武石修のレンズレビュー
LAOWA 11mm F4.5 FF RL スナップ編
Photo : Osamu Takeishi
TOPIX
今回の武石修のレンズレビューは LAOWA 11mm F4.5 FF RL をレビューいたします。本モデルは 2020 年 10 月より日本国内で販売が開始されたモデルです。今回はその超広角レンズをスナップ撮影でお楽しみください。 by 編集部 |
Index
1.手のひらに乗る超広角レンズ
今回は 2020 年 10 月に発売された超広角レンズ「 LAOWA 11mm F4.5 FF RL 」を紹介する。35mm フルサイズセンサー対応で、Mマウント、Lマウント、Zマウント、Eマウント、RFマウントが用意されている。実勢価格は税込 103,400 円前後( 2021 年 7月現在、当社調べ )。
LAOWA は中国 Venus Optics のブランドで、個性的な交換レンズを数多くリリースしており昨今人気を集めている。国内での扱いは、サイトロンジャパンとなっている。
本レンズは焦点距離が 11mm というかなりの超広角レンズだ。画角は 126 度もあるが魚眼レンズではないため、建築物などの直線を真っすぐに写すことができる。魚眼レンズは特殊な写り方をするので、それに比べると超広角とはいえ使いやすいと思う。
焦点距離 11mm のレンズはいくつかあるが、フルサイズ対応のミラーレス用で、非魚眼となると珍しい存在だ。ミラーレス専用にしているせいか、非常に小型軽量となっているのがいい。外寸は 63.5 × 58mm、重量は 254 g( いずれも Mマウント用 )とまさに手のひらに収まるサイズ感となっている。
2.歪曲収差が極めて少ない気持ちのいい描写”
外装は金属製で、ビルドクォリティは非常に良い。フォーカシングは MF のみ。指を掛けられるレバーも付いていて、ピント合わせはやりやすかった。ピントリングには適度なトルク感がある。
フードも金属製で組み込みとなっている。今回は試していないが、62mm のフィルターがフロントに装着できるようになっている。フロントキャップも金属製で、かぶせ式のものが付属している。
レンズ構成は 10 群 14 枚と、小さい鏡胴にけっこう詰め込まれている印象。非球面レンズ2枚とED(特殊低分散)レンズ3枚が使われているそうだ。絞り羽根枚数は5枚。絞り込むと絞り羽根数の倍となる 10 本の光条が現れ、美しい写真にすることが可能だ。
最短撮影距離は 19cm で、かなり被写体に近づける。超広角のマクロ的な撮影も容易にできる。
作例を見ても歪曲収差がほとんど無いため、撮影時に水平や垂直をしっかり確認して撮ることができる。PC で補正する必要もないので画角の損失も防げるということだ。歪曲収差の少なさは大きな評価ポイントだろう。
今回はEマウント版をソニーα7 IIIに装着して試用した。レンズは電気的に認識されないので、レンズ補正は全て OFF にしてある。なお、ボディ内手ブレ補正に関しては焦点距離「 11mm 」を選択することで、問題なく動作していた。
3.作品による評価
α7 III に装着して撮影した作品を見ていく。写真は RAW で記録し、Adobe Lightroom Classic で現像している。
ご注意
写真の 実画像 の文字をクリックすると、カメラで撮影した実画像が別タブで表示されます。ファイルサイズが大きいのでモバイル端末での表示にご注意ください。文中のサムネイル画像をクリックすると、リサイズされた画像がポップアップ表示されます。
この焦点距離になると、真上に向ければ周りの建物が映り込むほどの広い画角となる。この広さが本レンズの面白いところだ。
F11まで絞って解像感を見た。等倍で確認すると最周辺部では少し流れ気味のところもあるが、実用上問題のないレベルだと思う。
屋内も広々と撮影することができる。周辺減光はそれなりに大きめなので、必要に応じてPCでの補正を行いたい。
そのへんの植物に近づいて撮るだけでもダイナミックな写真になる。前側のボケは素直なタイプ。
こうした直線を生かした構図は、非魚眼タイプならではの写りだ。
水平に構えて撮れば、ビルなどもシフトレンズで撮ったかのようにパースがない状態で写せる。そして、超広角レンズはモノクロと相性がいいのでチャレンジしたいところ。
この写真も現像でモノクロに変換した。これだけ画角が広いと、肉眼では味わえないビジュアルを見ることができてとても新鮮だ。
最短撮影距離でのサンプル。かなり花に近づいているが、それでもこれだけ広く写し込める。大きなボケは期待できないが、後ボケもうるさいタイプではなかった。
超広角レンズといえば夜景も面白い。F22と最も絞り込んで長秒露出をしてみた。点光源にきれいな光芒が出ていて、夜の雰囲気を一層高めてくれた。
4.総評
今回の撮影で超広角レンズの面白さと難しさを改めて感じた次第だ。やはり 11mm というのは肉眼とは全然違う世界を見せてくれる魔法のような画角だった。それだけに、水平や垂直をきちんと取らないと、不自然な写真になってしまう。そうしたところに気をつければ、かなり有用なレンズと言えそうだ。
一眼レフ用では非魚眼の 11mm レンズはあるが、サイズ的に大きなものが多い。このレンズは単焦点の標準レンズより小さいくらいなので、スナップ撮影もしやすかった。旅行などでもぜひ活用してみたいレンズだと感じた。
ちょっと極端な焦点距離のレンズではあるが、他の人と一味違った写真を撮りたいのなら、こうしたレンズを検討してみるのも一興だと思う。
(以上)
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
武石修