世界中の多くのダイバー達が憧れるハンマーヘッドシャーク。
このサメの生態ははっきりと解明されてはいないのですが、異様な金槌頭は電気ソナーの役割を果たし、進化の証とされています。また、サカナやイカなどを好んで食べ、人を襲うことはあまりない、と言われています。
そして、このハンマーヘッドシャークはなぜか群れる…
同じ方向を向いて行進します。
日本では、スキューバ・ダイビングでこのハンマーヘッドの群れが見られることで知られているのは、与那国島(よなぐにじま)と伊豆の神子元島(みこもとじま)の2箇所。
伊豆の神子元島には主に6月〜10月にかけてやってきます。
そして、毎年たったの1〜2週間、中でも特別な時、まさに奇跡の時が訪れます。
神子元島の周辺にできた大きな釜のような地形に、無数の、多いときは100尾オーバーのサメが集まるのです。
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「光り輝き近づく姿態」
大きなボディを左右に揺らし、流れに逆らって悠然と泳ぐ絶対王者の姿、その巨体が太陽の光を反射してキラキラ輝きながら近づいてくる光景を見たら、その迫力に息をのみます。
Camera Data:
SONY コンパクトデジタルカメラ Cyber-shot DSC-W300、
純正水中ハウジング「マリンパック」、INON ワイドコンバージョンUWL-100
F2.8 1/160秒 ISO100 ストロボなし
補正:Adobe Photoshop CS4
撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2010.07.14撮影
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ここにサメたちが集まるのは水温の関係ではないか、と言われていますが、はっきりしたことは解りません。とにかくここを目指してハンマーヘッドの大群が行進してきて、少しの間とどまり、また出て行き…を繰り返すのです。
「オヤジの夏休み」でお馴染みの(?)私は、毎年このときが来るのを待っています。
その日はいつやってくるのか、誰にも解りません。
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「神子元スペクタクル」
彼らは私たちダイバーの存在を全く意に介さず、その巨大なヒレが触るくらいの距離でかすめて行きます。群れの数は多いときは100尾を超えますので、ワイコンを使うべきか、標準を使うべきか悩みます。
Camera Data:
SONY コンパクトデジタルカメラ Cyber-shot DSC-W300、
純正水中ハウジング「マリンパック」、INON ワイドコンバージョンUWL-100
F2.8 1/250秒 露出制御/マニュアル ISO200 ストロボなし
補正:Adobe Photoshop CS4
撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2010.07.14撮影
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これほどのサメ達がやってきても、海の条件が良くないと、見ることもできませんし、写真に収めることも困難です。
例えば昨年、2009年は、透明度5m程度、恐ろしく濁った海況の中で、この大行進が行われました。
そのため、その場に居合わせることはできましたが、きれいな写真に収めることはできませんでした。
そして今年、7月14日。
ハンマーヘッドが大行進するときがやってきました。海況も良く快晴、透明度もよく、奇跡の海に遭遇することができました。
ハンマーヘッドの大群が行進していく様を、触れるほどの近距離で見ることができる海、写真に収めることができる海は、この場所のこの時期をおいて他には、そうそうないのではないでしょうか。
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「蒼の艦隊」
潮の流れが速い急流を好むハンマーヘッド、撮影もまた急流のまっただ中。身体を固定させてブレずにシャッターを切るだけでも難儀です。コンパクトデジタルカメラはダイナミックレンジが狭いため、露出が上下で極端に異なる海中のワイドではすぐに白飛び、黒潰れする恐れがあります。
Camera Data:
SONY コンパクトデジタルカメラ Cyber-shot DSC-W300、
純正水中ハウジング「マリンパック」、INON ワイドコンバージョンUWL-100
F2.8 1/160秒 ISO100 ストロボなし
補正:Adobe Photoshop CS4
撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2010.07.14撮影
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今回の写真は、コンパクトデジタルカメラで撮りましたが、Cyber-shot DSC-W300は既に生産終了している旧モデル、良いところも悪いところもあります。特に海の中ではとんでもないジャジャ馬で、失敗写真も多いですが、成功すると良い写真が撮れます。今回の撮影には自分なりに多少の工夫をし、マニュアル操作で撮影しています。苦肉の策です。
また、Photoshop による補正も行って仕上げています。
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「踊るハンマーヘッドシャーク」
目指す大釜に着くと、サメたちは隊列を崩して、思い思いの動きをします。このときは大きなボス(?)を中心に、じゃれるように周りを旋回しはじめました。大艦隊にも主従や規律があるのでしょうか。
Camera Data:
SONY コンパクトデジタルカメラ Cyber-shot DSC-W300、
純正水中ハウジング「マリンパック」、INON ワイドコンバージョンUWL-100
F2.8 1/250秒 露出制御/マニュアル ISO200 ストロボなし
補正:Adobe Photoshop CS4
撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2010.07.14撮影
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なによりも天候と海の状態が良かったことが撮影環境を後押ししてくれたことは間違いありません。
更に、案内してくれました「神子元ダイビングサービス」のガイドさんの絶妙の予測とコース取りによって、大行進を間近で、また群れとの遭遇を何度も体感することができました。
これら多くの要素が重なって、コンパクトデジタルカメラながら、記念に残る写真がいくつも撮れたと思っています。いろんなことに感謝です。
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「進化型飛行物体」
群れが行進するさまは圧巻ですが、単体でも魅力的な被写体です。神子元島では、初夏は根の周囲でサメが見られるため、根を入れた構図で撮影ができます。真夏から秋にかけてはサメの回遊が中層に移動するため、根を入れたりバックを工夫しての構図はしにくくなります。
Camera Data:
SONY コンパクトデジタルカメラ Cyber-shot DSC-W300、
純正水中ハウジング「マリンパック」、INON ワイドコンバージョンUWL-100
F2.8 1/250秒 露出制御/マニュアル ISO200 ストロボなし
補正:Adobe Photoshop CS4
撮影地:伊豆 神子元島 カメ根 2010.07.14撮影
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次回は、これらの写真に至るまでのオヤジの苦戦と苦悩を、お恥ずかしながらお話ししますね。
そうそう、神子元ダイビングでサメに遭遇したリアルレポート形式でお届けします。
もしかすると撮影ノウハウの参考にもなるかもしれません。
>> NEXT 「オヤジの夏休み2010 〜神子元島ダイビング〜 ハンマーヘッドシャーク 奇跡の大行進(2)」
>> 目次 「コンパクトデジカメで撮る水中写真 オヤジの夏休み 奇跡の海」
(初出 2010/07/14)
スタジオグラフィックスで「水中写真テクニック講座 中野誠志の 海Photo! 楽Photo!」の連載
>> デジタルカメラとデジタル画像の活用サイト「スタジオグラフィックス」 トップページへ
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