武石修のレンズレビュー
シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
ポートレート編
Model:長澤佑香 Photo : Osamu Takeishi
TOPIX
今回の武石修のレンズレビューは シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary をポートレートでレビューいたします。本モデルは 2021 年3月より日本国内で販売が開始されたモデルです。今回はモデルを長澤佑香さんに依頼いたしました。ポートレートでその描写をご覧ください。 by 編集部 |
Index
1.手軽に使える大口径標準ズーム
今回は 2021 年3月に発売されたシグマの標準ズームレンズ「28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」を紹介する。35mmフルサイズセンサーに対応しており、ソニーEマウントとLマウント用が用意される。実勢価格は税込97,900円前後( 2021年 10月現在、当社調べ )となっている。
大口径の標準ズームレンズといえば「24-70mm F2.8」クラスが代表的だが、本レンズは明るさをF2.8 のままで広角端を 28mm スタートにすることで小型軽量化を図ったモデルだ。また、24-70mm F2.8 よりも安価で買いやすいのもポイントとなっている。
24-70mm F2.8クラスのレンズは高い光学性能と引き換えに、大きく重いのが一般的。例えば同社の「24-70mm F2.8 DG DN | Art」は、最大径 × 長さが 87.8 × 124.9mm 、重量が 830g 。その点本レンズは同 72.2 × 103.5mm で、470g と重さも半分近い。
今回も半日くらいソニー α7 IIIに付けて持ち歩いていたが、思ったより軽いので全く苦にならなかった。それでいて24-70mm F2.8 に近いスペックなのだから、スナップから本気の作品作りまで撮影者の要求に応えてくれるように感じた。
2.ボディのビルドクオリティも高い
レンズ構成は 12 群 16 枚( FLD2 枚、SLD2 枚、非球面レンズ3枚)ということで、それなりの物量が投入されている。フィルターサイズは 67mm だ。
やはり鏡胴が細いのでホールドもしやすく、ズームリングやピントリングが回しやすい。24-70mm F2.8 クラスをミラーレスカメラに付けるとレンズ側が重くなってしまうが、本レンズはミラーレスカメラのボディと重量バランスが良くなる点もオススメポイントだろう。
鏡胴はアルミニウムと同等の熱収縮率を持つポリカーボネート「 TSC 」を多用しているとのことで、、同社 Art シリーズに近いイメージで安っぽさも無く、精密感を感じられる作りとなっていた。デザインも α7 IIIとマッチングの良いものだ。
AF も十分なスピード。今回は全て瞳AFを使ったがこちらの追従性も純正レンズと変わらないレベルに感じた。なお、本レンズには手ブレ補正機構は入っていないが、ボディ内の手ブレ補正を利用できる。
3.作品による評価
今回はソニーα7 IIIに装着して試用した。作品はAdobe Lightroom Classicで現像している。現像時には本レンズのプロファイルを適用しており、歪曲収差と周辺減光が補正されている。
ご注意
写真の 実画像 の文字をクリックすると、カメラで撮影した実画像が別タブで表示されます。ファイルサイズが大きいのでモバイル端末での表示にご注意ください。文中のサムネイル画像をクリックすると、リサイズされた画像がポップアップ表示されます。
広角端で少し絞って撮影。全体的にヌケが良い描写が印象的。基本的な性能は高いと言えそうだ。
直射日光が入る逆光を作ってみた。ゴーストがほとんど目立たないレベルに抑えられてあるのに加え、コントラストもしっかり確保できている。
望遠端の絞り開放にしてボケの具合を見た。ズームレンズではあるが、思ったより自然なボケ方だ。F2.8 なので大きな前ボケも簡単に作れる。
58mm というほんの少し望遠寄りの使いやすい焦点距離も選択できるのはズームレンズの利点。少し絞ると解像力も申し分ない。
一方絞り開放だと、ほんのわずかに柔らかい描写になるようだ。とはいえ、女性ポートレートではこれくらいが使いやすいとも言えそうだ。
標準域で自然な雰囲気を捉えてみた。現像でモノクロに変換しているが、階調再現も問題無い。この写真のみ周辺減光補正をオフにしてみたが、減光自体はさほど大きなものでは無いようだ。
最短撮影距離まではまだ余裕がある距離でのアップ。開放F2.8なので浅い被写界深度でふんわり撮れる。玉ボケは輪郭や年輪が強調されない一般に好ましい形状だ。
これも完全に逆光のショットだが最新のレンズらしく画面がクリア。厳しめの条件で試しているが、それでも画面下部に薄いゴーストが見える程度だ。
広角端で F8 まで絞り込んでみた。やはり絞り開放付近よりも解像力は上がるようで、結構カリカリの描写になった。絞り値の使い分けも面白そうだ。
今回のようなスナップポートレートで使いやすいのが 35mm という焦点距離。被写体から少し離れると、周りの状況も写し込める。
夜景と共に写したが、28mm なら十分広角レンズ的なパースを活かした作画ができる。広角側の玉ボケも比較的自然に感じた。
4.総評
ミラーレスカメラ時代にボディとよくマッチするのは 24-70mm F2.8 よりも本レンズだなというのが正直な感想だ。このサイズ感は本当に取り回しが良く、旅行などでも携行しやすいだろう。広角側の4mm の差もあるのだが、工夫次第で十分広角感のある写真は撮れる。
また F4 通しのズームレンズも人気だが、それより1段明るいと特に暗いシーンでは大いに助かる。最後のカットは ISO2500 だが、ノイズを考えるとこの辺りが1つの限界。F2.8 のレンズで良かったと実感したところだ。
望遠端が 70mm というのは、少々物足りないという人もいるかもしれない。だが、カメラが多画素時代なのでクロップ機能を活用するのも手。するとこの1本だけでもかなり活用シーンが広がると思った。
(以上)
■ 制作・著作 ■
スタジオグラフィックス
武石修
長澤佑香