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萩原史郎のハーフNDフィルター使いこなし
(冬編)



TOPIX

昨年6月に初執筆をいただいた萩原史郎氏のハーフNDフィルター使いこなしの2回目をお届けします。H&Yフィルター社との出会いをきっかけに、長年レンズフィルターを使用していなかった萩原氏が「 レンズフィルターの使い方 」を解説した前回の記事は大きな反響をいただきました。今回は満を持して、「 冬編 」をお届けいたします。 by 編集部


読者の皆様、こんにちは。前回の「萩原史郎のハーフNDフィルター使いこなし(春~初夏編)」から、だいぶ時間が経過してしまったが、今回は「冬編」をお届けする。

さて、本題である「冬編」の話に入るために、ハーフNDフィルターのことについて、簡単に触れておきたい。すでにハーフNDフィルターのことをご存知だったり、「春~初夏編」をお読みいただいたりした皆様には繰り返しになるかもしれない、「1.」のブロックは飛ばしていただいてもかまわない。また、復習のつもりでお読みいただくのも良いかと思う。

Index

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1.ハーフNDフィルターとは

ハーフNDフィルターとは、文字通り、半分だけND効果の役割を持ったフィルターのこと。私が愛用する「H&Yフィルター」の製品は、100 × 150mm という縦長の角形をしているが、その上半分にND効果があり、下半分は素通しのガラスになっている。ND部分とガラス部分の境界はグレーから透明のグラデーションとなっているが、そのグラデーションが滑らかなタイプを「ソフト(S)」、少し硬いタイプを「ハード(H)」と呼ぶ。

先ほどから「ND」と言っているが、これは「Neutral Density(ニュートラルデンシティー)」の頭文字をとった言葉で、「中立な濃度」を意味する。色に影響を与えないグレーの部分をNDと言うわけだ。

下の「写真1」 をみていただきたい。両者ともハーフNDフィルターだが、境界部分が滑らかな左が「ソフト(S)」で、硬い右が「ハード(H)」だ。上部のグレーの部分は光を弱める効果があり、下部の素通しの部分はそのままの光が通過する。ちなみに両者とも、上部の枠に「 0.9 」という数字が入っているが、これは「 ND8 」を意味する。海外表記で「 0.3 0.6 0.9 1.2 」とあるのは、日本表記では「 ND2 ND4 ND8 ND16 」のことなので覚えておきたい。

写真1

マグネットフレームに「 0.9 」とあるのは「 ND8 」であることを意味している。日本では ND 表記は2/4/8/16… となるが、海外では 0.3/0.6/0.9/1.2… と表記している。

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2.ハーフNDフィルターを使いたい場面

このような特徴を持っているハーフNDフィルターだが、いったいどんな場面で使ったらよいのだろうか。その代表的な場面は朝焼けや夕焼けの風景だ。こういった場面は、空部が明るく、地上部が暗い。こうした輝度差のある風景は、そのまま写すだけでは、人の目で見たようにはどうしても撮れない。空の明るさに合わせて露出を決めれば地上部は暗く写り、逆に地上部の明るさに露出を合わせてしまうと、空は白っぽくなり、焼けたオレンジ色は見る影もなくなる。こんなときにハーフNDフィルターを使うと、極端な明るさの差がなくなり、空の色も地上部の色も程よく写すことができる。その例が下の「写真2」と「写真3」だ。

「写真2」は地上部に露出が合っているため、輝度差のある空部は白く飛び気味だ。一方、「写真3」では「 100 x 150mm K-SeriesハードGND8 」を使うことによって空の明るさが抑えられたため、眼で見た様子に近い結果を得ることができている。このときハーフNDフィルターの境界部分は、風景の明るい部分と暗い部分の境目あたりに重なるように合わせている。

写真2

フィルターなし

写真3

100x150mm K-SeriesハードGND8使用

写真4

状況写真

冬を迎えた志賀高原。この日は空気が澄み切って遠望が楽しめた。遠くに雪をいただいた山々が見え、手前には志賀高原の森がある。光は遠くの山には当たっているが、手前の森にはまだ射していない状況なので、輝度差は極めて高い状況だ。そこでハードタイプのハーフNDフィルターを選ぶことにした。被写体の明暗の境界がはっきりしているからだ。ハーフNDフィルターを使って撮影した写真03は、明るい山と手前の森の見え方が肉眼で見たそれと近くなり、よい結果が得られている。

