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星景ポートレート写真家・関一也が徹底検証!
ASUSクリエイター向け4Kモニター ProArt PA279CV


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Photo : Kazuya Seki


TOPIX

本気で写真を楽しみたい人に限らず、プロで写真を取り扱っている人も専用のモニターを手に入れたいと思うだろう。今回、2020 年 12 月 18 日に発売となった ASUS 社(エイスース) の新商品「 PA279CV 」をお借りする機会をいただいた。今回は星景ポートレートの第一人者である写真家・関一也氏にフォトグラファー目線でモニター選びのポイントを解説しつつ、レビューを依頼した。関一也氏の評価は如何に?! by 編集部

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ProArt PA279CV

ProArt PA279CV

執筆撮影 : 関一也
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1986年生まれ 長野県出身。公益社団法人 日本写真家協会会員(JPS)。色彩コーディネーター3級。2011年より写真家として活動を開始。写真家 礒村浩一氏に師事。2013年+ONE Film Worksを設立。主にポートレート、ウェディング、風景 、スポーツを中心に広告、カタログ、カメラ雑誌の執筆、TV関連の動画撮影、写真や動画の講師を行う。「人と星をつなぐ」をテーマに星景ポートレート作品を作っている。World Photographic Cup 2017 ウェディング部門 日本代表。著書に「ポートレートRAW現像入門」「フォトグラファーのためのポートレートポージング入門」。

Index

1.モニターの選び方

写真はカメラで撮影して終わりではなく、RAW 現像やレタッチをして作品として仕上げてこそ写真の真価というものが生まれる。そのため、写真に必要なものはカメラとレンズだけではなく、正しい色を確認するためのモニターが重要だ。

筆者は普段ポートレート、風景、ウェディング、星景ポートレートを中心に映像制作なども行っている。作品制作にあたり、「 部屋に飾りたくなる一枚 」をテーマに絵画に近い作品、ひと目みたら自分の作風だと思われるような作品作りにこだわっている。

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それを実現するためには、カメラやレンズだけでは不可能。使用するパソコンも大切だが、それ以上にモニターは作品の色を管理する上でとても重要になってくる。特に白飛び、黒潰れに注意して現像しているので、正確に表示できるモニターでなければならいからだ。

正しい色で確認するということは、自分のイメージをそのまま反映させるために欠かせない。SNS だけではなく、プリントした場合に色が違ってしまうなどのトラブルになってしまうからだ。

現在使用しているカメラはFUJIFILM GFX 100/X-T4/X100V、キヤノンEOS R5/Ra、ソニーα7S III/α7 III、ニコンD810A、OLYMPUS OM-D E-M1 Mark IIIで、用途に合わせて使い分けている。

現在使用しているカメラはFUJIFILM GFX 100/X-T4/X100V、キヤノンEOS R5/Ra、ソニーα7S III/α7 III、ニコンD810A、OLYMPUS OM-D E-M1 Mark IIIで、用途に合わせて使い分けている。

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2.写真編集用モニターで押さえたいポイント

写真編集モニターでまず押さえたいポイントは、「 IPSパネル 」「 ノングレア 」「 sRGB 100% 」「 ハードウェアキャリブレーション対応 」「 色精度の高さ 」などである。以下それぞれ説明する。

IPSパネルとは、見る角度による輝度や色の変化がすくないパネルで、正確な色表示ができる。セカンドモニターにした場合など、モニターを並べた時に特にその効果は発揮される。またノングレアであれば、反射防止加工されているので自分の姿や環境が反射しないので集中してモニターを見ることが可能だ。

sRGB 100% とは色域としては業界標準であり、これをクリアしているかどうか一番重要である。AdobeRGB カバー率の高いモニターは高価で、プロファイルなど専門知識がないとその能力を活かしきれないのでハードルは高い。

ハードウェアキャリブレーション対応とは、モニターがどれだけ細かく色調整できるかで、細かく調整できればできるほどハードウェアキャリブレーションを行った際に色の精度を上げることができる。

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3.PA279CVの仕様と実機を確認

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モデル名 ProArt PA279CV
実勢価格(2020年12月 編集部調べ) 税別 48,927 円
サイズ 27型
パネルの種類 IPS
表面処理 ノングレア
色域 sRGBカバー率100% Rec.709カバー率100%
解像度 3,840×2,160ドット
映像入力 DisplayPort 1.4 x 1、DP over USB C x 1(with 65W 充電対応)、HDMI 2.0 x 2

