萩原和幸の新製品レンズレビュー
Tokina AT-X 11-20 PRO DX<ポートレート編>
TOPIX
ケンコー・トキナーの新しい超広角ズームレンズ「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」。ズーム全域 F2.8 という贅を尽くした新レンズの魅力を、写真家・萩原和幸がレビューする後編は、魅力的なポートレート作品をご覧にいれながらお届けします。萩原和幸ならではの広角ポートレートの美しさをお楽しみください! by 編集部 |
■ ダイナミックな広がりが魅力の広角ポートレート
以降の写真で、実画像の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示には注意してください。
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Tokina AT-X 11-20 F2.8 PRO DX ■ メーカーサイト ■ Tokina AT-X 11-20 PRO DX |
ケンコー・トキナーから発売された、APS-C センサーサイズ機用の広角ズーム「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」。後編はポートレート撮影での使用感について述べていこう。
そもそもポートレート撮影での広角レンズのポジションは、一連の作品へのスパイス的な使い方だろう。ダイナミックな構図に広がりを出したいタイミングになどで、大いに活躍してくれる。ポートレートと言えば、一般的に標準~中望遠・望遠系の使用頻度が高いことは確かだが、多くのカメラマンが必ず広角レンズを使う。それはやはり作品たちにメリハリを付けられるからだと言える。
このような観点から、広角レンズをポートレートに取り入れていない( もしくは検討中の )方々には、是非ご自身のラインナップに広角レンズを加えていただきたいのだが、その候補として「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」は検討の1本になるはずだ。開放値 F2.8 通し、ワイド側 11mm( 35mm 判換算で約 17mm )からテレ側は汎用性の高い 20mm( 35mm判換算で約 32mm )までをカバーし、ポートレート撮影における広角表現を一気に広めてくれる可能性を持つ。
前回にも述べたが、テレ側が前モデルの「 Toina AT-X116 PRO DXⅡ 」の 16mm よりも 4mm 伸びたことで、俄然ポートレート撮影へのアプローチが高まったと言っていい。現在、APS-C サイズセンサー機ユーザーにとって、超広角ズームではこのレンズは注目度がかなり高いだろう。
■ 作例を使って解説
では、実際のポートレート撮影においての使用感に触れていこう。今回の撮影は屋内だ。
以降の写真で、実画像の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示には注意してください。
屋外なら広がりを感じさせる大胆な構図で……と行きたくなるところだが、限られた空間での撮影こそ広角レンズの出番でもあるので、今回はこの方向から「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」にアプローチを図る。
開放値近くで撮影することが多いポートレートでは、やはりその描写が気になるところ。「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」は全域を通してシャープでクリアな描写だ。ポートレート的な観点では、芯がありながらやや柔らかめの描写で、無理にシャープさを持ち上げたようなギスギス感はなく、まろやかな風合いだ。
ボケ味はナチュラルでクセは無い。超広角ズームレンズとしては丸ボケも綺麗だ。モデルと背景の距離はかなり近いのだが、開放 F2.8 は彼女を浮き上がらせてくれるには十分なボケを作り出してくれる。
広角レンズを使うことで、スタイルを自然によく見せる効果を期待できる。そもそも脚が長くでスタイルのいい彼女だが、さりげなくプラスアルファ。絞りは開放、「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」は周辺画質が確保されているがよくわかる。歪みも感じられず、スッキリしたポートレートとしての画を提供してくれる。歪曲収差が少なく、安定した解像力を持つ「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」は直線がキチンとまっすぐに描写される。実感しないと分からないことではあるがレンズの持つポテンシャルの高さがうかがえる。
先のカットから、カメラポジションを変えつつ数カット。広角レンズでのポートレートの面白さは、水平を崩すことで生まれる動きや遊び。また大きな誇張感を生かすことにある。写真8では、手前に大胆に前ボケを入れて距離感を作り出してみた。「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」の開放値 F2.8 はここでも大きな前ボケを作り出し、さらに広角レンズ特有の誇張感も相まって、距離感はさらに大きく、雰囲気を高める役目を果たしている。「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」は前ボケもナチュラル。前ボケと背景のボケに囲まれて、浮かび上がる様が美しい。これはボケそのものの綺麗さがあってこその効果だ。
トキナーレンズ特有のフォーカスモード切替機能のことで、オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り替えが、フォーカスリングをスライドさせるだけでできる。
広角レンズでのアップの撮影は思い切らないとモデルが逃げてしまうような印象のカットになってしまう。キレはありながら柔らかい描写で、特に肌の雰囲気はポートレート撮影では抜群。開放値 F2.8 ではピントがすぐにずれてしまうし、何よりモデルとは至近距離。ささっと撮影してあげたいところなので、MF でピントを合わせた。「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」はトキナー特有のワンタッチフォーカスクラッチ機構搭載なので、即座に AF から MF に切り替え可能。トルクに適度な重さが設けられているので、微調整もしやすく快適だ。
またここでも開放値 F2.8 の恩恵を受けることになるのだが、このシーンは撮影データの見た目以上に光の条件は悪かった。こうした光の条件に厳しいシーンにて開放値が明るければ、それだけファインダーの明るさに差が出る。つまりピントを合わせやすいということだ。「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」のピント合わせのしやすさは、実際にレンズをお手に取っていただき、是非実感していただきたい。
■ 総評
前編のスナップ撮影、後編のポートレート撮影と2つの場面で「 Tokina AT-X11-20 PRO DX 」を使用してみたが、とにかく使い勝手のいいレンズだ。超広角ズームではあるが、11mm からのデフォルメされた世界から、20mm に近づけることで現実の、間近な世界へとつないでくれる、いい感じの焦点域を備えている。描写そのもののクオリティは高く、その上開放値 F2.8 という明るさは、それが生み出す大きく柔らかなボケを欲し、光の厳しい条件での撮影への意欲をかき立ててくれる。撮影者が求める表現に対し、十二分のパフォーマンスを見せてくれるに違いない。
冒頭でも述べたが、APS-C サイズ機ユーザーにとって、超広角ズームレンズの選択肢筆頭に挙げていただきたいレンズだと思う。
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Tokina AT-X 11-20 F2.8 PRO DX ■ メーカーサイト ■ Tokina AT-X 11-20 PRO DX |