デジタルカメラは、背面の大型ディスプレイに表示される画像を見ながら境界部分の調整ができるというメリットがあるので、これをおおいに利用して、境界部分が不自然にならないようにしたい。

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3.角形フィルターのセッティングについて

H&Yフィルターには、角形フィルターを効果的に使うための「セット」が販売されている。例えば「 K-Series Landscape Set Ⅱ 」には以下が含まれている。

・100mm K-Series フィルターホルダー
・100mm K-Series ドロップインCPLフィルター
・アダプターリング( 67㎜、72㎜、77㎜、82mm )
・100 x 150mm K-SeriesソフトGND8 マグネットフレーム付き
・100mm K-Series ドロップイン CPL/ND8フィルター
・K-Series ドロップインND1000
・100mm K-Series用フィルターバッグ

初めてハーフNDフィルターを使ってみようと思っているのなら、こうしたセットを買い求め、そのうえで必要な製品を買い足すという方法が良いのではないかと思う。

さて、その角形フィルターのセッティングや操作の流れだが、これは前回の「春~初夏編」に、操作中の写真と共に詳しく書いているので、ぜひそちらをご覧いただきたい。

また、Youtube に公開されている義妹・萩原れいこの動画は操作の流れがわかりやすいので、ぜひ参考にしてほしい。

とは言え、改めて強調しておきたいことがある。H&Yフィルターの角形フィルターシステムは、強力なマグネットを採用することで、着脱のしやすさはもちろん、フィルターを上下させて境界部分を調整することの簡単さなど、次元の違う使い心地を達成している。また強度の高いゴリラガラスを採用することで傷のつきにくさ、破損のリスクの回避なども実現している。一度揃えてしまえば、多くのレンズに使いまわせるというコストパフォーマンスの恩恵もある。ハーフNDフィルターの導入を検討しているなら、最有力候補の一角と言って良いとおもう。

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4.冬の実例(ハーフNDフィルター編)

■ 日陰で成長する氷
氷は太陽の光によって融けてしまうが、日影の氷は融けにくく、日中でも撮影しやすい被写体だ。しかし、ただ氷だけをアップにしても場所柄がわからず、風景写真としてはやや物足りない。そこでどんな場所であるかがわかる背景を入れた構図がこの写真。しかし背景には光が燦燦と降り注いでいたため、ストレートに撮影すると「写真5」のように背景はオーバー露出になる。そこで「 ソフトGND8 」と「 ハードGND8 」を使ってみた。「 ソフトGND8 」を使った「写真6」は自然な雰囲気に、「 ハードGND8 」を使った「写真7」は空がより濃く表現されている。

写真5

写真6

写真7

比較画像


効果をわかりやすくするために、写真5、6、7を並べたのが上記「比較画像」だ。比べてみて欲しい。

写真8

状況写真

■ デリケートな明暗調整
池の奥だけ凍っていない部分があり、光の加減でとても魅力的に見えた場面。ただ、そのまま撮影をすると、「写真9」のように、明るい氷面と暗い水面の輝度差が高く、水面や背景が暗く落ち込んでしまう。インパクトの強い表現ではあるが、「 ソフトGND8 」を使った「写真10」 は、青い水面の様子が伺えて、冬の色を伝える表現になっている。

写真9

写真 10

■ ハーフNDフィルターの逆付け

ハーフNDフィルターの、一風変わった使い方をご紹介しよう。まずは「写真11」をご覧いただこう。滝壺に近い断崖でカモシカが採餌している場面を捉えた写真だが、滝壺には光が届いていないために暗く、断崖は光が射して明るい。輝度差があるため、断崖部分に残った雪が白飛び気味である。このとき、ハーフNDフィルターを上下逆さにして取り付けることで、雪の白飛びを抑え、暗くなった滝壺を明るく描写できた。ハーフNDフィルターは必ずしも、ND部分を上にして使わなければならないという決まりはないので、場面に合わせて時に上下を逆さにして使ってみて欲しい。
例えば渓流では、ハーフNDフィルターの出番がある。画面下部に渓流、上部に森が見えるシーンは珍しくない。晴れた日などは眩しいほどの水の明るさを調整する意味でハーフNDフィルターが使える。

写真 11

写真 12

写真 13

状況写真

奥日光の華厳の滝を撮影しているとき、眼下にカモシを発見。険しい断崖で給餌する姿と滝とを組み合わせる構図を作ることができたが、輝度差が高く雪が白飛び気味だった。そこで「 ソフトGND8 」を逆さに取り付けて撮影することによって、問題を解決した。

