スタジオグラフィックス プロが教えるデジタルカメラの写真撮影&レタッチテクニック 公式 Official WebSite
SGギャラリー

萩原史郎のH&Yフィルター REVORING Swift Systemの使いこなし



TOPIX

1年ぶりに萩原史郎氏のハーフNDフィルター使いこなしの3回目をお届けします。H&Yフィルター社との出会いをきっかけに、長年レンズフィルターを使用していなかった萩原氏が今回はH&Yフィルターの新システム「 REVORING Swift System 」を解説いたします。さらに進化したH&Yフィルターの新システムの解説をご覧ください。 by 編集部


読者の皆様、こんにちは。風景写真家の萩原史郎です。こちらでは「角形ハーフNDフィルターシステム」を使いこなすための記事を「 春~初夏編 」と「 冬編 」の2回をお届けしているが、今回は趣向を変えて、H&Yフィルターの新システム「 REVORING Swift System 」について、ご紹介と使い方についてお伝えする。

読者の中には、すでに「 角形ハーフNDフィルターシステム 」をお使いの方もいらっしゃると思うが、本稿はそのシステムとの違いを含めてお伝えしたいので、念のためにまず「 角形ハーフNDフィルターシステム 」について簡単に触れておく。

Index

Go To Top

1.H&Yフィルターの角形ハーフNDフィルターシステムとは

この「 角形ハーフNDフィルターシステム 」は、以下の3つの要素から構成されているため、それぞれが重要な役割を果たしている。

  1. アダプターリング:レンズ前枠に直接ねじ込んで取り付ける。レンズとフィルターホルダーのつなぎ役。
  2. フィルターホルダー:アダプターリングにはめ込みネジで締め付ける。ここに角形フィルターをセットする。
  3. 角形フィルター:様々な種類があるので用途によって使い分けることができる。
写真1

4種類のアダプターリングのおかげで、このセットを持っていれば、67㎜から82㎜径、までのレンズすべてに対応できる。

写真2

アダプターとフィルターホルダー、そして角形フィルターを装着。角形フィルターを上下させて、明暗差のある境界部を探して撮影を行うことが基本動作となる。

Go To Top

2.K-Series Basic Set について

H&Yフィルターのホームページを見ると「 K-Series Basic Set 」というセットがある。これはハーフNDフィルター( ソフトGND8 )1枚と、4枚のアダプターリング( 67、72、77、82mm )、フィルターホルダーの基本セットに加えて、ドロップインCPL が同梱されているセットだ。67㎜から82㎜までのアダプターリングが同梱されているため、所持しているレンズの大半に対応できることになる。まずはこうしたセットから初めてみるとよいだろう。

ここでの課題は2つ。1つ目は、アダプターリングをレンズの前枠にねじ込んで装着すること。2つ目はアダプターリングにフィルターホルダーをはめ込んで、備え付けのねじを回してしっかりと固定すること。この2つの動作は慣れてしまえば難しいことではないが、ただ、こういった作業は、すぐに撮影したくて慌てている場合や、朝夕の暗い状況下では若干のハードルとなることは否めない。優れたシステムとは言え、なにもかも完璧というわけにはいかない。

写真3

レンズ前枠にアダプターリングを装着するが、ここがネジ込み式なので、噛み合わないなどといったことがある場合、多少時間がかかってしまう場合もある。

写真4

アダプターリングにフィルターホルダーをはめ込むわけだが、フィルターホルダー側のネジを緩めておかないと、うまくはまらない。

写真5

アダプターリングとフィルターホルダーがきちんとはまったら、ネジをしっかりと締めておく必要がある。締めないままにしておくと落下の危険性がある。

Go To Top

3.REVORING Swift Systemについて

さて「 REVORING Swift System 」は上の課題を改良し、さらに余りある利便性を獲得したシステムと言える。基本的な構造としては「ベース、ブリッジ、アクセサリー」の3つから成る。

写真6

左上:REVORING Swift マグネティック可変式アダプター
中央下:Swift マグネティックドロップインフィルターラック RD100
右上:Swift マグネティック 100mmフィルターホルダー RH100

まずレンズ前枠に取り付ける「ベース」を選択しレンズに装着。「角形ハーフNDフィルターシステム」では、この部分が4種類のアダプターリングから選ぶ仕様なのだが、「 REVORING Swift System 」ではフィルター径が可変式の「 REVORING Swift マグネティック可変式アダプター 」に変更されたことによって、この一枚で対応できるようになった。可変範囲は46-62 ㎜、58-77 ㎜、67-82 ㎜、82-95 ㎜という4タイプが用意されているので、お手持ちのレンズに合わせて選べばよい。まずココが便利になった。

