鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第26回 NiSi Natural CPLフィルター(円型PL)で撮影する鉄道写真
Photo : Masato Endoh
TOPIX
鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 26 回目は CPLフィルターを使用した鉄道写真について解説いたします。世界的なレンズフィルターメーカー Nisi 社に協力いただきました。さまざまな鉄道撮影シーンで活用できる CPLフィルターを使用しての鉄道撮影の幅を広げてみるのはいかがでしょうか?ぜひ、撮影の参考としてください。 by 編集部 |
みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。今回も前回に引き続き、世界的に有名な NiSi のフィルターを使って鉄道を撮影してゆきます。前回の【 第 25 回 Nisi GNDフィルター(角形ハーフN D)で撮影する鉄道写真 】は角形フィルターでした。今回は鉄道写真愛好家にも馴染みが深い円形フィルターです。こちらの Natural CPLフィルターは高い平面性でレンズの解像力を損なわない設計のフィルターです。昔買ったフィルターをお持ちの方は買い替えてみてはいかがでしょうか。ぜひ最後までご覧ください。
Index
1.Natural CPL(PL)フィルターとは 2.Natural CPLフィルターと鉄道写真 3.鉄道写真で使いたい場面 4.青空を強調したいとき 5.水面を強調したいとき 6.紅葉や新緑を強調したいとき 7.次回予告 |
1.Natural CPL(PL)フィルターとは
今回は Natural CPLフィルターを使った鉄道写真を紹介してゆきます。鉄道写真をメイン撮影にされている方でも、レンズ保護フィルター並みに有名なのが PLフィルターですね。
せっかくの機会ですので、まずは通常の PLフィルターの説明から始めます。屋外のフィールド撮影を主としている方であれば、一度は聞いたことのあるフィルター名かと思います。フィルターの略名である P L
は ” Polarized ” ” Light ” です。それぞれ” 偏った ” と ” 光 ” です。組み合わせて「偏光」という意味です。
「 偏光 」とは、光の波長としての性質を利用し、特定の光だけを通す機能のことです。一般的なレンズは全ての光を通しますが、偏光フィルターを装着することで余計な反射光を抑えられます。ジャンルは違いますが、偏光サングラスも同機能が備わっています。偏光サングラスを掛けると視界が向上します。見たいものが、くっきりはっきりと見えるのです。
その原理は P Lフィルターと同じく、余計な反射光を抑えているからです。車の運転がしやすくなったり、水面の反射をカットして水中が見えるなどの効果が生まれます。こういった偏光機能を備えた写真アイテムが通常の PLフィルターです。
2.Natural CPLフィルターと鉄道写真
Natural CPLフィルターは通常の PLフィルターの機能を格段に向上させたアイテムです。新開発の偏光膜によって PLフィルターの長年の課題だった色被り問題を改善しました。それにより優れたカラーバランスを保つことが可能となりました。可視域においては平均 46% の高い透過光量を実現しています。
フィルターの構造はレンズが二枚です。偏光レンズを組み合わせることで、カットできる波長をコントロール出来るように設計されています。例えば晴天空の青さを強調したい時、このフィルターが大活躍します。とくに晴天なのに、空が白っぽいなと感じたときには必ず使用して欲しいほどです。なぜならば、空が白っぽく見えるのは、空気中のチリ・ホコリが引き起こす光の乱反射が原因だからです。撮影時は先端部のレンズを左右に回して、ベストな位置でシャッターを押しましょう。空のコントラストは強調されて、自分が理想とする情景が写し出されます。フィルターはお手軽な撮影アイテムなので、常にカメラバックに入れておいても問題ありません。
前回と同じように、本番とそれに近いタイミングで撮影をしました。今回は本番を私好みの色にしました。列車がいない方の写真はフィルターを反対側へ回して、逆側の効果を最大限狙ったものです。Natural CPLフィルターは撮影者の好み次第で、ここまで色をコントロールできるのです。その効果が生み出す差は一目瞭然です。
