絞り値と言える。
緑のポールは真っ直ぐなものなので、望遠端ではやや糸巻き収差が出ているようだ。しかし、現像時にプロファイル補正を適用すれば解消する。
ポートレートの定番レンズである 85mm をイメージしてズーム域を設定した。もちろん単焦点ほどのボケは得られないが、背景が離れていればご覧のボケとなる。
絞り開放の広角端でアップを狙う。眼の血管まで写っているが、ガチガチのシャープなレンズではなく、少し柔らかさを持ったタイプなのがわかる。
広角端で絞り込み、壁画も写し込んでみた。壁の描写を見ると周辺までほぼ解像力が維持されていた。広角端ではわずかに樽型の歪曲収差が見られるが、画面であまり目立たない。
夜景をバックに、玉ボケをチェックしてみた。実用的な鑑賞サイズでは目立たないものの、年輪のような模様が見られる箇所もあった。
望遠端で最短撮影距離( 0.85m )から髪の毛にピントを合わせたところ、髪の毛1本1本がはっきりと描写できていた。焦点距離に対してだいぶスローシャッターだが、ボディ内手ブレ補正が働いてブレずに撮影できた。
4.総評
やはり本レンズの良さは F2.8 通しでありながら、この小ささと軽さを実現したことだろう。筆者にも経験があるが、1kg を優に超える 70-200mm F2.8 は持ち出すのが億劫になるほどで、それに比べればなんと扱いやすいことか。カメラが一眼レフからミラーレスの時代になり、ボディの小型化が進んだ。本レンズは、そんなミラーレスカメラにふさわしい望遠ズームレンズといえる。
サードパーティ品ではあるが、顔/瞳AF やボディ内手ブレ補正などカメラ側との連携も問題ない。三脚座が無いといった面はあるが、これから大口径望遠ズームを購入するなら、候補に含めたい1本だ。現状ではEマウント版しかないが、今後ほかのミラーレスカメラマウントにも展開されることを期待したい。
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
武石修
西島ミライ