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鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真撮影講座
第27回 NiSi ND VARIOフィルター(円型可変ND)で撮影する鉄道写真


railway27

Photo : Masato Endoh


TOPIX

鉄道写真の撮り方を体系的に解説している、鉄道写真家・遠藤真人の鉄道写真講座の 27 回目はNisi社製、可変 NDフィルター「 VARIO」 を使用しての撮影解説になります。置きピン・LED 対策などさまざまな場面で活用できるアイテム可変 NDフィルター「 VARIO」。可変 NDフィルターを活用し鉄道撮影の幅を広げてみるのはいかがでしょうか?ぜひ、撮影の参考としてください。 by 編集部

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みなさまこんにちは!鉄道写真家の遠藤真人です。今回も引き続き、世界的に有名な NiSi のフィルターを使って鉄道を撮影してゆきます。前回の【Natural CPLフィルター】に見た目が似ている【NDフィルター「VARIO」1.5〜5stops】フィルターです。
こちらの ND VARIOフィルターは、鉄道写真でもおなじみの NDフィルターの進化版です。使用した、可変 NDフィルター「 VARIO」1.5〜5stops はND3〜ND32までの間を自由に設定できる優れたフィルターです。そのフィルターで流し撮りでの応用を中心に詳しく解説してゆきます。ぜひ最後までご覧ください。

Index

1.可変ND VARIOフィルターとは

こちらの読者の皆さまは、すでに NDフィルターのことはご存知かと思います。改めてですが、NDフィルターとは減光フィルターのことです。主に明るい場所で低速シャッターを必要とする場面で使います。おさらいにはなりますが、ひと口に NDフィルターといっても ND4や ND16など種類によって濃度が異なります。今までは状況に合わせ、複数枚持ち歩いて交換していました。場合によっては2枚重ねなどをして濃度を濃くしていたものです。

写真1 名古屋鉄道
焦点距離: 98mm / シャッター速度:1/40秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:200 流し撮りは気合を入れて挑む撮影法だったが、「VARIO」1.5〜5stopsを導入してからは気軽に撮影できるようになった。被写体を見つけてからでもサッと臨戦態勢にセッティングできる。

焦点距離: 98mm / シャッター速度:1/40秒 / 絞り数値:F7.1 / ISO感度:200 流し撮りは気合を入れて挑む撮影法だったが、「VARIO」1.5〜5stopsを導入してからは気軽に撮影できるようになった。被写体を見つけてからでもサッと臨戦態勢にセッティングできる。

そのように不効率な使い方も、可変 NDフィルターの登場により不要となりました。今回使用した、可変 NDフィルター「 VARIO 」1.5〜5stops はND3〜ND32に相当する濃度です。鉄道を含めた通常の動体撮影にはこちらがオススメです。軽めの流し撮りから、低速シャッター域の撮影まで自由にコントロールできます。さらに濃い 5-9stops もありますが、こちらは露光時間を分単位まで落としたい方向けのアイテムです。鉄道写真ではまず 1.5〜5stops を導入することをオススメします。

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2.VARIO を使う3つのメリットと操作方法

可変 NDフィルターの使用は、今までにはない多くの利点があります。大きく分けると、「 一枚で完結 」、「 無段階で濃度を細かく調整できる 」、「 置きピンに最適 」の3点です。これらはそれまでのフィルターと比べると革命的といえる便利さです。それぞれのメリットを詳しく紹介する前に、操作方法を説明しましょう。

3-2_R

3-3_R

可変 NDフィルター「 VARIO 」1.5〜5stopsは2枚のガラスで構成されています。先端側のレンズフレームにはレバーが付いています。このレバーを回して、フィルターの濃度を変化させます。カメラを構えたとき、左に回すと高濃度 ND となる。このレバーを待つことで、レンズに直に触れるリスクを回避させています。フィルターに指紋が付いては台無しです。実用的で親切な設計ですね。フィルター枠には点が振っていますが、あくまでこちらは目安だそうです。カメラ内の露出値などで、光量を確認した方が良いそうです。

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3.「 一枚で完結 」

始めに挙げた「 一枚で完結 」は前の項でも述べたとおりです。すべての機能が一枚で完結したことで色々な無駄が解消されました。毎度 ND の濃さを選ぶ時間と、収納用のスペースが省けるようになりました。
そのため今はフィルターを買ったら、そのまま撮影用カバンに入れておきます。そうすれば、フィルターを忘れることもなければ、急に必要になっても問題はありません。ずっと入れっぱなしでも大丈夫です。

