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星景写真家・北山輝泰の日本星空名所案内 第20回 中部編~ 08

Photo & Text:北山輝泰



TOPIX

三月に入り少しずつ春の訪れを知らせるニュースも多く見受けるようになりました。とはいえ、まだ夜更けや朝方は寒さの残る日々。春隣に太平洋から伊勢湾・三河湾までを一望しながら星景撮影はいかがでしょうか?
今回の日本全国の星空名所第 20 回目は愛知県にある渥美半島先端、伊良湖岬を取り上げました。ぜひ、ご覧ください。 by 編集部

<本記事は 2024 年 3 月現在の情報です。ご覧いただく時期により状況は記事内容と異なる場合がございます。>

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皆さん、こんにちは。星景写真家の北山です。暖かい日もポツリポツリと増え、少しずつ春の気配を感じるようになりました。しかし夜はまだまだ寒くダウンは手放せません。

春は天の川撮影が面白くなる季節ですが、夜中から明け方の撮影で一番寒さが辛い時になります。みなさまも星景写真の撮影で風邪を引かれぬよう十分お気をつけください。さて、今回は久々の中部編ということで、愛知県の撮影スポットをご紹介したいと思います。

Index

1.愛知県の撮影スポット

今回ご紹介するのは、渥美半島の最先端にある「伊良湖岬灯台」です。「いらこ」と呼んでしまいそうですが、正しくは「いらご」と読むそうです。以前ご紹介した爪木崎灯台のように岩壁の上にある灯台とは違い、伊良湖岬灯台が立っているのは海のすぐそばで、風が強い日は波飛沫で灯台の壁が濡れてしまうほどの距離にあります。白色で塗られた灯台の壁と青い海との対比は非常に美しく、ぜひ晴れている日に訪れていただきたい場所です。

灯台が立つ場所までは駐車場から続く海岸沿いの遊歩道を歩いていくことになりますが、徒歩で5,6分程度かかることと、遊歩道自体が少しカーブしているため、駐車場の光はほとんど届きません。また、灯台周辺も街灯などはないため、月明かりがないタイミングに訪れれば満天の星を見ることができるでしょう。

今回私は明け方の部分月食を撮影するために訪れたため(写真1)、夜は明るい月がある状態で撮影することになりましたが、その写真をお見せしながら伊良湖岬灯台周辺での星景写真撮影のポイントをご紹介したいと思います。

写真1

カメラ: OM SYSTEM OM-1 レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
シャッター速度:1/50秒 ISO感度400 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

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2.伊良湖岬灯台周辺で撮る星景写真

伊良湖岬灯台を被写体に星景写真を撮影する場合は、遊歩道に三脚を立てて撮影することになります(写真 2)。
その場合、東南から西にある星空と一緒に撮影することができますので、例えば春の時期は日没後の西の空へと沈んでいく冬の星座や明け方東南の空から昇る天の川など、時間に合わせて色々な星空と撮影することができます。ただし西の方向には三重県の街明かりがあり多少光害の影響は受けてしまうため、光害カットフィルターなどを準備するのが良いでしょう。遊歩道の幅はおよそ 5m ほどで三脚を立てても通行の邪魔になることはありませんが、むやみやたらと機材を展開すると他の方の迷惑になりますので、周囲への配慮を忘れずに譲り合って撮影するようにしましょう。

灯台との距離はそれなりに近いため、標準の画角では少々窮屈な作品になってしまいます。灯台周辺で撮影する場合は、20mm 以下の広角レンズ(できれば14mm~16mm の超広角レンズ)を準備して撮影するのが良いでしょう。ちなみに、南の空は海しかなく眺望が開けていますので、秋〜冬は水平線ちょっと上を弧を描くように移動するりゅうこつ座のカノープスもしっかり見ることができます(写真 3)。

海沿いでの撮影になり、タイミングによっては立っていられないほどの突風が吹くこともあります。風が強いなと思ったら三脚を低くして撮影するか、撮影自体をやめるという判断も大事になってくるでしょう。

写真2

カメラ: SONY α7CR レンズ: FE20mm F1.8G
シャッター速度:0.5 秒 ISO 感度 6400 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

