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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第44回 全国有数のパノラマ夜景都市!美しい静岡夜景の撮り方

Posted On 2018 7月 12
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Photo : Takuya Iwasaki

TOPIX

全国各地の夜景撮影のHow to 連載も第7回目を迎えました。まだまだ、全国に夜景スポットはございますが、結構なシリーズコンテンツになってまいりました。今回は 「 第44回 全国有数のパノラマ夜景都市!美しい静岡夜景の撮り方」 をお届けします。それではご覧ください。 by 編集部

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 今年は例年よりも早く梅雨明けしましたが、7月に入ってから台風第7号及び前線等に伴う大雨による災害が発生し、被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

 先月の山梨県に続いて、今月は静岡県内の夜景撮影スポットを解説します。静岡=夜景のイメージはあまり浮かびませんが、東京や横浜のような都会では見れないような大パノラマが楽しめ、撮影スポットも無数にあります。今回は静岡での夜景撮影のポイントと、おすすめの撮影スポットを紹介します。

写真1 静岡夜景を代表する梶原山公園

梶原山公園からの夜景

梶原山公園と言えば、恐らく静岡市内で最も有名な夜景スポット。狭い農道を抜ける必要があり、初心者ドライバーには難しいが、運転の苦労が報われるだけの夜景が楽しめる。ただ、昔に比べて視界が狭くなっているため、撮影よりは観賞の方が適している。

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■静岡県の特徴

静岡県の人口は約375万人。山梨県と並んで富士山を有し、富士山と夜景を撮影できるスポットも多数ある。お茶やみかんが有名だが、伊豆や修善寺の温泉も全国的に知られている。静岡県内は東京や横浜に比べて展望施設は少ないが、山間部からの眺めが良く、パノラマ夜景の美しさは関東や関西にもひけを取らないほどだ。

写真2 静岡県の地図

静岡県の地図

新幹線で大阪-東京間を移動したことがある人ならわかると思うが、横に長い静岡県内の通過には非常に時間がかかる。静岡市と浜松市はそれぞれ政令市で、人口は浜松市の方が多いが、山間部から街明りが遠いため、夜景は静岡市の方がきれいに見える。

(地図素材:CraftMap

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■静岡県の夜景撮影のポイント

静岡県内で夜景を撮影する上で、特段難しいポイントは無いが、気象条件の見極めとロケハンでほぼ勝負が決まる。撮影スポットまでの道のりが狭い場所が多く、普段から車の運転をしない人ほど、ロケハンをしておいた方が無難だ。また、農道は立入が禁止された場所も多いので、注意深く看板を確認しよう。

写真3 昼間に山原(静岡市)をロケハン

裏山原の昼間の風景

静岡県内の夜景スポットは農道のような狭い道を走ることが多く、安全面も考えると昼間に同じルートを走っておくと夜間の訪問も比較的スムーズに。

(1)秋~冬がベストだが、温暖な気候のため、年中夜景撮影を楽しめる

空気の澄み具合や日没の時間を考慮すると、秋~冬がベストシーズンだが、静岡県は気候が温暖で、街中に雪が積もることは滅多になく、年間を通じて夜景撮影を楽しめる。なお、富士山のシルエットも写すなら、雪化粧がされた冬~春が狙い目。

(2)慣れない道は昼間のロケハンがおすすめ

静岡県内の夜景スポットは山間部が多く、訪問する撮影スポットによっては、狭い道を運転する必要がある。そのため、昼間の明るいうちに、ロケハンをしてルートの確認はもちろん、実際に昼間の景色を見て、撮影するかどうか見極めるのもいいだろう。

(3)広角~標準レンズの使用頻度が高め

高台から見下ろすパノラマ夜景がメインとなるため、景色全体を撮る時に広角レンズを使う機会が多い。真っ暗になってからは、空を大きく入れすぎないためにも、標準レンズで街明かりを中心に写すことが多い。望遠レンズは使用頻度が低いが、富士市で工場夜景を撮る場合には重宝する。

(4)駅近の展望施設以外は車での移動が必須

静岡市内中心部であれば葵タワーや静岡県庁、グランシップなどから夜景が見えるが、静岡県内のほとんど夜景スポットは山間部にあるため、車での移動が欠かせない。東京から日帰りでも訪問できるが、休日に訪問すると帰りの東名高速道路が渋滞することが多いので、帰りは遅めの時間にするか、一泊してから帰るのも良いだろう。

