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デジカメの「しくみ」
第14回 : 良いレンズ しくみ研究  〜レンズの大敵〜
 
デジカメでもレンズに注目する時代に
どうしてカメラにはレンズが必要か
レンズの役目のひとつは光を集めること
レンズの大敵である「収差」

2005/10/05

スタジオグラフィックス公認 デジタルカメラの教科書
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富士写真フイルムの新製品『FinePix S9000』。レンズ交換ができないタイプの一眼レフデジタルカメラですが、このレンズにはメーカーの徹底した技術が注ぎ込まれています。それは・・
 
■デジカメでもレンズに注目する時代に
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 冒頭写真にあるデジカメは、富士写真フイルム株式会社の新製品『FinePix S9000』です。

 レンズ交換ができないタイプの一眼レフデジタルカメラですが、35mmフィルム換算で28mm〜300mm相当の高精細フジノン光学式10.7倍ズームレンズを搭載しています。このレンズ、メーカいわく「ハイブリッド非球面レンズ1枚、ガラスモールド非球面レンズ2枚を採用し、レンズ収差を徹底補正。さらに多群移動方式を採用。」ととても力の入ったものです。このようにレンズ交換ができないタイプのデジカメも、レンズへの注目が高くなっています。

 それでは本題に入りましょう。

   
●デジ一眼ブームでレンズが一躍主役クラスに
 

 暑い日もありますが、朝晩はすっかり涼しい風が吹くようになりました。このように秋が本格化してくるとカメラの新製品が発表されることが多くなります。冬のボーナス商戦を狙った製品がチラホラと市場に投入されてくるためです。ことしもいくつかのメーカから注目の製品が登場しています。この「スタグラ」をご愛読されている皆様だと、注目は35mmフィルムサイズの撮像素子を装備した、キヤノンの『EOS 5D』あたりでしょうか。

 このようにレンズ交換式のデジカメが普及してきたおかげで、レンズも脚光があたるようになってきました。いや、たしかに以前からもレンズはチェックすべきパーツではあったのですが、フィルムを使ったいわゆる銀塩カメラに比べると、比較的軽視されがちなところもありました。それよりもCCDやCMOSといった撮像素子への関心が高かったという感じでしょうか。しかし、最近は採用されている撮像素子による差が少なくなってきていることもあって、レンズに関する注目の比重が特に高くなっているようです。しかも、レンズ交換ができないタイプのデジカメを購入する方も、「このデジカメは、良いレンズを使っているのかなぁ。」なんて気にすることも多くなってきたようです。

 ところで、高いレンズと安いレンズの決定的な差はなんでしょうか。どうして、さまざまなくふうを施した高額なレンズが開発されているのでしょう。実は、レンズには大敵となる現象があり、これをなるべく軽減するためのくふうがされているのです。このくふうが緻密で高度なものになるほど、レンズが高額になっていくというわけです。このレンズの大敵を知っておくと、レンズをチョイスする際のスペック比較に役立つだけでなく、撮影時にどのレンズを使おうか、という判断にも役立ちます。
 では今回から数回、この「レンズの大敵」なるものを取り上げていきましょう。

   
■どうしてカメラにはレンズが必要か
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●レンズの語源は植物の名前から
 
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【レンズ豆(扁豆〜ひらまめ〜)】
横から見ると凸レンズのような形をしています。この形にガラスを加工するので「レンズ」の名で呼ばれるようになったといわれています。
  ところで、本題から少しズレてしまいますが、レンズの語源が植物にあるというのはご存じですか。古代エジプトやギリシヤ時代から中近東や地中海地域を中心に植生してきた「レンズ豆」からきているといわれています。ガラスをレンズ豆のような形に変えると光が集められる、ということで、この加工したガラスを「レンズ」と呼ぶようになったといわれています。緻密な計算と精巧な技術を使って作られているレンズなのに、名前の起源は植物だったなんてチョット不思議な気がしますね。
   
●レンズが無くても撮影はできる
 
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【ピンホールカメラ】
カメラの原型ともいえるピンホールカメラはレンズを使いません。日光カメラのようなモノクロ写真ではなく、カラー写真も撮影することが可能です。日本ポラロイドの『ピンホール 80』は、比較的入手しやすいピンホールカメラです。
 
 レンズは、撮影を行うのに不可欠なもの、と思っているかもしれませんね。しかし、実はレンズを使わなくても写真を撮影することは可能なのです。現に、いまのカメラの前身といわれている古代のカメラオブスクラやピンホールカメラと呼ばれている撮影機では、レンズが用いられてはいません。

