夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第8回:光跡夜景の撮り方
Photo : Takuya Iwasaki
TOPIX
夜景写真家・岩崎拓哉の夜景写真撮影講座も第8回目となりました。最近は岩崎氏のテレビ出演の機会も増えてきました。ご活躍、喜ばしい限りです。さて、今回は夜景写真でも人気の「 光跡 」の撮り方について解説いただきました。光跡のシャッタースピードによる絵の変化も、ぜひ参考にしてください。 by 編集部 |
6月に入り梅雨が本格化しましたが、今年は意外と晴れもようが続いているように感じます。私は前回の記事執筆後から月の半分は静岡に出向いて梅雨入り前の夜景撮影を楽しんできました。この時期は天候が不安定で、特に富士山のシルエットを入れる夜景撮影は普段よりも一苦労。今回は夜景撮影ジャンルの中で人気の高い光跡の撮影テクニックについて解説します。静岡で撮影した夜景写真も作例として豊富に用意しました。
■光跡撮影の基本
光跡撮影は最近の夜景撮影スタイルの中でも特に人気があり、屋形船の光を取り込んだり、車のヘッドライトやテールランプを写し込んで写真にアクセントを加えるようなシチュエーションが多くの写真愛好家を魅了しています。光跡の撮影は一般的な夜景撮影とテクニック的に大きな違いはありませんが、以下の4点は押さえておきたいところです。
写真2 カメラの設定
(1)三脚でカメラを固定する
光跡は長秒時露光が必須となるため、手持ち撮影は困難。安定した三脚を必ず用意したい。道路を見下ろせるような場所はフェンスが高いところが多いので、全高2m前後の中~大型三脚が必要になることも。
(2)撮影モードは「マニュアル露出」または「シャッター速度優先」
シャッター速度を好みの秒数に設定する必要があります。夜景撮影に慣れている方であればマニュアル露出がおすすめ。
(3)レリーズを使う
光跡撮影はタイミングが重要。セルフタイマーだとベストタイミングを逃す可能性があるので、利リモコンレリーズは必ず用意したいところ。
(4)ISO感度を低めに設定
露出時間をできるだけ長くするために、ISO感度は100~400ぐらいが目安。
■光跡の有無を比較
まず、光跡の無い夜景写真と、光跡を入れた夜景写真を比較してみましょう。撮影場所は静岡県富士市の日本製紙・富士工場の付近になります。車が両方向から頻繁に来るため、テールランプを入れるパターンとヘッドライトを入れるパターンが撮影できます。(下記2点の写真は同一の設定で撮影)
写真3 光跡なし
写真4 光跡あり
■光跡の最適なシャッター速度
光跡を入れるとき、適正なシャッター速度を見極める必要があります。今回は高速道路を見下ろせる場所での作例になりますが、目安として10秒以上のシャッター速度だと光跡が綺麗に撮れました。車の通行量が少ない場所や速度が遅い場合は、よりシャッター速度を長くする必要があります。以下の作例は2段絞り分ずつシャッター速度を変化させています。
(1)1/15秒
写真5
(2)1/4秒
写真6
(3)1秒
写真7
(4)4秒
写真8
(5)15秒
写真9
■光跡の種類別撮影テクニック
ここまで車のライトを例にした光跡の作例を紹介してきましたが、光跡には大きく4つの種類(車・電車・飛行機・船)があり、車+電車など複数の光跡を組み合わせて撮れる場所もあります。
(1)車
光跡の中で最もスタンダード。通行量の多い道路を遠くから撮影するようなシチュエーションであれば、初心者でも撮影しやすい。道路との距離が遠くなるほどシャッター速度は長めに設定したい。
写真10 勘助坂(静岡県富士市)
(2)電車
俯瞰系の夜景スポットでの撮影がメインだが、線路の付近で撮影ポイントを探すのも面白い。下の写真は工場夜景スポットで、じっくりと電車を待ちながら撮影した。電車は数秒で通り過ぎることが多いため、シャッター速度をやみくもに長くすれ良いわけではない。8秒~15秒ぐらいが目安。電車の光跡を明るく見せるならISO感度は気持ち高めの設定が良いだろう。
写真11 大興製紙とJR東海道線(静岡県富士市)
(3)飛行機
撮影場所が空港付近など限られるが、飛行機の光跡だけでなく、空港や街明かりも一緒に入れた方が絵になる。多重露光で多くの光跡を入れても面白いだろう。
写真12 さくらの山公園(千葉県成田市)
(4)船
都心では隅田川で屋形船の光跡を撮影するのが流行っているが、川崎の工場夜景スポットだとタイミング次第だが、工場とクルーズ船の光跡夜景が撮れることも。船は全体的に動きが遅いので、シャッター速度の目安は20~30秒ぐらい。
写真13 大川緑地(神奈川県川崎市)
■今月のお勧め夜景スポット「薩捶峠」
古くから旅人が行き交い、かつては箱根峠などと並んで難所とされた場所。東海道由比宿と興津宿の間にあり、東名高速・国道1号・東海道本線の光跡を撮影できる有名スポット。天気が良ければ富士山のシルエットも写真に写せる。日没後のトワイライトタイムがおすすめ。駐車場からは暗い道を数分歩くため、懐中電灯を忘れず。
写真14 三本の光跡