写真2千歳線
焦点距離: 96mm / シャッター速度:1/80秒 / 絞り数値:F13 / ISO感度:125 流し撮りの中でもライトな部類とされる「追い写し」。スピード感よりも前面のLED表示を注意して撮影した。

焦点距離: 96mm / シャッター速度:1/80秒 / 絞り数値:F13 / ISO感度:125 流し撮りの中でもライトな部類とされる「追い写し」。スピード感よりも前面のLED表示を注意して撮影した。

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4.可変 ND フィルター「 VARIO 」は濃度を自由に操れる

今まで販売されていた NDフィルターは各製品で濃度が固定されていました。当然ながら、ND 値はND3,ND4,ND8など様々です。しかしながら、屋外での撮影はハプニングがつきものです。私の経験でも、流し撮りを試みて ND4では薄すぎるけれども、ND8では濃すぎてしまうことは良くありました。そんな時は ND6があれば・・・などと考えていたものです。そんなマニアックな悩み(?)にも応えてくれるのが、可変 ND VARIO なのです。無段階でシームレスに変化してゆきます。

写真3 西武鉄道
焦点距離: 36mm / シャッター速度:1/4秒 / 絞り数値:F 10/ ISO感度:100 NDを16付近に合わせて撮影した。超低速シャッタースピードの撮影はサイド気味に狙うと命中率が格段に向上する。

焦点距離: 36mm / シャッター速度:1/4秒 / 絞り数値:F 10/ ISO感度:100 NDを16付近に合わせて撮影した。超低速シャッタースピードの撮影はサイド気味に狙うと命中率が格段に向上する。

今回 NiSi 社からご用意いただいたフィルターは口径 77mm のものです。私のメイン機材は広角から超望遠まで、レンズ口径77mm のもので統一しています。そのためフィルターは本当に一枚で完結してしまいました。

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5.流し撮りの置きピンに最適

最後にご紹介したい使い方は、今後の鉄道撮影では必須になるであろう方法です。私は今まで NDフィルターの利点を多く挙げてきました。ただ、やはり NDフィルターを使用すると発生するデメリットもあります。中でも鉄道写真に一番影響することは、オートフォーカス精度が低下することです。NDフィルターを装着することは、カメラにとっては暗い場所で撮影することと同じです。いくら現行の優秀なカメラといえども、低照度側のオートフォーカスはやはり苦手な条件であるのは事実です。

つまり NDフィルター使用時のオートフォーカスは控えた方が良いというのが常識でした。今もそれは変わりません。つまりここで置きピン技術が活かされてくるのです。それでは可変 NDフィルターの登場前、どのように流し撮りを準備していたのかを説明してゆきます。

まずは完成形をイメージして、最初に構図を決めます。まだフィルターは未装着です。次に撮影地点の線路にピントを設定します。この時点で置きピンを行います。まだフィルターは着けません。そして最後にレンズへ NDフィルターを装着し撮影するのでした。とても手間と時間がかかります。それだけならば良いですが、装着の際にピント位置がずれると途中からやり直しです。装着後はカメラの状態が変わらないように、とても緊張していたものです。少なくとも「 お手軽撮影 」ではありませんでした。だがしかし!この可変 NDの登場によって撮影の段取りは一変しました。次に現在の NDフィルター VARIOで の手順を書いてゆきます。

写真4 品鶴線
焦点距離: 100mm / シャッター速度:1/100秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:450 ブルトレなき今、東海道系統を勇ましく走るE F66牽引貨物列車は人気の列車だ。通常の鉄道写真では、列車の近くに目障りなものを入れるのはご法度とされている。ただし流し撮りの場合は、主役の躍動感を引き立てる脇役にもなってくれる。ケースバイケースで考えたい。

焦点距離: 100mm / シャッター速度:1/100秒 / 絞り数値:F9.0 / ISO感度:450 ブルトレなき今、東海道系統を勇ましく走るE F66牽引貨物列車は人気の列車だ。通常の鉄道写真では、列車の近くに目障りなものを入れるのはご法度とされている。ただし流し撮りの場合は、主役の躍動感を引き立てる脇役にもなってくれる。ケースバイケースで考えたい。