 ちなみに、ピンホールカメラというと、なんとなく小学生のときに実験した「日光カメラ」を想像してモノクロの写真しか撮影できないというイメージがありませんか。しかし、感光紙がカラーなら、しっかりとカラー写真を撮影することは可能なのです。
 実は、ピンホールカメラは現在でも入手可能です。日本ポラロイドから発売中の『ピンホール 80』が比較的入手しやすいと思います。このカメラをつかって、レンズを使わないカラー写真の撮影に挑戦してみてはいかがでしょうか。

   
■レンズの役目のひとつは光を集めること
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●レンズを使うことによって多くの光を集められる
 

 レンズを使わずに撮影できるのに、レンズが用いられるようになったのはなぜでしょうか。

 それは、装置のサイズを小さくしたままで、多くの光を集められるからです。今回は、レンズに着目したいので、古代のカメラオブスクラのしくみなどは省略させていただきますが、この項目を詳しく知りたいという方は、日経BPソフトプレス社刊の『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』をご覧ください。


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【レンズを使うと光を集められる】
凸レンズを使うと照射された光を1点に集めることができます。この現象を使って、小さいボディでも明るくて鮮明な写真が撮影できるのです。 (『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
   
●凸レンズが1枚だけではクリアな像は撮れない
 
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【1枚の凸レンズではクリアな像は見えない】
中心部では比較的ボケやにじみは少ないですが、周辺部にいくにしたがってこれらがひどくなっています。また、全体的に歪んでいるのもわかります。これでは、写真が撮影できませんね。
 カメラオブスクラという装置は、風景などの画像を映し出そうとすると、人が住めるようなひとつの部屋が必要なほど大きなものになってしまいました。しかし、凸レンズを使うことによって、小さな装置で写真を撮影できるようになりました。つまり、凸レンズによってカメラが登場したといえるでしょう。

 しかし、1枚の凸レンズだけでは鮮明でクリアな写真を撮影できません。デジタルカメラも例外ではありません。なぜなら、凸レンズだけでは綺麗な「像」を映し出すことができないからです。試しに凸レンズの代表格である虫眼鏡をのぞいてみてください。虫眼鏡の多くは、凸レンズ1枚でできています。のぞくとレンズからある一定の距離で映像のピントが合致して、大きな像が見えるようになります。このとき、像をよく観察してみてください。端のほうが色がにじんだり、ボヤけたり、そして歪んだりしていると思います。この像が、そのまま写真となるわけですから、1枚の凸レンズだけでは鮮明でクリアな写真を撮影できないというのがおわかりいただけると思います。

   
■レンズの大敵である「収差」
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●レンズで光を集めると収差が発生する
 

 このように、色がにじんだり、ボヤけたり、そして歪んだりしてしまう現象を総称して「収差」といいます。収差は、レンズ表面のカーブだけでなく、材質や大きさなどによっても大きく変化します。

 収差は、色ズレや歪みなどの無い、鮮明でクリアな写真を撮影するには、とても邪魔な現象です。この収差こそが「レンズの大敵」なのです。この収差を完全になくすことは、ほぼ不可能といわれています。そこで、なるべく少なくするために、さまざまなくふうを施した高額なレンズが開発されているというわけです。

   
●収差にはさまざまな種類がある
   収差は、色がにじんだり、ボヤけたり、そして歪んだりしてしまう現象を総称ですから、さまざまな現象があります。これを整理して分類したのが下の表です。
 まず、大きく分類すると、光の波長によって生じる「色収差」と、色には左右されない「単色収差」に分けられます。そして色収差は、「軸上色収差」と「倍率色収差」の2つに、単色収差は「球面収差」「コマ収差」「非点収差」「像面湾曲」「歪面収差」の5つに分類することができます。


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【収差の分類】
収差は、色がにじんだり、ボヤけたり、そして歪んだりしてしまう現象を総称です。さまざまな種類の収差があります。(『体系的に学ぶ デジタルカメラのしくみ』より)
 
 

では、それぞれの収差に関して、現象とその対策について説明していくことにしましょう。
しかし、それぞれ意外とボリュームがありますから、詳細は次回ということにしましょう。
では、次回をお楽しみに。

>> 関連記事
  レンズの最新技術については、スタジオグラフィックス特別企画
  「メーカーに聞く デジタルカメラのココが知りたい!」にも掲載中。
  ご覧ください。
Text by 西井美鷹(デジカメWEB)
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