先ほども説明したように、Natural CPLフィルターは先端のレンズを回転させて濃度を操作できます。自分の好みに合わせて撮影を楽しみましょう。こちらも前回の Soft Nano IR GND8 と同じく、撮影完結主義の方にオススメです。実際の光をコントロールするため、緻密なグラデーションも簡単に仕上がります。複雑な画像処理が難しいと感じる方には、マストアイテムですね。
また Natural CPLフィルターの特長は他にもあります。こちらのフィルターは、現代の超高画質機材を前提として設計されています。そのために素材は高透過率のガラスを使い、特殊研磨によって高い平面率を実現しています。レンズの解像力を損なわない安心の設計です。さらに新開発の偏光膜によって、PLフィルター特有の黄色味がかった色被りも改善され良好なカラーバランスを保っています。またコーティングも優れており、撥水性能がありながら、超低反射を実現している。とのことです。フィルター性能の詳細仕様は NiSi 社の日本語ウェブページ をご覧ください。
3.鉄道写真で使いたい場面
フィルターの性能をご理解いただいたところで、実際の撮影をしてみましょう。鉄道で狙いたい場面は、反射光が写る情景です。具体的な被写体でいえば、晴天の青空」がPLフィルターとして気になるポイントです。他にも、海や川などの「水面反射」「「新緑や紅葉」「窓の反射」などは大きな効果が現れる被写体です。条件さえ調えば、オールシーズン使える、素晴らしいアイテムです。それでは場面別に撮影した写真で効果を体感してみましょう。
4.青空を強調したいとき
晴天の青色は、一番想像しやすい定番の被写体です。先に説明したとおり空が白っぽいと感じたときに効果があります。条件さえ整えば冬の青空のような、深い青色が再現されます。撮影のアングルでいえば、広角でローアングル撮影した時などは、まさにフィルター向けの写真です。撮影でバッチリ決めたデータをさらにレタッチで仕上げる、上級者もいらっしゃるそうです。ご自身のスタイルに合わせて研究されてはいかがでしょうか。
5.水面を強調したいとき
次に狙いやすい場面は、水面反射が写る場面です。天気の良い日はとくに効果抜群です。海や湖であれば、波に反射する太陽のキラキラを強調することも、抑えることも指先一つで可能です。また海の青さも空と同様にコントロールが可能です。夏の賑やかな海の雰囲気や、冬の凛々しい姿も青色の濃度で全く印象が違います。まるでマジックのように様変わりです。創造力を刺激する、楽しいアイテムです。
同じ場所での撮影ですが、時間が経つと印象も変わります。先ほどは輝くような光景をイメージしましたが、今度は落ち着いた雰囲気を狙いました。夕方は刻々と光が変わるので、しっかりとイメージを固めてフィルターを操作したい場面です。
6.紅葉や新緑を強調したいとき
最後にご紹介したい場面は「新緑や紅葉」です。どちらの被写体も鉄道風景写真には、欠かせない存在です。しかしながら綺麗に仕上げることが難しい被写体です。私もどちらの被写体も好きなので、昔からPLフィルターを好んで使っています。色のりが良くなるため、この季節にはマストアイテムといって良いほどです。
白みがかった遠景の紅葉もフィルター効果によって色のり良く写りました。紅葉だけでなく、川の水面反射にも効果が現れました。季節感を強調したい時には最高のアイテムです。とくに晴天下では効果絶大です。Natural CPLフィルターの場合はレンズの口径が合えば、いろいろな焦点距離のレンズで効果を発揮します。自分の目的に合わせてフィルターを使いこなしましょう。
それでは曇りの日は全く効果がないのか、といえばそうでもありません。劇的ではありませんが、線路の道床部分や葉っぱは変化しています。そのようなささやかな違いも作品づくりでは大切な要素となるでしょう。
いかがでしたでしょうか。今回は鉄道写真にもバッチリ使えるNatural CPLフィルターを使用した鉄道写真の回でした。お付き合いいただき、ありがとうございました。
7.次回予告
いかがでしたでしょうか。
次回は同じくNiSiブランドの ND VARIOフィルターを使った鉄道写真についてご紹介します。ぜひご期待くださいませ。
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