鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座第11回 フレームアウトの撮り方
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鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の11 回目はフレームアウトの撮り方解説です。鉄道に限らずフレームアウトのテクニックは活用する場面が多々あるのではないでしょうか。今回も豊富な作例を交えて解説しております。迫力あるフレームアウト写真の撮り方をご覧ください。 by 編集部 |
みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。いつも鉄道写真の撮り方をご覧いただき、ありがとうございます。今回はフレームアウトと呼ばれる撮影技法を紹介いたします。動体撮影ではポピュラーな撮影方法の一つです。ぜひ撮り方を理解して、実践してください。
1.“ 迫力美 ” と “ 好奇心 ” のフレームアウト
鉄道写真の基本は、列車全体をフレームインさせることです。その点において、フレームアウトはその真逆を行く世界です。いわば、品行方正の枠に収まることのない魅力に溢れています。まさに”好きなものを好きなように撮る”世界です。
フレームアウトは迫力を追求する一方で、被写体の特徴をより強い印象で表現できます。撮り方のルールがある編成写真や鉄道風景写真とは異なった、正解がない表現手法です。見る人によって好みがはっきりと分かれる点もこの撮影方法の特徴です。過去から現在に至るまで、写真展や雑誌のグラフなどでも数多く用いられている撮影方法です。写真にオリジナティーを追求したい方へオススメの撮影方法です。
2.安全な場所で、超望遠がオススメ
次にこの撮影方法に向いている機材や撮影の設定をご紹介します。
フレームアウトの基本としては、被写体を画面一杯に写し出すことが基本となります。したがって、レンズも望遠や” 超 ” 望遠までの範囲が最も扱いやすいのです。特に列車を正面がちから捉える際には、線路がカーブしている場所を選び超望遠で撮影をしましょう。あまり多いケースではないのですが、列車を正面から撮影した写真は、” 接近しすぎた “ ” 危険な場所 ” で撮影したと間違われることが稀にあるようです。35 ミリ判のカメラで 300 mm 相当のレンズを使用すれば、十分に迫力のある写真を安全に撮影できます。さらに 400 mm ~ 600 mm の焦点距離レンズをお持ちであれば、自由自在に撮影が可能です。
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超望遠レンズを用いた撮影では迫力を追求しやすい反面、思わぬ落とし穴もあります。状況にもよりますが、夏の屋外など高温な場所は陽炎が発生します。線路の道床が高温となるのが原因です。特に地面に近い高さで陽炎が発生します。結果として写真が鮮明に写らないときもあります。その場合、できる限り地面から離れてハイアングルから撮るよう心がけましょう。
フレームアウトでの撮影設定は、やはり鉄道写真の基本である高速シャッターでの設定がオススメです。撮影 ISO 設定は、500から800程度の高めでも結構ですので、いつも以上にブレには気をつけたいところです。具体的には 1/1250秒から 1/2000 秒程度の範囲で撮影すると良い結果が得られるはずです。ますは高速シャッターで撮影をしてみましょう。オリジナリティーを追求するならば、前回紹介した「 流し撮り 」と「 フレームアウト 」を掛け合わすことも面白いかもしれません。正解のない世界ですので、いろいろと試してみましょう!
3.オリジナル構図の作りかた
続いてフレームアウト撮影に関する構図の作りかたです。前談でフレームアウトに正解はないと書きましたが、やはり見ていて鬼気迫る緊張感あふれるような写真を撮ってみたいものです。かといって、いきなり本番で300 mm や600 mm のレンズを振り回したとしても、成功する確率は決して高くないはずです。
「 数を打てば当たる 」という考え方もありますが、ほとんどの場合は事前のイメージトレーニングが成功の鍵を握ります。撮影前にあらかじめ ” こんな構図で撮ってみたい!” と強くイメージし、被写体のパワーに負けずシャッターを切り続けることが成功への近道です。それでは本番の撮影に向けて、どのように練習をすれば良いのでしょうか。
人それぞれに方法があると思いますが、中でも私がお勧めなのはトリミング練習法です。それは被写体の画像を基にトリミングをして、撮影したい構図をイメージトレーニングする方法です。この作業をすると本番でもメージを強く持って、撮影することが可能です。自分は撮影する被写体のどこに魅力を感じているのか。何をテーマとして構図を作るのかを意識しながら、トリミング作業でトレーニングを繰り返しましょう。きっと本番の撮影でも落ち着いて狙いを澄まして撮影できるはずです。
4.広角のフレームアウトも捨て難い
これまでは望遠レンズを使った撮影方法を紹介してまいりましたが、もちろん広角レンズを使っての撮影も可能です。広角レンズは撮影者と被写体の距離感が効果的に写し出されるため、目の前を走っているかのような感覚が味わえます。また、広角レンズの場合はシャッター速度は遅くても良い場合もあります。動体ブレが被写体に動きを与え、より一層に躍動感を演出してくれるのです。
5.次回予告
いかがでしたでしょうか。
フレームアウトのお話はここで終了です。今回もお付き合いいただきありがとうございました。このフレームは前回の流し撮り技法とも併用できます。ぜひ試してくださいね。さて次回は鉄道スナップ写真の世界です。ご期待ください!
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
遠藤真人