鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座第3回 鉄道写真の王道!編成写真( 前編 )
Photo : Masato Endoh
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「 鉄道写真の撮り方 」を解説する本記事も3回目となりました。今回・次回とで鉄道写真の基礎である「 編成写真 」について詳細に解説いたします。それではお楽しみください。 by 編集部 |
みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。今回は鉄道写真の基礎とも言える「 編成写真 」の撮影技法をご紹介いたします。実は簡単そうに見えて、結構テクニックが必要なものとも言えます。編成写真は一言でいえば鉄道写真の基本といえる撮影技法で、様式が確立されている撮影方法です。
1.編成写真には正解がある
私の考えとして写真は被写体を自由に表現できる手段だと考えています。もちろん鉄道写真もいつも自由に撮影したいと思っていますが、その一方で伝統的な撮影方法も存在しています。鉄道写真では、その代表が「 形式写真 」と「 編成写真 」です。どちらも記録を重視した手法です。今回は編成写真ですが、形式写真についてはまた別の機会に詳しく紹介いたします。まずは写真をご覧ください。
写真1 有名撮影地、通称ヒガハスにて
こちらが標準的な編成写真です。撮影場所は東北本線の東大宮~蓮田、通称ヒガハスと呼ばれる撮影地です。国鉄時代から有名な撮影地の一つです。編成写真は原則として、列車を斜め前から捉えたものです。一説によると列車の側面と車両の顔の比率が[ 7:3 ]が理想的とも言われています。先頭車両から最後尾までフレームの中に収まっています。可能な限り、車両には障害物がかからないようにアングルを工夫しましょう。前回ご紹介した高速シャッタースピードのテクニックで撮影されています。
2.光線
写真作品を撮影するときは、逆光で撮影をすると野外でも光のコントロールができ良い作品が生まれることも多いです。しかしながら、編成写真で用いる光線は順光がベストです。これは撮影者が太陽を背にして撮影することです。順光での撮影では車両の色がわかりやすく、影が作られにくいことが最大の利点です。また、背景に空が入る場合は青空が好ましく、曇天の撮影とは一味違い気持ちのよい写真うつりとなります。それでは曇天は良くないのかといえば、被写体によってはこちらの方が良い場合もあります。それは黒や暗い色の車両を撮影する時などが考えられます。季節や時間帯によって順光状態では強く影が出てしまうこともあります。
つまりハイコントラストの環境となります。その時に濃いカラーリングのものを撮影するとディティールが潰れてしまうことも多くあります。RAW 現像やレタッチである程度カバーできることもありますが、このような場合はかえって曇りの日が良い結果を生むこともあります。
3.撮影場所の選びかた
編成写真にとって最大の肝は、この場所選びにあります。当たり前のことなのですが、列車の走る時刻は決められています。チャンスは一瞬です。山手線や東海道新幹線のように走る本数が多い場合は、納得がゆくまで様々な場所でトライできます。一方でローカル線となると、そう簡単にはいきません。「 一時間に一本 」と聞くと驚くかもしれませんが、こちらはまだ本数がある方です。さらに本数が少ないローカル線も存在しています。中には朝昼晩に三往復しか列車が走らない超ローカル線もあるので、時間をしっかり調べた上で撮影に臨みましょう。
初めてゆく路線は、まず一歩めとして書籍やインターネットなどに撮影地の情報が出ているかどうかチェックしましょう。また、仲間同士で情報共有することも有効な手段です。路線によっては前面展望ビデオなども発売されているかもしれません。来るべき瞬間に備えて、しっかりチェックしましょう。気をつけなければいけないことは、季節によっては線路際の草が茂ったり、影が伸びて被写体にかかる可能性があることです。来るべき瞬間のために想像力と余裕を持って挑みましょう。十分に予習をしたうえで、撮影日の前日か当日、列車から現地を確認できればベストといえます。事前のリサーチとイメージトレーニングが重要です。鉄道写真は情報戦が命と言っても過言ではありません。ありとあらゆる可能性を考えて、万全の体制で挑みましょう!
4.編成写真の失敗例
さて、今までのルールを踏まえて失敗した編成写真の例を見てみましょう。
さて、今までの説明を踏まえた上で、この写真では数カ所編成写真として失敗していることがあります。いくつ見つけることができるでしょうか? 細かく指摘するとキリがないのですが、光線・撮影地・構図の視点で問題を見つけてみましょう。
- 光線
前面は順光側ですが、こちらの側面は影になっています。これは時間帯を変えると解決できそうですね。 - 撮影地
陸橋などの高いポジションからの撮影は好ましいですが、ケーブルや架線が車両にかかっています。編成写真には不向きな場所ですね。また影の落ちる部分も気になります。 - 構図
列車の最後尾が切れてしまいました。もう少し右側へカメラを向けたいところです。
5.次回予告
いかがでしたでしょうか?
実は奥深い編成写真の世界・・・お楽しみいただけたでしょうか。さて、次回後編は編成写真の撮影設定やテクニックについてお話しします。またお会いしましょう!
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
遠藤真人