夜景写真家・岩崎拓哉の夜景撮影講座
第18回:魚眼レンズを活かした夜景撮影
TOPIX
今月の岩崎拓哉の夜景撮影講座は、夜景写真の魅力を引き出すアイテムの1つである魚眼レンズに関して解説をいたします。魚眼レンズを使うポイントや作例を織り交ぜながら解説をいたします。魚眼レンズの活用にお役立てください。 by 編集部 |
夜景撮影ではフルサイズ換算で16~17mm前後から始まる超広角レンズがあれば、ほとんどのシーンで全景の撮影ができますが、魚眼レンズがあるとさらに広範囲に写真を写せます。構図によっては作品性を大幅に高めることができます。今回は魚眼レンズを使うポイントや作例を紹介したいと思います。
■魚眼レンズ入門
写真用の魚眼レンズには大きく分けて「円周魚眼レンズ」と「対角魚眼レンズ」があり、どちらも歪曲収差を意図的に出していますが、円周魚眼は写真が円形になり、意図的にケラレが発生します。一方で対極魚眼レンズは画面全体に映像が映る点では一般的な交換レンズと変わらず、画面の上下に大きな歪みを発生させます。通常の交換レンズに比べ、歪曲収差が大きいため違和感が出るのですが、構図やシチュエーションによっては歪ませた方が作品性がむしろ高まります。今回は夜景撮影で使われることが多い「円周魚眼レンズ」を使って解説します。
写真2 著者が愛用している魚眼レンズ
■魚眼レンズが向く構図(16mm)
魚眼レンズを使った夜景撮影は構図によって向き・不向きがあると考えられる。一般的には広角レンズでも写せないような超高層ビルを見上げるような構図で最も力を発揮する。下記の写真3を見て頂くと広角レンズで撮った写真は高層ビルがギリギリ写っているものの、圧迫感のある写真となるが、写真4の方は自身の斜め後ろに見えるビルも写り込み、手前の高層ビルの圧迫感も無くなっている。
写真3 広角レンズで高層ビルを撮影(16mm)
写真4 魚眼レンズで高層ビルを撮影(15mm)
■魚眼レンズが向かない構図
一方で魚眼レンズで撮影すると違和感が出てしまう構図もある。正面の建物を撮るような構図だと建物の歪みが強調されてしまう。下記の作例は円形の建物を写しているが、カーブを描いた建物を中心に持ってくると不自然な歪みとなってしまう。広角レンズで違和感が無い構図であれば、無理に魚眼を使う必要は無いだろう。
写真5 広角レンズで正面の建物を撮影(16mm)
写真6 魚眼レンズで正面の建物を撮影(16mm)
■魚眼レンズを活かした作例1:高層ビル
ここからはシチュエーション別に魚眼レンズの作例を紹介したいと思います。1つ目は最も定番と言える高層ビルを写し込む作例。ただ高層ビルを入れるだけでは面白くないので、車の光跡を入れて、さらに画面右上に空白ができるので街灯を入れて構図のバランスを取りました。
写真7 街灯と光跡をアクセントに高層ビルを写す(17mm)
■魚眼レンズを活かした作例2:道路・橋
レインボーブリッジが見渡せる芝浦ふ頭。特徴的なループ橋全体を撮影しても絵になるが、あえて画面の中心に持ってくる構図も面白いと思った。左上に空白ができてしまったが、月明かりがあれば最高だ。
写真8 ループ橋を見上げる(17mm)
■魚眼レンズを活かした作例3:都会
目の前にライトアップされた東京駅や高層ビルが見渡せるKITTE 屋上庭園。夜景スポットとしても人気だが、ビルとの距離が近いため、全体を写すなら魚眼レンズが役立つ。右上に空白ができてしまうが、月明かりのおかげで良いアクセントを入れることができた。ちなみに三脚は使えないので、高感度+高速シャッターでの撮影が基本。
写真9 丸ノ内の高層ビル群を写す(15mm)
■今月のお勧め夜景スポット「王子町」
製紙工場を間近で眺められる撮影スポット。目の前に見える大きな煙突を写し込むには16mmクラスの超広角レンズでも厳しいほど。魚眼レンズが最も活かせるシチュエーションだ。車の光跡もタイミングを狙って入れるのも面白いだろう。
写真11 煙突と車の光跡(17mm)