写真3

カメラ: OM SYSTEM OM-1 レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
シャッター速度:5 秒 ISO 感度 1600 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)
20 枚を比較明合成

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3.伊良湖岬灯台のシンボル

灯台をよく見ると、そのてっぺんには風見鶏が付けられています。これは風向計と呼ばれるもので、風がどちらの方向に向かって吹いているのかを調べるものです。灯台の全景と星空を撮影した後はぜひこの風向計を被写体に星空を撮影してみるのも面白いでしょう(写真4)。

標準から望遠レンズを使って風見鶏にピントを合わせれば、背景の星がほどよくボケますので、風見鶏に視点がいくような写真に仕上げることもできます(写真 5)。

写真4

カメラ: SONY α7CR レンズ: FE 70-200mm F4 Macro G OSS II
シャッター速度:1.6 秒 ISO 感度 3200 絞り:f4 ホワイトバランス:AUTO

写真5

カメラ: OM SYSTEM OM-1 レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
シャッター速度:1/50 秒 ISO 感度 400 絞り:f2.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

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4.伊良湖岬灯台と対峙するもう一つの明かり

灯台周辺から海の方をよく見ていると、規則的に点滅している一つの明かりが見えます。これは伊良湖と伊勢志摩の中間、神島にある「神島灯台」の灯りです。伊良湖岬灯台と交互に点滅を繰り返す様子は、まるで灯台同士で合図を送りあっているように見えます。(写真6)

「伊良湖水道」と呼ばれる伊良湖と神島の間の航路を通る船の安全をこの 2 つの灯台が守っているのだということがこの 2 つの灯りでとてもよく分かります。

写真6

カメラ: SONY α7CR レンズ: FE20mm F1.8G
シャッター速度:0.5 秒 ISO 感度 6400 絞り:f1.8 ホワイトバランス:蛍光灯(白色)

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5.伊良湖岬灯台へのアクセス

伊良湖岬灯台へは自家用車、もしくは公共交通機関を使って行くことができます。自家用車の場合は東名高速道路の音羽蒲郡 IC で降りたあと、一般道を走りおおよそ 1 時間 30 分ほどで恋路ヶ浜駐車場に到着します。そこからは徒歩で灯台に向かうことになります。一般道が長く少し移動が辛いですが、途中に道の駅などもありますので、休憩を取りながら向かいましょう。

公共交通機関を使う場合は、JR 豊橋駅から渥美線に乗り換え、三河田原駅へと向かいます。そこから豊鉄バスに乗車し、終点の伊良湖岬または一つ手前の恋路ヶ浜で下車すると徒歩で灯台へと向かうことができます。恋路ヶ浜周辺には宿泊施設もありますので、星景写真を撮影される場合はこちらを活用するようにしましょう。そして、伊良湖岬灯台は夕陽が美しく見られるスポットとしても有名です。到着を少し早めて、ぜひマジックアワーに染まる空と灯台の灯りの写真を撮るのも面白いでしょう(写真 7)。

カメラ: SONY α7CR レンズ: FE 70-200mm F4 Macro G OSS II
シャッター速度:1.6 秒 ISO 感度 3200 絞り:f4 ホワイトバランス:AUTO

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6.まとめ

中部編、いかがでしたでしょうか?今回は愛知県渥美半島にある伊良湖岬灯台をご紹介しました。季節問わず撮影できる被写体であること、また撮影スペースが広く色々な方向から狙えるため、時間帯問わず撮影できるまさに星景写真のスキルアップにおすすめの場所になります。ぜひ一度は訪れてみてくださいね!それでは次回の更新もお楽しみに!星景写真家の北山輝泰でした。

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著者について
北山輝泰 星景写真家 1986年東京生まれ。 日本大学芸術学部写真学科 卒業 大学在学中、星好きだった恩師の影響で宇宙や天体写真に興味を持つようになる。卒業後、福島県鮫川村に移住をし、本物の星空に触れる生活を始める。 その後、天体望遠鏡メーカーに転職し、営業として7年勤務した後、星景写真家として独立。現在は天文雑誌「星ナビ」のライターをしながら、全国で星景写真のワークショップや創作活動を行っている。ワークショップ詳細については Facebookページ「ナイトフォトツアーズ」にて。