■ 冬空に美しいグラデーションを描く
冬の雲1つない夕暮れ時は、空に赤い色が付きにくい。そんなとき、ハーフNDフィルターを使うと美しい濃紺のグラデーションを演出することができる。

写真 14

フィルターなし

写真 15

ソフトGND8

写真 16

ソフトGND8+ハードGND8

さて、こちらも「比較画像」を作成したので比べて欲しい。

比較画像

左から、写真14、15、16

写真 17

状況写真

「写真14」はそのまま撮影したものだが、冬らしさは感じるが物足りない。「写真15」は「 ソフトGND8 」を使っている。境界部分を地上部との境に重ねるのではなく、空の半分程度の位置におくと、このようなグラデーションの美しい空を演出することができる。「写真16」は「 ソフトGND8 」と「 ハードGND8 」を二枚重ねているが、印象の強いグラデーションを描くことができている。

■ 長秒露光のときは「 ドロップインND1000 」は便利
渓流でハーフNDフィルターを使いながら撮影をしているとき、長秒露光をしたいと思うことがあるはず。しかも思い切りスローシャッターにして…。そんな時に便利なアイテムが「 ドロップインND1000 」だ。フィルターホルダーの枠に挿入するだけの簡単な操作で、ハーフNDフィルターの効果とともに 10 絞り分に相当する減光効果が得られる。

写真 18

フィルターなし

写真 19

ドロップインND1000

写真 20

使用例

この写真は、ハーフNDフィルターは使用しておらず「 ドロップインND1000 」のみ。H&Yフィルターの角形システムを使っているなら、あえてワンサイズの丸形ND1000フィルターを購入せずとも、「 ドロップインND1000 」一枚だけあれば、多くのレンズに併用できる強みがある。

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5.REVORING Vari ND3-ND1000 CPL 67-82mm

ここまでH&Yフィルターの角形フィルターシステムについて、あれこれ書いてきた。このシステムの優れた点については、十分に伝わったのではないかと思うが、少しだけ心に留めておきたいことは、少々システムが嵩張るという点だ。そこでCPLフィルターとNDフィルターだけいいから楽しみたいという方には、実はとっておきの優れたアイテムがある。それが「 REVORING Vari ND3-ND1000 CPL 67-82mm 」だ。

これはたった1つの丸型フィルターに、CPLフィルターと、ND3からND1000までの可変式NDフィルターが組み合わされているもの。もちろんPL効果とND効果は併用できるうえ、67㎜、72㎜、77mm、82㎜ のフィルター枠に装着できる「 REVORING 」機能付きである。つまり「 ステップリング+CPLフィルター+可変式NDフィルター 」という三位一体式の製品なのだ。これ1つを持っているだけで、いったいどれほどの丸型フィルターの節約につながるだろう。

REVORING Vari ND3-ND1000 CPL 67-82mm

※画像クリックでH&Yフィルター社の製品ページに遷移します

▼使い方は以下の手順

  1. お使いのレンズに装着。フィルター径は67㎜から82㎜まで
  2. 内側のレバーを回してCPL効果を決定
  3. 内側のレバーを指で固定し、外側の可変式NDを回してND効果を決定
写真 21

可変式NDフィルターの外周には「 MIN・2・3・4・5・MAX 」と刻まれているが、それぞれの意味するところは以下の通り。
・MIN ⇒ ND3 1絞り分
・2 ⇒ ND4 2絞り分
・3 ⇒ ND8 3絞り分
・4 ⇒ ND16 4絞り分
・5 ⇒ ND32 5絞り分
・MAX ⇒ ND1000 10絞り分

PLフィルター枠の外周に小さな三角マークが刻まれているが、そこに数字を合わせると、上に示した濃度が得られる仕組み。「 5 」から「 MAX 」の間は少し動かすだけでも濃度が極端に変化するので、デリケートな操作が必要だ。文字を目安に操作しても良いし、そんなことには関係なく、レバーを回して使いたいシャッタースピードになったところで撮影してもよい。つまり表現は結果がすべてなので文字に振り回されなくてもよいのだが、目安になるので知っていることは大切だ。

