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夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第15回:夜景撮影に適した三脚の選び方

Posted On 2016 2月 16
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TOPIX

さて、今回の「 夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座 」は夜景撮影をする人には必携の三脚に関する解説です。夜景を撮影する観点に特化して解説いたします。また、自身が所有する三脚・雲台を3種公開し、それぞれの用途に関しても述べております。 by 編集部

夜景撮影には欠かせない三脚。最近のカメラは高感度化が進み、手持ち撮影でも夜景が綺麗に撮れるようになってきましたが、夜景はカメラを固定して長時間露光した写真の方が圧倒的に美しく写せます。そこで今回は三脚の選び方や活用法について紹介したいと思います。

写真1 三脚にカメラを固定して長時間露光

三脚+長時間露光

三脚にカメラを固定してこそ撮影できる光跡夜景。光の流れを捉えるような夜景はシャッターを10~30秒程度空けるのが一般的で、手持ちでは絶対に撮れない作品だ。(作例は15秒開放)

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■夜景撮影に三脚が必要な3つの理由

最近はデジタルカメラやスマホで手持ち撮影をする人が増えたように思う。三脚は荷物が増えて嵩張るので、できれば持ち歩きたくないと思う人が大多数だろう。しかし、三脚は夜景撮影に限らず、一般的な風景撮影全般において欠かせないものなのだ。むしろ夜景撮影において、カメラ+レンズ+三脚は「三種の神器」だと考えた方がいいだろう。

(1)手ぶれを防ぐ

基本中の基本だが、三脚を活用する第一理由は手ぶれを防ぐことにある。最近のカメラ・レンズには手ぶれ補正機構が搭載されている機種が多く、3~4段分ぐらいの補正効果が得られるが、それでも手持ちで撮影できるシャッター速度は1/8秒程度(焦点距離約35mm換算)が限界だろう。実はイルミネーションに限って言えば、高感度+手持ちで十分に綺麗な写真が撮れるが、まだまだ手持ちで綺麗に撮れるジャンルは限定的だ。

(2)構図を安定させる

夜景撮影に限らず、構図を決めるには昼間でも三脚を使うことが多い。同一アングルで複数枚撮影したり、撮影場所を確保する場合には三脚が非常に役立つ。また、自身の身長よりも高い位置や超ローアングルから撮影する場合も三脚は役立つ。

(3)作例のクオリティ・バリエーションを広げる

三脚を使うことで、長時間露光ができるため、ISO感度を最小値(100程度)まで下げて撮影できる。ノイズも目立たず、クリアな写真を撮れるのは三脚ならでは。光跡や花火、水辺を撮る時にも三脚は必ず活用する。

写真2 昼間のセッティング風景

昼間のセッティング風景

日中であればシャッター速度の点だけ見れば三脚は全く必要無いと言える。しかし、構図を安定させるためには日中でも三脚を活用したい。

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■三脚を選ぶ3つのポイント

夜景撮影に適した三脚を選ぶ時、まずは以下の3つの点を抑えておきたい。

(1)高さは150cm以上を目安に

夜景撮影スポットは手すりやフェンスのある場所が多く、手すりやフェンスより高さが低いと三脚を使う意味が無くなってしまう。150cmというのはあくまで最低現の高さで、できれば160~170cmぐらいの高さがあると良い。

写真3 フェンスが高く、2m前後の高さが要求されるケース

2m前後の高さが要求されるケース

写真のような撮影スポットは滅多に無いが、あまりにもフェンスが高い場所だと大型三脚が必要になる。

(2)最大積載容量の2~3倍の余裕

三脚メーカーのウェブサイトやパンフレットには「推奨積載質量」や「最大搭載重量」の記載がある。積載重量はあくまで、カメラ+レンズを安全に載せるための目安であって、数値内に収まっていても、バランスが悪ければブレの原因になってしまう。

(3)雲台は「3Way」を選ぶ

雲台は大きく分けて「3Way」「2Way」「自由雲台」の3種類があるが、全方向の調整がしやすい「3Way」が夜景撮影に適している。荷物をコンパクトにしたい場合は「自由雲台」を選ぶのも1つだろう。

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■より良い三脚を選ぶ7つのポイント

三脚選びは上記の3つのポイントが重要になってくるが、三脚は一度購入すると買い替える機会が少なく、5~10年以上使うことも一般的。なので、以下のようなポイントも押さえておくと良いだろう。

(1)パイプの種類

三脚用のパイプは主に「カーボン」「アルミ」の2種類がある。それぞれに利点があるが、一般的には「カーボン」が主流。値段は高いが、軽量で安定感もあり、振動を減退する効果も期待できるからだ。価格を重視するなら「アルミ」も選択肢に入るだろう。

