萩原和幸の新製品レンズレビュー
Tokina AT-X 11-20 PRO DX<スナップ編>
TOPIX
2015 年2月、ケンコー・トキナーの人気超広角ズームレンズ「 AT-X116 PRO DX 」と「 AT-X116 PRO DXⅡ 」の後継機種、「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」が発売されました。従来機種とほぼ同サイズの鏡筒に、テレ側4mm をプラスして、ズーム全域 F2.8 という贅を尽くした新レンズの魅力を、写真家・萩原和幸が豊富な作例をお目にかけながら2回に渡って解説します。前編である今回は、スナップ編。広角スナップの妙をお楽しみください! by 編集部 |
■ 現場で求められる使い勝手の良い高性能
ケンコー・トキナーから、APS-C センサーサイズ機用の広角ズーム「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」が発売された。これまでケンコー・トキナーの代表的広角レンズといえば、評判のよかった「 Tokina AT-X116 PRO DX 」と、新コーティングが施された「 Tokina AT-X116 PRO DXⅡ 」だったが、その後継レンズとして発売されたのが「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」だ。
「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」は 35mm 判換算で約 17~32mm 域をカバーする、ズーム比 1.8 倍、全域で開放値 F2.8 の大口径超広角ズームレンズだ。前述の通り「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」は「 Tokina AT-X116 PRO DX 」および「 Tokina AT-X116 PRO DXⅡ 」の後継レンズだが、このひと言では片付けられない技術が盛り込まれている。
まず、「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」は従来機と比べてレンズ全長や重量の変化がほぼ無い状態で、テレ側を 16mm から 20mm へと4mm も伸ばしている。レンズ口径こそ 77mm から 82mm へと広がったが、ズーム域が伸びた時点で旧レンズよりもサイズが大きくなっても不思議ではない。このサイズへのこだわりは、従来機のサイズが APS-C サイズセンサー搭載カメラに装着する超広角ズームレンズとしてベストバランスであると判断したからだろう。筆者はこれまでのレビューでもたびたび書いているが、カメラ本体はもちろん、レンズのサイズに関しても「 実際の使い勝手の良さ 」を重要視している。性能を求めるあまりに使い勝手が損なわれた機材は、少なくとも筆者の現場では求めていないのだ。
広告の世界では「 高性能をコンパクトに 」という表現をよく使うが、現実はそう簡単ではない。超広角レンズにおいてテレ側を4mm 伸ばすとなると、レンズ構成からの見直しは必然で、鏡筒内のレンズ枚数は当然増えることになる。「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」では、12 群 14 枚構成になり、前群に P-MO 非球面レンズを配置、後群にガラスモールド非球面と SD ガラスを3枚採用している。開放値 F2.8 という明るさに加えてワイド側 11mm という広さにテレ側 20mm、当然「 収差 」との戦いになるわけだが、そのための光学的なポイントを、レンズ構成と贅沢な採用レンズに持たせ、各収差を効率的に補正しつつ、広角ズームレンズのもう一つの敵である「 周辺画質の安定 」を図っている。開放値全域 F2.8 でワイド側が 4mm も伸びて、サイズ変わらないなんていいじゃん!と、我々ユーザー側からすれば嬉しいスペックが並ぶが、昨今の猛烈な高画素競争にも対応しつつの、ほぼ同サイズでの発売となった「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」から、ケンコートキナーの高い技術力と本当にまじめな性格が伺えるのだ。
トキナーレンズ特有のフォーカスモード切替機能のことで、オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り替えが、フォーカスリングをスライドさせるだけでできる。
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■ AT-X 11-20 PRO DX の画角比較
ここでは、AT-X 11-20 PRO DX のワイド端からテレ端にかけての画角の違いを比較してみよう。使ったカメラは Canon EOS 70D だ。広角レンズで汎用性の高い焦点域をカバーしつつズーム全域開放値 F2.8 なのがうれしい。
次に、ワイド端とテレ端で、それぞれ開放 F 値 F2.8 にて撮影最短距離 0.28m での接近撮影。ここまで寄って大きくボカすことができるので、広角らしい迫力を持たせつつ、背景をボカした独特の効果を作品に盛り込める。
以降の写真で、実画像の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示には注意してください。
■ AT-X 11-20 PRO DX を使ったスナップ作例
広角ズームのスナップの楽しさは、被写体をダイナミックに見せるのか、広く切り取るのかという二面性にあると筆者は考える。つまり被写体に寄るのか、それとも引くのか、絞りを開けるのか絞るのか……。こうした二極の面白さを求めてロケ地へと脚を運ぶ。絶対的なフットワークが必要な広角スナップは、「 写真は引き算 」というセオリーだけでは語れない構図ワークが必要だ。見たままには撮れないもどかしさが新たな発見につながる。
以降の写真で、実画像の文字をクリックするとカメラで撮影した実際の画像が別ウインドウで表示されます。容量が大きいのでモバイル端末での表示には注意してください。
ケンコー・トキナーらしい発色に感嘆。空の青と壁の黄の発色は最高に好み。( 写真12 )
みなとみらいを屏風におさめたような、そんな気分で。ここでも好みの良い青が出てくれた。( 写真13 )
中華街のお気に入りのお店で。この雰囲気をそのまま切り取る。( 写真17 )
目に飛び込んできた八重桜がとても綺麗。逆光、最短撮影距離、絞り開放。このレンズのポテンシャルの高さが伺える。( 写真18 )
夕暮れの江ノ島にて。昼間の色と夜の色が交差する、素敵な時間帯。
刻々と変わっていく空と海の色を、いい感じにこのレンズが捉えてくれた。
■ 作品例:撮影を終えて
「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」はテレ側が 20mm。35mm 判換算で約 32mm となる。標準レンズ的とは言えないものの、レンズの歪みによる誇張の少なさを求める場面でも対応できるので、これ1本で広角スナップの表現の幅はかなり広がるはずだ。スナップにおいてテレ側4mm の広がりはとても大きいと実感する。今回は空をやや意識しながら撮影したが、多くのユーザーを虜にしているトキナー・レンズらしい青の表現力に筆者もほれぼれしてしまった。
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■ 次回予告
次回はポートレート編
ポートレートでは広角レンズ使用は、一種のスパイス的使い方が定番。スパイスを上手に効かせられるかは作品一連にかかわるポイントだ。「 Tokina AT-X 11-20 PRO DX 」を味方に、広角レンズのポートレート作品をお見せしながら、ポートレートにおけるこのレンズの魅力に迫ります。
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
萩原 和幸