写真 22

MIN 1/50秒

写真 23

2 1/30秒

写真 24

3 1/15秒

写真 25

4 1/10秒

写真 26

5 1/5秒

写真 27

5とMAXの間 1秒

写真 28

MAX 4秒

アニメーション1

「写真22」から「写真28」は、「 REVORING Vari ND3-ND1000 CPL 67-82mm 」のND効果がどのように変化するか試したものだ。参考までに見てほしい。「アニメーション1」は「写真22」~「写真28」をスライドショーにして作成した。クリックしてみて欲しい。

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6.100mm K-Seriesヒーティングホルダー

星景撮影や早朝撮影などでフィルターやレンズの結露、凍結の発生を抑制する製品が登場している。「写真29」や「写真30」のように、ホルダーMarkⅡ にヒーティング機構を搭載して対策を施しているため、約マイナス 10 度程度なら夜露・霜・結露・凍結がないことを保障するとのこと。ヒーティングホルダーは、モバイルバッテリーで駆動するので、別に用意する必要がある。モバイルバッテリーは、三脚に固定する同社のメッシュエプロンラックにのせておけば、断線の心配などがなくなる。

当然、ドロップインフィルターの併用も可能であり、角形フィルターも2枚までなら推奨している。ちなみにヒーティング機構がピークに達するまでには約1時間ほど必要なので、早めの準備をする必要がある。

写真 29

装着時背面状況

写真 30

正面

100mm K-Seriesヒーティングホルダー


※画像クリックでH&Yフィルター社の製品ページに遷移します

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7.まとめ

H&Yフィルターの角形システムを使い始めて約1年と少しが経過した。結論を言うと、それまで毛嫌いしていた( 言い過ぎか )ハーフNDフィルターが、今では手放せなくなっている。

・理由その1
結果が伴うこと。EVF や背面モニターを確認しながら操作し、フィルターが噛み合い、風景のハイライトもシャドーも美しく納まったときの心地よさはやみつきになる。光が難しい場面で「 こう撮りたかった 」という思いが実現できることは何より素晴らしい。

・理由その2
最初は使い慣れなかったシステムを、パッパッと使えるようになると、操作そのものが楽しくなる。仮に最良の結果になり得なくても、操作が楽しいという、ある意味本末転倒な出来事に心惹かれてしまった。

・理由その3
マグネット式だからこその操作のしやすさが快感。撮影現場でスムーズに操作をしていると、「 いいですね、楽そうで! 」「 私も使ってみたい ♪」などと言われると、まるで自分が作った作品のような快感を覚える。体験してみませんか(笑)。

・理由その4
一年も毎回のように使えば、ガラス製品はどうしても傷がついたり、割れたりすることがあるが、使用頻度の高いソフトGND8 もハードGND8 も、どちらも傷一つない。もちろん大事に扱っているからこそだが、ゴリラガラスの有効性を実感しないわけにはいかない。

・理由その5
撮影段階で輝度差を抑制しているため、RAW現像時の調整幅が少なくて済む。暗部を強く持ち上げるような調整を行うとノイズが出るが、それが少ないので仕上がりも美しい。

道具は、使ってみないと本当の価値はわからない。前回の(春~初夏編)に書いたことだが、それまで私はハーフNDフィルターを使ってこなかった。理由は手持ち撮影が中心なので、そもそもハーフNDフィルターが使いにくかったり、RAW現像派だから必要ないと思っていたこと、そして使いこなせないと端から決めつけていたことがあるが、使ってみたら、その価値や使いやすさ、道具としての優秀性に気づくこととなった。

もしも私のような思いを抱えているのなら、ぜひチャレンジしてほしいと思う間違いのない製品である。

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著者について
萩原 史郎(はぎはら・しろう) 1959年山梨県甲府市生まれ。株式会社新日本企画で写真誌「風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後は風景写真家に転向し、写真誌寄稿、コンテスト審査員、写真教室講師、講演会講師、写真クラブ例会指導など幅広く行う。著書は「四季の風景撮影」シリーズ8冊(日本カメラ社)、「風景写真の便利帳」(玄光社)など多数。新刊は「現代風景写真表現」(玄光社)。写真集には「色 X 旬」(風景写真出版)がある。写真展は、2015年「色 X 情」、2019年「色 X 旬」、2020年「志賀高原」開催。 日本風景写真家協会(JSPA)副会長 日本風景写真協会(JNP)指導会員 日本学生写真部連盟(FUPC)指導会員 OMデジタルソリューションズ・オリンパスカレッジ講師 富士フイルム・アカデミーX講師