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■撮影スポット(1)香貫山【沼津市】

静岡県内でトップクラスの美しい夜景が見渡せる名所。駿河湾を中心に沼津や富士、遠くは静岡方面まで街明かりが広がり、街との距離が近いことから、見応えのある夜景が楽しめる。西向きに視界が広がるため、トワイライトタイムが美しく、天気が良ければ富士山のシルエットも写せる。広角レンズで街明かりを写す構図が定番だが、望遠レンズで沼津港や市街地を切り取るのも良いだろう。(地図

写真4 駿河湾を中心に沼津・富士方面を写す

香貫山
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:21mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(2)熱海城【熱海市】

東洋のナポリと称される熱海の夜景。熱海城手前のバス停付近から、温泉街を見渡せる。視界はそれほど広くないが、ライトアップされたビーチの明かりも美しく、色鮮やかな夜景が楽しめる。山々のシルエットを写すためにも、できるだけトワイライトタイムを狙いたい。(地図

写真5 トワイライトタイムに熱海の温泉街を見下ろす

熱海城
[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:29mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F8 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(3)伊豆スカイライン 無線塔下駐車場【熱海市】

夜景ドライブに人気のあるドライブウェイで展望台が多数ある。滝沢展望台が最も有名だが、無線塔下駐車場からも富士山をシルエットに沼津方面の夜景が見渡せる。西向きに視界が広がることから、トワイライトタイムの夜景が最も美しい。街明かりが遠いので、暗くなってからの撮影であれば標準レンズや望遠レンズが適しているだろう。(地図

写真6 富士山と沼津方面を見渡す

伊豆スカイライン
[ ボディ:CANON EOS 6D Mark2 / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:24mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:30秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(4)円山花木園【静岡市】

静岡市民でも恐らく知る人が少ない、穴場スポット。小さな展望台からは安倍川を中心にするが方面の夜景が広がる。ただ、街明かりが広がるだけでなく、安倍川がアクセントになっており、橋の明かりも美しい。(地図

写真7 安倍川と駿河区方面を写す

円山花木園
[ ボディ:CANON EOS 6D Mark2 / レンズ:EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:53mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:20秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(5)笛吹段公園【焼津市】

焼津では最も有名な夜景スポット。高草山からはより迫力ある夜景が眺められるが駐車場がないため、笛吹段公園から夜景を楽しむ人が多い。東名高速道路のオレンジ色の明かりが良いアクセントとなり、長時間露光で車の光跡もキレイに写したい。(地図

写真8 東名高速と焼津の街明かりを写す

笛吹段公園
[ ボディ:CANON EOS 6D Mark2 / レンズ:EF24-70mm F4L IS USM / 焦点距離:57mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:15秒 / 絞り数値:F10 / ISO感度:200 / WB:白色蛍光灯 ]

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■撮影スポット(6)滝沢展望台【浜松市】

浜松では最も有名な夜景スポット。市街地から離れているため、街明かりが遠く感じるが、新東名高速が開通してからは手前に光跡を写せるようになった。なるべく車の通行が多い時間帯を狙って、長時間露光でじっくり撮影に挑むと良いだろう。(地図

写真9 浜松市中心部を見渡す

滝沢展望台
[ ボディ:CANON EOS 5D Mark2 / レンズ:SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM / 焦点距離:50mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:10秒 / 絞り数値:F9 / ISO感度:400 / WB:白色蛍光灯 ]

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■今月のお勧めスポット「浜のかきあげや」

桜えびの名店として、観光客にも有名なお店。休日には数時間もの待ち時間が発生することがあるそうだが、並んでも食べるだけの価値がある美味しい桜えびが食べられる。メニューも豊富で、かきあげや味噌汁のセットがお得。撮影スポットのロケハン前に訪れるのも良いだろう。

浜のかきあげや
営業時間:10:00~15:00(時期によって休業日が異なる)
所在地:静岡県静岡市清水区由比今宿浜1127
アクセス:JR由比駅から徒歩約10分(駐車場あり)
料金:漁師の沖漬丼セット(1100円)など
URL:http://yuikou.jp/enjoy.html

写真10 漁師の沖漬丼セット

IMG_0142

平日に訪問したため、ほとんど並ばずに注文できたが、釜揚げの桜えびとしらすのハーフ丼は売り切れていた。桜えびに醤油がほど良くしみて、やみつきになりそうな美味しさだった。

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。