このシステムなら、レンズを変えて撮影をしたくなったときでも、REVORING の口径を変えるだけで付け替えることができる。従来は、別のアダプターリングを装着し直さなければならなかったので、手間も時間もかかってしまった。もともと優れたシステムであるとはいえ、改良されたシステムのおかげでさらに使いやすさと時間の短縮が実現された。その結果、撮影者に心の余裕と時間の余裕がもたらされ、より創作に集中できるようになったわけである。

写真7

全開の状態

写真8

閉じた状態

外枠と内枠を逆方向に回すと開閉することができる。レンズ前枠に装着するときは閉じた状態にする。

写真9

REVORINGを閉じた状態にしたたま、レンズの前枠にかぶせるようにしてはめ込み、指を離すと自動的に全開状態になる。そのあとでREVORING全体を右回転させてきちんとねじ込む。

次にレンズとフィルターをつなぐ「ブリッジ」をアダプターに装着する。筆者が使っているブリッジは「 Swiftマグネティックドロップインフィルターラック( RD100 )」というもので、ドロップインタイプのフィルターを挿入できる。この「ブリッジ」と「ベース」は磁力で簡単かつ強力に付くが、ブリッジ側には凹みがあり、アダプターがすっぽりとはまる仕組みだから、装着ミスも起きにくい。

写真 10

「 REVORING Swift マグネティック可変式アダプター 」に「 Swift マグネティックドロップインフィルターラック( RD100 )を装着する。フィルター使用ラック側の凹み部分をアダプターに重ねるようなイメージだ。

「 角形ハーフNDフィルターシステム 」では、フィルターホルダーをアダプターにはめ込んだ上で、ネジを締め込むという工程が必要だったが、こちらでは取り付ける作業だけになった。コレも便利になった部分であり、暗い中での作業効率が上り、時短に貢献している。ちなみに装着する際は、商品名がプリントされている側を上にすると、ドロップインフィルターも挿入しやすい。

写真 11

「H&Y SWIFT RD100」とプリントされた部分を上側にしてはめ込んでおくと、ドロップインフィルターをはめ込む作業がしやすい。

写真 12

ドロップインフィルターが差し込みしやすい。

最後に「 アクセサリー 」となるフィルターホルダーを「 ブリッジ 」に取り付ける。この部分も磁力式なので操作は簡単だ。ブリッジ側の RD100 には溝が、アクセサリー側のフィルターホルダーには突起が備わっており、その部分同志を合わせるとしっかりとはまり落下もしないようになる。逆にこの部分がきちんとはまっていない場合は、落下の危険があるので注意したいポイントである。

写真 13

「Swift マグネティックドロップインフィルターラック」に「「Swift マグネティック 100mmフィルターホルダー」を装着する。凹凸をしっかりと合わせるようすることがコツ。強い磁力によってピタッと張り付く。

写真 14

フィルターラック側の凸部分と、フィルターホルダー側の凹部分

以上の3つの作業を終えれば準備は完了。あとは使いたいフィルターを「アクセサリー」部に装着すれば撮影ができる。もちろん、この部分も磁力式だから、一貫して簡単な操作となり、撮影までがとてもスムーズである。

写真 15

表面

写真 16

背面

「 REVORING Swift System 」を使う上での注意点がある。ベースとして使う REVORING に厚みがあるため、広角系のレンズでは画像の四隅にケラレが生じる場合があるのだ。ただし、H&Yフィルターではそういう場面に対する策も万全だ。

「 Swiftマグネティックアダプター 」という薄型アダプターがそれである。これは「ベース」に相当するアイテムなので、これを広角レンズの前枠にねじ込んで装着する。もちろん、これも磁力式だから、「ブリッジ」に相当する RD100 もピタッと付く。さらに RH100、そしてフィルターを装着すれば、ケラレのない広角撮影が楽しめる。

また、薄枠アダプターは Revoring 用のマグネットキャップとも互換性があり、アダプターリングを着脱せずにそのままキャップを装着してバックに収納することもできる。

写真 17

レンズ前枠に「Swiftマグネティックアダプター」を装着する。この部分はねじ込み式となっている。

写真 18

アダプターにRD100を装着。

写真 19

さらにRH100を重ねていく。

写真 20

最後に角形フィルターを装着して準備は完了する。

Go To Top

4.冬の実例

1)
霧氷が風景を白くした朝。まだ太陽の光は山だけを照らしている状況なので、明暗差が強い。右の木に光が入る前に撮影を完了するため、素早いフィルター操作が求められる状況だったが、REVORING Swift Systemのおかげで要求は満たされた。この場面では、輝度差が強いことに加え、空のブルーを強調したかったため、ソフトタイプだが、ND の濃度が 1.5( ND32相当 )を使用した。