デスクで使う上で小さくなく大きくもない 27 型は程よいサイズ感だ。また4K 対応のメリットは、解像感が高く、高画質で写真がリアルに見えるという点と文字が綺麗にはっきり見える、そして作業スペースも広く使えるということで嬉しい点だ。

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IPSパネルなので、斜めからモニターを見ても色の見え方が変わらない。セカンドディスプレイなど画面が増えれば必須性能である。視野角は水平 178°、垂直 178° と広視野角を備えている。

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さらにノングレア仕様なので、モニターに自分の姿や環境が反射しないので集中してモニターを見ることができる。MacBook Pro のモニターにはノングレアのシートを貼って使用しているが、最初からノングレアというのは何も気にせず使えていい。

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ベゼル(モニターの枠)は狭いので、モニターを並べた時もその隙間が気になりにくいというメリットがある。

色に関してだが、業界標準の sRGB と Rec.709 が 100% カバーされており安心だ。映像においてもHDR10に対応しているので、HDRの動画制作にも安心して取り組める。

本機は出荷前のプレキャリブレーションが行われ、CalMAN Verified としても認定されている。色を重要視するうえでこれ以上ない安心感である。

実際に使ってみると、ΔE<2というムラの少なさでキャリブレートされているので、写真の色は画面上で忠実に再現され、編集作業時に正確に確認することができる。自分の写真を映し出した時に感じ取れるくらい素晴らしいものであった。

キャリブレーションなし(出荷時の状態)でも色の再現性は高く、キャリブレーションした MacBook Pro と比べてもその色の差はほぼ感じられなかった。私のキャリブレーション設定は殆どの世界のフォトコンテストで審査されている基準( 色温度D65、120cd / 平方m、ガンマ2.2 )に合わせている。

一方でキャリブレーション後に比較した感じだと、少し輝度が高い程度で色に関しては出荷時の状態でも完璧だった。ただし、使用時間が長くなればなるほどモニターの状態が変わってきてしまうので、どんなに良いモニターを使用していても定期的なキャリブレーションは必要である。

ハードウェアキャリブレーションに対応している。

ハードウェアキャリブレーションに対応している。

ところで、PA279CV の魅力の1つがほとんどのマルチメディアデバイスをサポートする豊富な入力ポートだ。USB ハブとして使用することも可能で、周辺機器と接続するので便利だ。そして USB Type-C ポートではデータ転送、DisplayPort に加え、65W の充電にも対応する。

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そのほか、エルゴノミクスデザインを採用したスタンドは高さ調整 0~150 mm、左右角度調節 -45~+45°、縦回転 -90~+90°、上下角度調節上 35~下5° で快適な視聴体験を実現することが可能となっている。実際に触れてみると、土台がしっかりしているのでスムーズでストレスなく調整することができる。見た目もシンプルで高級感があるのも良い。

縦位置の写真に適した90°ピボットも可能。

縦位置の写真に適した90°ピボットも可能。

なお、モニターのメニューは日本語にも対応しているので安心。タッチ操作のモニターも使用しているが、個人的にスイッチタイプの方が操作しやすいのでとても嬉しい。

星景ポートレート写真家として、このモニターを使用してみて一番いいと感じたのが、星景写真を現像した時にシャドー部が非常に見やすかったところだ。光沢のモニターや解像度が低いモニターだと確認しづらかった部分だが、ノングレアによる低反射と4Kのもたらす解像感の組み合わせにより、より鮮明に確認することができる。これによりより精密な写真の編集ができるのは一番のメリットだと感じた。

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4.アマチュアも良いモニターを

ちなみに筆者が現在使用しているモニターは 27 型と 24 型のグラフィックモニター。どちらも購入時は 20 万円以上と高額だった。PA279CV もこれだけの機能や品質だと 20 万円近くするのでは? と心配する方も多いだろう。しかし、このモニターの魅力はなんといってもその価格で、なんと48,927円( 2020年12月現在 直販価格、税別)

「 アマチュアだけど良いモニターを使いたい 」、「 プロだから高くなければダメだ 」という壁をぶち破ったモニターがこの PA279CV だ。

良いモニターを使うだけで作品も良くなるのは間違いないので、買い替えやステップアップしたい方、コストを抑えつつ品質を求める方は検討の価値がある。コストパフォーマンスに優れておりメリットが多く、筆者自身も導入を決め、発売日の予約購入をしたほど推奨できるモニターだ。

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