最初に可変 ND VARIOをレンズに装着します。次に構図を決めます。最後に ND を薄い方向にまわしてピントを決めます。置きピンです。そしてファインダーを覗いたまま、最後に好みの濃度で撮影します。これで終了です。

つまり最初にフィルターをつけて、準備から撮影まで完結できるのです。今までの常識では考えられないほど、楽な作業となりました。そして設定を行った後でピントを変えたい時も楽に操作ができます。
ストレスフリーの作業で、これまで以上に撮影への没入感と集中力が形成されます。以前の流し撮り記事に書けなかったのですが、” 集中力 ” もまた成功の大切な要素です。一度体感したら、もう以前のスタイルに戻すことはないでしょう。便利なアイテムです。

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6.LED 表示対策にもバッチリ

写真5 札幌市電
焦点距離: 165mm / シャッター速度:1/180秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 鉄道写真の宿命ともいえるLED問題。特に日中の撮影ではフィルターが活躍する。

焦点距離: 165mm / シャッター速度:1/180秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 鉄道写真の宿命ともいえるLED問題。特に日中の撮影ではフィルターが活躍する。

鉄道写真でスローシャッターといえば、こちらの話題も重要です。それは以前の流し撮りを解説した回( 第 10 回 流し撮りのコツ 応用編 )でも紹介しましたが、LED 表示の問題です。行先表示の光源が点滅を繰り返し、一部が途切れたように写る事象のことです。それを解決策として遅めのシャッター領域が必要なのでした。具体的な数値として、シャッタースピードは 1/60〜1/250 秒あたりでないと綺麗には写りません。
こちらの LED 対策にも、NDフィルター「 VARIO 」1.5〜5stops は十分な効果を発揮します。こちらの撮影では薄い ND 側の使用をオススメします。夏などのトップライト光の中ならば、濃い方へとシフトさせればオールシーズン使えます。一枚で済むメリットがここでも発揮されます。

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7.明るい場面でも広がる動感表現

可変 NDフィルター「 VARIO 」1.5〜5stops は最大濃度 ND32相当です。つまり露出値( EV )で換算すると5段分落とすことが可能です。例えば ISO100 で F5.6 , 1/500 秒の明るさであれば、ISO100 , F5.6 を維持しつつ 1/15 秒までスローシャッターが使えるということです。今回の連載ではスローシャッターを使った鉄道写真の代表格「流し撮り」に絞ってご紹介しました。ですが写真的な動感表現はまだまだあります。三脚にカメラを据えて、被写体をぶらす動体ブラシもまた良い表現方法です。

写真6 埼京線
焦点距離:70 mm / シャッター速度:1/2秒 / 絞り数値:F16 / ISO感度:125 流し撮りの定番スポット、新宿駅近くの陸橋で撮影。デジタル時代に昼間から1/2秒で撮影できるとは。雑多な街も流し撮りでカラフルな背景となった。

焦点距離:70 mm / シャッター速度:1/2秒 / 絞り数値:F16 / ISO感度:125 流し撮りの定番スポット、新宿駅近くの陸橋で撮影。デジタル時代に昼間から1/2秒で撮影できるとは。雑多な街も流し撮りでカラフルな背景となった。

また NDフィルター「 VARIO 」5〜9stops はND32〜ND500相当まで、減光機能を備えています。昼間の長時間露光はそちらの方が向いています。そちらも使い方次第で、新しい鉄道写真表現が広がることでしょう。もしかすると夜に VARIO を使えば、今まで誰も見たことが無いような写真が生まれるかもしれませんね。

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8.次回予告

いかがでしたでしょうか。
今回は鉄道写真にもバッチリ使える ND VARIOフィルターを使用した鉄道写真の回でした。お付き合いいただき、ありがとうございました。次回は路線別に写真を紹介する新シリーズもスタートします。ぜひご期待くださいませ。

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著者について
煙道伸麻呂 ( えんどうのべまろ )鉄道写真家 本名 遠藤真人 日本大学芸術学部卒業 日本写真学会会員 EIZO ColorEdge Ambassador 幼少期から鉄道に魅了されカメラマンの道を目指す。近年は撮影のみならず、カメラメーカーや鉄道会社とのタイアップイベントを企画する。コンテスト審査員・メディア出演・写真教室講師など活動は多岐にわたる。