写真 21

フィルターなし

写真 22

S-GND1.5使用

写真 23

状況写真

2)
光が変わりやすい状況の中、急に強い光が池に入ってきた。このタイミングを逃すことなく撮影するために、REVORING Swift System を使い、素早く撮影態勢を作る。使ったフィルターは ND 部分が ND32 に相当する「 S-GND1.5 」を選択。その理由は、実像と映り込みの明るさを同程度にして、像のシンメトリーだけでなく、明るさのシンメトリーも狙いたかったからだ。この場面では「 1.5 」の濃度が狙いを実現してくれた。

写真 24

フィルターなし

写真 25

S-GND1.5使用

写真 26

状況写真

3)

一見しただけではフィルターを使わずに撮影しても問題はないような場面でも、少しの発想を加えれば思わぬ場面を作り出すことができる。このとき、上空の雲の濃度を高め、重くのしかかるように表現すれば、冬の陰鬱な印象が強まるのではないかと考え、「 S-GND1.5 」を使うことにした。予想通り、雲は重厚感を増し、風景は厳しい冬の様相を深めてくれた。

写真 27

フィルターなし

写真 28

S-GND1.5使用

Go To Top

5.まとめ

「 REVORING Swift System 」に関して、ここまでプラス面を見てきたが、注意して欲しい点もある。ベース、ブリッジ、そしてアクセサリー、さらにフィルターと重ねていくと、それなりの重量になる。フロント側が重くなるため、三脚は一定レベルの製品が必要になる。私は 32㎜ 径、もしくは 36㎜ 径の三脚を使っているが、このクラスなら問題はない。

ベース装置となる「 REVORING 」はあらかじめ使い慣れておく必要がある。外枠と内枠を逆方向に回すことでフィルター径を小さくしてレンズに装填するわけだが、この操作に慣れが必要なのである。ましてや冬の撮影の場合、グローブをはめていると難易度が高く感じるかもしれない。冬の撮影においては指先が出せるタイプのグローブを使う、もしくは薄枠アダプターリングをレンズに装着したままにして、キャップは Revoring 用のマグネットキャップを使用。こうすることで手袋を一切外さずに装着できる。

フィルターを使うための装置である「 REVORING Swift System 」は、フィルターワークをさらに簡素化し高速化してくれたおかげで、撮影がますます快適になった。実際に使ってみると、レンズにベースやブリッジがスムーズに装着されていく様を体験しているだけで楽しくなってくる。道具は結果を出すことがすべてではなく、その使い勝手が軽快であったり楽しくあることも、道具の役割の1つ。この部分があるから使いたくなるわけである。結果が出せても、そこまでの道筋が面倒だったり、困難なものであったら、その道具は使われなくなるのは必定だろう。

最後に「 REVORING Swift System 」のお勧めの使い方を1つ。「 REVORING Swift マグネティック可変式アダプター」を2つ持っているとする。三脚を2台立てて、カメラには画角の異なるレンズを付けておく。片方で撮影したら、ブリッジを外してもう片方へ付け替えて撮影することもできる。ご夫婦なら、ブリッジの貸し借りだけで、お互いが素早く撮影を行うことも可能になる。

この素晴らしい「 REVORING Swift System 」をぜひ体験して欲しいと思う。

Go To Top

Go To Top

著者について
萩原 史郎(はぎはら・しろう) 1959年山梨県甲府市生まれ。株式会社新日本企画で写真誌「風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後は風景写真家に転向し、写真誌寄稿、コンテスト審査員、写真教室講師、講演会講師、写真クラブ例会指導など幅広く行う。著書は「四季の風景撮影」シリーズ8冊(日本カメラ社)、「風景写真の便利帳」(玄光社)など多数。新刊は「風景写真まるわかり教室」(玄光社)。写真集には「色 X 旬」(風景写真出版)がある。写真展は、2015年「色 X 情」、2019年「色 X 旬」、2020年「志賀高原 -Whisper of the Scenery-」、2022年「色彩深度」開催。 日本風景写真家協会(JSPA)副会長 日本風景写真協会(JNP)指導会員 石の湯ロッジ萩原史郎写真教室 講師 日本学生写真部連盟(FUPC)指導会員 OMデジタルソリューションズ・OM SYSTEM ゼミ Speakers 富士フイルム・アカデミーX講師 写真クラブ・フォトシップA 顧問 写真クラブ・フォト四季彩 顧問