写真4 カーボンとアルミ

パイプの種類

写真の上がカーボンで下がアルミ。脚にウレタングリップが巻かれている三脚は冬場でも手が冷えにくいので、おすすめ。

(2)パイプ径

パイプの太さは三脚の安定感に大きく影響する。望遠レンズを使う時には特にパイプ径を気にしたいところだ。目安として一眼レフ+標準ズームレンズなら28mm~、ミラーレス一眼なら22mm~ぐらいが目安だろうか。重量や価格の問題はあるが、パイプが太くて困ることはそうそう無いだろう。

(3)段数

三脚のパイプは3段と4段が主流。3段の方が持ち歩く時に嵩張るが、安定感では4段よりも優れている。荷物のコンパクトさを考えるなら4段がおすすめ。著者は全て4段の三脚を愛用。

(4)補強ステーの有無

安価なファミリー三脚には脚同士を固定して補強するためのステーが付けられている。ステーがあると3本の脚の角度を自由調整できないため、特に展望室や足場の不安定な場所で撮影に支障を来す。補強ステーは必ずついていない三脚を選びたい。

写真5 脚の長さを臨機応変に変える

展望台での撮影風景

展望室など3本の脚を均一に伸ばして使えない場所も少なくない。

(5)脚のロック方式

三脚の脚を固定するロック部分は「ナット式」「レバー式」の2種類がある。ナット式の利点は部品構造がシンプルで耐久性が強いところ。逆にレバー式は固定に力が要らないという利点がある。

(6)クイックシュー

クイックシューを使うとカメラの脱着がスムーズになる。撮影現場は真っ暗で寒いことが多いので、カメラはできるだけスムーズに固定したい。なお、雲台にクイックシューが内蔵したタイプもあるが、できれば後付けでクイックシューを付けた方がいい。なぜなら、万が一クイックシューのプレートを忘れてしまうと、固定が出来なくなってしまうからだ。また、超望遠レンズで撮影する時はクイックシューを使わない方が安定するはずだ。

写真6 クイックシューの比較

クイックシュー

写真左がクイックシューを後付けした雲台。右がクイックシュー内蔵型雲台。内蔵型の場合、カメラ側に取り付けるプレートを忘れたら悲惨なことに・・・

(7)水準器の有無

雲台には水準器を内蔵している製品が多いが、雲台よりもカメラ本体側の水平の方が重要なため、カメラ内蔵の電子水準器や外付けの水準器の方が正確。水準器の有無はあまり気にしなくて良いだろう。

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■夜景写真家愛用の三脚を紹介

それでは最後に夜景写真家が愛用する三脚を詳しく紹介したい。基本的には撮影シーンや移動手段によって三脚を複数使い分けている。

写真7 現在愛用している三脚

夜景写真家愛用の三脚

三脚の脚は全てVelbon製だが、SLIKの雲台やクイックシューも愛用している。大型三脚は雲台が別売のものが多いので、好きな雲台を選ぶのも良いだろう。

(1)Velbon E740+PH-275 ※左

車移動や望遠レンズを多用する場合に活用している。推奨積載質量は7kgあり、70-200mm/F2.8クラスの望遠ズームレンズを使ってもブレが起こりにくい。

(2)Velbon N645M+SLIK SH807 N ※中

最近導入した組み合わせ。バイクや電車での移動で、荷物をコンパクトにしたい時に活用している。安定感と重量のバランスが取れていて、オールマイティに使える。

(3)Velbon E445M+SLIK SH806 N ※右

海外旅行など荷物を最小限にしたい時や、ミラーレスでの撮影に使う組み合わせ。脚のパイプ径が22mmなので、一眼レフ+望遠レンズの組み合わせはやや厳しい。広角レンズメインなら一眼レフでも何とか使える。

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飯岡刑部岬営業時間:光と風のデッキは終日開放

所在地:千葉県旭市上永井1309-1

アクセス:JR総武本線 旭駅から銚子行き バス 20分

「灯台入り口」バス停下車 徒歩 10分

無料駐車場あり
料金:無料

URL:飯岡刑部岬(夜景INFO)

写真8 展望台からの眺め

飯岡刑部岬からのトワイライト

[ ボディ:CANON EOS 6D / レンズ:EF16-35mm F4L IS USM / 焦点距離:33mm / 撮影モード:マニュアル露出 / シャッター速度:4秒 / 絞り数値:F11 / ISO感度:200 / WB:オート ]
西向きに眺望が広がるため、特に夕日が美しい。もう少し時間が経つと街明かりがより綺麗に浮かび上がる。

著者について
■ 夜景写真家 岩崎 拓哉 ■1980年生まれ。大阪府出身、神奈川県在住。法政大学経済学部卒。 2003年より夜景写真家を志し、日本全国や海外で夜景を撮影。 Webエンジニアの経験も活かし、「夜景INFO」などの夜景専門サイトを立ち上げる。カメラ雑誌の原稿執筆、夜景撮影の講師経験も豊富。総合・国内旅行業務取扱管理者の資格も持つ。 著書に「プロが教える夜景写真 撮影スポット&テクニック(日経ナショナルジオグラフィック社)」「夕景・夜景撮影の教科書(技術評論社)」。